「指名検索」マーケティング:検索データでマーケティング効果を管理すべき理由

今回の記事では、去年発売されたブランド力を高める「指名検索」マーケティング(以下、指名検索マーケティング)という本の内容を共有しながら、なぜ検索データ(ブランド検索関連の指標)でブランドの成果を管理するべきかについても簡単に共有したいと思います。

マーケティング指標の要点、検索データ

マーケターはブランドの状況を把握するために、ブランドの認知度、イメージ、好感度など様々な指標を使用します。これらの複雑な指標を簡単に、効果的に把握する方法はないでしょうか?
「指名検索マーケティング」を通じて、なぜ検索データがマーケティングの成果指標として活用されるべきか、データを活用したマーケティングの展開について考えてみましょう。

 「指名検索マーケティング」で語られた検索データの意味

ブランド力を高める「指名検索」マーケティングの表紙

日本では、YahooとGoogleが検索市場の大部分を占めており、(GoogleとYahooのシェアが検索市場の約98%) Yahooも2011年からGoogleと同じ検索技術を使用しているため、日本の検索市場のほとんどが実質的にはGoogleベースと考えても差し支えない状況です。

この本を執筆した田部正樹氏は、丸井グループ、テイクアンドギヴ・ニーズ社を経てラクスルに入社。
ラクスルの事業成長をけん引し、多くのブランドを成功に導いたマーケターです。
現在はマーケティング企業であるノバセルを共同で運営しているマーケティングの専門家です。

「指名検索マーケティング」は、ブランド検索量を増やすことを目標にマーケティング活動を進めていくことが、売上にも繋がるという著者の哲学と、それに基づいた様々な事例と共に話が展開されています。

田部正樹氏は“マーケティングは経営そのもの”であり、マーケティングの究極の目標は利益を上げることであるべきだという考えをお持ちです。
そして、そのためにはブランド検索量を増やすことが、マーケティングの目標であるべきだと主張しています。

マーケティング戦略(4P)と担当部署(出典:指名検索マーケティング)

なぜブランド検索量を増やすことをマーケティングの目標に設定するべきなのか

1.知名度が上がったからと言って売上が増えるわけではない

世の中には知名度が100%に近いにもかかわらず、検索されないブランドも存在します。
検索されず、興味を持たれないブランドが有益な売上を生み出すことができるでしょうか?
もちろん、王道に近いブランドは検索されなくても売上が発生することがあります。(王道ブランドも、検索されるための様々なアクションを試みています)
しかし、ごく一部のブランドを除き、単に製品名だけを露出し、知名度を上げるだけで製品が売れる時代がまた来るでしょうか?


2.ブランドに対する興味と、欲しいという気持ちが結びついてこそ売上に繋がる

製品を認知するだけでは足りません。
製品を知った後に、欲しいという気持ち、今すぐにでも手に入れたいという気持ちに結びついてこそ、ビジネス成長に繋がります。そして、興味と欲しいという気持ちが行動として表れるのが「検索」という行動です。
つまり、単純にブランドの検索量を追うだけでも、製品を購入したいと思っている消費者がどれくらいいるのかを確認できるというのが著者の考えです。
ブランドの指名検索量を増やす活動=成功したマーケティングと評価される理由です。

ブランド力を高める3つの要素(出典:指名検索マーケティング)
認知度の高いブランドも”今すぐ欲しい”と思うようなキャンペーンを行っている(出典:カルビー株式会社)

ブランドの指名検索をマーケティングの統合指標として活用するメリット

1.客観的である

ブランド検索データには主観が入りません。
検索データは全数データであるため、指標を作成し、解釈するための時間も基準も必要ありません。
多くの人の意見・解釈が反映されるものでもないので、データの正誤に関する議論も必要ありません。


2.売上との相関関係が証明されている

Yahoo Japanの調査によると、検討段階にある消費者がブランドを検索する場合、そうでない消費者に比べてコンバージョン率が12倍も違うとされており、ブランドを検索してサイトに訪問した人は購買率も高いとされています。


3.速い

他の指標に比べて、ブランド検索に関するデータを素早く追跡できます。
そのため、マーケターはすぐに結果を確認し、その後のアクションを検討し、準備を進めることができます。


4.単純

視聴率、ブランドイメージ、認知度、購買意向など様々な指標が存在しますが、どの指標も全ての目標を一つにまとめることができません。
ブランドの指名検索指標は認知、購買意向などの指標を統合的に反映できるデータとなり得ます。

このように、マーケティングの効果測定を検索指標中心に単純化し、明確にすれば、マーケティング組織の働き方を大きく変えることができると著者は主張しています。

マーケティングは最終的には売上、利益に貢献しなければならないという点、そしてこれらを検索データで単純化して管理できるという考えは、マーケティング担当者であればすぐに適用してみたいと感じるほどの、単純でありながら強力なアイデアではないでしょうか?

一度、このような新たな指標を基に試してみるのはいかがでしょうか?

