「マーケティングの施策は打っているのに、なかなか成果に結びつかない」——現場でよく聞かれる悩みです。
広告、SNS、SEO記事と、やることは増えているのに売上が伸びない。その原因の多くは、「顧客が今どの段階にいるか」を無視して施策を打っていることにあります。認知すらされていない顧客に購入を促す広告を出しても、効果は出ません。逆に、すでに購買意欲が高い顧客に認知施策を当て続けても、機会を逃すだけです。
マーケティングファネルとは、顧客が商品・サービスを「知る」から「買う」までのプロセスを段階的に可視化したフレームワークです。
このフレームワークを理解することで、各段階に適した施策を設計でき、マーケティング投資の効率が大きく改善されます。
この記事では、以下のことがわかります。
- マーケティングファネルの定義と、「ファネル(漏斗)」という名称の理由
- 基本となるAIDAモデルの4つのフェーズ
- TOFU-MOFU-BOFU、パイレーツファネルなど代表的なモデルの概要と選び方
- マーケティングファネルとセールスファネルの違い
- 実務で活用するための3つのポイントとよくある失敗
マーケティングファネルとは何か:定義と「漏斗」の意味
"Funnel" は英語で「漏斗(じょうご)」を意味します。漏斗の形、つまり上が広く下が狭くなる形が、顧客の購買プロセスの構造をそのまま表しています。
たとえば、ある商品の広告を100人が見たとします。そのうち商品ページを訪れるのは30人、カートに入れるのは10人、実際に購入するのは3人——というように、プロセスが進むにつれて人数は減っていきます。この「広い入口から絞り込まれていく」構造が、まさに漏斗の形です。
マーケティングファネルの概念を最初に体系化したのは、広告業界のパイオニアであるElmo Lewis(エルモ・ルイス)です。彼は1898年に「AIDA」モデルを提唱し、顧客の購買行動を「Attention(注意)→ Interest(関心)→ Desire(欲求)→ Action(行動)」の4段階で説明しました。それから100年以上経った今も、このフレームワークはマーケティングの基本として世界中で使われています。
マーケティングファネルは、マーケター個人が施策を考えるための道具であるだけでなく、チーム全体で「顧客の今の段階」を共通言語で話し合うためのコミュニケーションツールでもあります。
マーケティングファネルが必要な理由:使わないと何が起きるか
ファネルを意識せずにマーケティングを行うと、次の3つの問題が起きがちです。

① 「BOFU(購入段階)」施策に予算が集中する
成果が見えやすい広告(リスティング広告、カート離脱リターゲティングなど)に予算を集めすぎて、そもそもの認知・興味喚起が不足するケースです。購入段階にいる顧客の総数が少なければ、どれだけ優秀な購入促進施策を打っても、母数が小さいため限界があります。
② 施策の評価基準がバラバラになる
認知施策(SNS広告、SEO記事)にコンバージョン率を求め、「効果がない」と判断してしまうケースです。各段階には適切なKPIが存在します。認知段階のKPIはリーチ数・インプレッション数であり、購入段階のKPIはコンバージョン率・CAC(顧客獲得コスト)です。ファネルを設計することで、評価基準を段階ごとに正しく設定できます。
③ 顧客の離脱ポイントが特定できない
たとえばWebサイトへの訪問者数は多いのにコンバージョン率が低い場合、問題は「認知の不足」ではなく「検討段階の情報不足」にあります。ファネルモデルで各段階のデータを把握することで、どこに問題があるかが可視化され、改善施策を論理的に設計できます。
インターネットの普及により、消費者は購買前に自分で情報を収集し、複数の選択肢を比較するのが当たり前になりました。この購買行動の変化に対応するために、マーケティングファネルは今や必須の思考フレームとなっています。

顧客がどの段階にいるかをより正確に把握するには、実際の検索行動データが有効です。たとえばキャットタワーでは、ListeningMindで検索パスを確認すると、まず「キャットタワー」といった一般的な検索から入り、その後「おしゃれ キャットタワー」「キャットタワー 木製」や「キャットタワー スリム」「キャットタワー 省スペース」のように、具体的な比較・検討キーワードへと検索が進んでいく様子が見えてきます。このように、どのようなキーワードをどの順序で検索しているかを分析することで、顧客が認知段階にいるのか、比較検討段階に進んでいるのかを推定しやすくなります。<パスファインダーの機能紹介>
マーケティングファネルの基本:AIDАモデルの4フェーズ
Elmo Lewisが提唱したAIDAモデルは、今も多くのファネル設計の原型となっています。日本では「Memory(記憶)」を加えたAIDMAモデルが広く普及しており、「関心を持った顧客が一度商品を記憶し、後日改めて行動に移す」という購買行動を表現しています。どちらも基本的な考え方は同じで、「認知から購買までの心理プロセスを段階に分ける」という発想を共有しています。

フェーズ1:Attention(認知)
顧客がはじめて商品・サービスの存在を知る段階です。まだ購買意欲はなく、「こんなものがあるのか」という認識の段階です。
このフェーズの目的は「知ってもらうこと」であり、できるだけ多くのターゲット層にリーチすることが優先されます。
主な施策: SNS広告・ディスプレイ広告・YouTube広告・SEO(ノンブランドキーワード)・インフルエンサーマーケティング
KPIの目安: インプレッション数・リーチ数・ブランド認知率
フェーズ2:Interest(関心)
商品の存在を知った顧客が、「もっと詳しく知りたい」と情報収集を始める段階です。競合製品との比較や、機能・特徴の確認が行われます。
このフェーズでは、顧客の疑問に答えるコンテンツを用意することが重要です。スペック比較、使用事例、専門家によるレビューなどが効果的です。
主な施策: ブログ記事・ホワイトペーパー・製品紹介動画・比較コンテンツ
KPIの目安: 記事閲覧数・動画再生時間・資料ダウンロード数
フェーズ3:Desire(欲求)
「この商品が欲しい」という感情が生まれる段階です。比較検討が進み、購買に向けて意思が固まりつつあります。
社会的証明(口コミ・導入事例・受賞歴)の提示や、期間限定オファーなど、「今選ぶ理由」を伝えることが効果的です。
主な施策: 導入事例・お客様の声・限定キャンペーン・無料トライアル
KPIの目安: 問い合わせ数・無料登録数・カート追加数
フェーズ4:Action(行動)
実際に購入・申し込み・契約を行う段階です。購買の決断を後押しするとともに、購買プロセスそのものの摩擦(手続きのわかりにくさ、ページの重さなど)を取り除くことが重要です。
また、このフェーズ以降の「購買後の顧客体験」も、LTV(顧客生涯価値)やリピート率に大きく影響します。
主な施策: ワンクリック決済・返品保証・オンボーディングサポート
KPIの目安: コンバージョン率・CAC(顧客獲得コスト)・ROAS
マーケティングファネルの種類:代表的な4つのモデル
時代の変化とともに、消費者の購買行動は複雑になりました。AIDAモデルを発展させた、より現代的なファネルモデルが登場しています。