リスニングマインドでブランド検索関連のデータを見ることができます。
7日間の無料トライアルも実施中ですので、気になった方は是非お試しください。


※この記事のほとんどは書籍:ブランド力を高める「指名検索マーケティング」の内容を引用しましたが、個人の意見も一部反映されております。

【オススメの記事】

Related

検索データで見る電子レンジ

皆さんは、家に必ずあるべき家電は何だと思いますか?冷蔵庫やIHクッキングヒーター、テレビなど多くの選択肢がありますが、電子レンジも欠かせない家電の一つだと思います。 一人暮らしの増加や手軽に食事を済ませたいというニーズの高まりにより、電子レンジは私たちの生活にとって重要な家電となりました。それでは、電子レンジを検索する人々は、どのような意図で検索しているのか、見てみましょう。 まず、電子レンジの検索推移を確認します。 キーワードは47,300件、トピックは19,091件です。最近、検索ボリュームが増えていることが分かります。特に目立つのは、毎年1月から3月にかけて検索ボリュームが増加することです。これは引越しシーズンに伴い、電子レンジの需要が高まるためだと推測されます。 検索ワードをよく見ると、【対象キーワード】と【意図キーワード】に分けることができます。 例えば、カレーを検索する人がいる場合、カレーとレシピを検索する人はカレーを作ろうとしていることが分かります。一方、カレーと新宿を検索する人は、新宿でカレーを食べようとしている意図があると考えられます。 では、電子レンジを検索している人々の検索意図は何でしょうか。 意図によってトピックを以下の3つのグループに分けられます。 1. 活用している方 2. 購入を考えている方 3. 安全と管理を考えている方 1. 活用している方 2. 購入を考えている方 3. 安全と管理を考えている方  活用している方 まず、活用を考えているグループについて見てみましょう。 このグループは「作り方」や「レシピ」など、電子レンジを活用して料理をするために検索しています。電子レンジを単純に温めるだけの機能を超えて、調理のツールとして利用しているのです。 検索ボリュームが一番多かった「ホットケーキミックス」に関連するキーワードを見てみました。 ホットケーキミックスの関連キーワード 単純にホットケーキを電子レンジで作ることではなく、蒸しパンを作ったり、アイスクリーム「スーパーカップ」を活用してカップケーキとかの創造的なレシピキーワードが登場しています。 購入を考えている方 「おすすめ」「安い」あるいは「パナソニック」「日立」などのキーワードを検索している方は、購入の意図を持っていると言えます。購入を検討している方は、どの電子レンジが自分に適しているのかを探しているのです。 特定のキーワードを検索する前後に一緒に検索されたキーワードを最大1万個まで表示するクラスタファインダーで確認したところ、以下の特性が分かりました。 クラスタファインダーで見た購入を考えている方の特性 ①オーブンレンジとの比較   オーブンレンジやスチームオーブンレンジが一緒に検索されていることから、単純な電子レンジ機能を超えた製品と比較して悩んでいる方が多いことが分かります。 ②単機能の安い製品   オーブンレンジと比較するグループとは対照的に、単機能の安価な電子レンジを探しているグループも確認できます。 ③寿命 電子レンジの寿命に関するキーワードも多くみられました。また、「電子レンジ 買い替え時期」のキーワードと「電子レンジ異音故障」クラスターも確認できましたが、それで、長持ち電子レンジを探してる方もいますが、電子レンジが壊れて切り替えしに検索している方もいるのを確認できました。 ④ブランド名   パナソニック、シャープ、日立などのブランド名が検索されていますが、インテントファインダーでは見られなかったバルミューダも登場しました。ブランド名+製品の形の検索ワードの中で、バルミューダレンジは38,033件で、他の「日立 オーブンレンジ(29,100件)」や「シャープ...

Listening Mind導入で顧客理解を深化 – MXN JAPAN 導入事例

株式会社アセントネットワークスが自社で提供するデスクサーチツール「Listening Mind(リスニングマインド)」を導入した株式会社MXN JAPANの依田様に、活用法などをインタビューしました。   ―本日はよろしくお願いします。まず御社について、それから依田様について教えてください。 僕が執行役員でして、会社でやっている4つの事業のうち3つの業務に携わらせてもらっています。その中でも、今大きく成長していっているのが、運営代行の業務になります。   主に韓国のクライアントさんなのですが、日本が今結構熱い市場として見られていて、 日本に展開したいっていうブランドさんは多いですね。   ―ありがとうございます。運営代行の業務は、具体的にどのようなことをされていますか?   日本で展開するときのデジタルマーケティング(サイトの構築・サイトの運用・SEOコンテンツ)とオフラインマーケティング(展示会・ポップアップ・ローンチパーティー)を一通りこちらでプランニングして実行するのが主軸の事業になっています。   ―コンテンツも作られているんですか? SEOをカバーしたブログ記事の形式でテキストコンテンツを作成しています。あとは、ブランドさんから質の良い撮影写真や、芸能関係の話題などの依頼がきます。   それをインスタやサイト内に展開したり、ときには1つホームページやメディアサイトを自分たちで作って、そこで展開してアクセスを流し込むというのもやっています。   ―リスニングマインドを導入してどうでしたか? 僕とかオフラインの担当者が、もうめちゃめちゃ長い期間使わせていただいています。これから日本に流行らせていかないといけないブランドさんが大体8割9割くらいで、既に日本ですごい認知があって、もう待望の日本進出っていうブランドさんが大体1割くらいなんです。   これからブランディングを日本でしていかないといけないなかで、広告をたくさん回すと効果が見えにくいじゃないですか。   効果が出るまで期間も長いですし、一時的に取ってみてもわからないですし。そこを数値化したいっていうのが、一つポイントだったかなと思っています。その点でいうと、ブランドマーケティングをした結果、インテントファインダーの検索ボリュームやキーワード数、あとはクラスターファインダーの内容の変移が数字としてわかるので、   「こういうキーワードが生まれました」 「コンテンツで、こういうキーワードをカバーできるようになりました」 「ほかのとこに勝てそうです」 そういった話ができるのが、一つ大きかったかなって僕は思っています。   ―リスニングマインドで見たデータをもとに、御社で活用していることを教えてください。 大きく分けると、3つあります。 1つ目はターゲティング。ターゲットを決めて、全体のマーケティングプランを作るときに使いました。 2つ目は、足りてないコンテンツを作るために使っています。 3つ目は、Google AdWordsの、キーワード設定を作るときに使っています。   ―足りてないコンテンツとは何ですか? お客さんが実際に悩んでいるポイントみたいな。 ユーザーが求めていることや質問に答えてあげるっていうものを作っています。   ―リスニングマインドを導入する以前は、プロジェクトを遂行するうえで苦労した点や課題点などはありましたか? プロジェクトは、ブランドさんごとにマーケティングプランを作っていくので、それぞれ分かれちゃっているのですけど。共通しているのが、さっきのブランディングをしたときの効果が見えないっていうところですね。   もう1つは、プロジェクトのスタート段階でマーケティングプランを作るときに、1番初めにターゲティングが一番大事だと思っていて。 商品理解をしたうえでターゲティングをするときに、   「どこに攻めていくか」 「どのキーワードを取っていくべきなのか」 「どういうキーワードで攻略していくべきなのか」 みたいなのを軸に考えていたのですけど、そのときに今まではほとんど仮説で動かないといけなくて。   あとは、一部FGI(フォーカスグループインタビュー)みたいなのをおこなって、多分こういうのがペルソナなんじゃないかみたいな話をしながら、その人たちにインタビューしてみたいなことをやっていました。   ―そのような効果と成果が出せたというところで、リスニングマインドを導入したからこそできたことなど、何か違いはありましたか? 違いは、これまで仮説だったのものから、数字の根拠が作れるようになったということです。実際に検索しているキーワードがわかるようになったことで、尚のこと正解に近いんじゃないかなって思っていて。   ブランドに関連した検索ワードを大体第3レイヤーくらいまで引き上げると、めちゃめちゃ広がって出てくるじゃないですか。   そうすると、例えばコスメとかだと1つブランドがあったとして、世の中の日本の人たちが今どういうブランドとして見ているのかわかるんです。   「化粧品として見ているか」 「コスメとして見ているのか」 「ファンデーションを使っているのか」 「メイクなのか、リップなのか」   というのが1つわかって。 その次のレイヤーにいくと、「そこの競合はどこなのか」「そういう人たちが何を悩んでいるのか」とか。   例えば、クッションファンデのあとに何を塗るっていう検索が実際されているとかだと、悩んでいる人にこの商品はハマるのかというのを想定してコンテンツを作ったり、こっちのほうの人たちに向けたマーケティングをしていこうであったり、そういう使い方をしています。   ―最後に、今後御社にとっての展望や、やっていきたいことがありましたら教えてください。 あらゆるカテゴリーやブランドさんに対して、適切なマーケティングミックスを立てて、ブランドと一緒に実行していくっていうありきたりな話になっちゃうかなと。   その繰り返しが、結局実績になって、会社を大きくしていくのかなって思っています。僕もずっと数字畑で、ツールやマニュアル作ったりデジタルで生きている人間なので、そういう人は、何か大きな展望とか野望とかはなくて、こういう地道な積み重ねをしていくべきなのかなって思っています。   ―本日はありがとうございました。

お酒・コスメ・ヘッドホンの消費者インサイト[マーケティングWeek-春2024-]

検索データから見えた、酒類・コスメ・ヘッドホン市場の消費者の欲望、悩み、インテントをご紹介します。

日本最大級のマーケティング総合展示会「マーケティングWeek(春)」に初出展しました。

2024年4月17日(水)~19日(金)に開催された「マーケティングWeek(春)」に出展しました。ブースでの様子をご紹介します。

マーケターにリスニングマインドが必要な理由

マーケティング環境が変化する中、リスニングマインドが企業にとって、マーケターにとってどのようなツールなのか、活用事例と共にご紹介します。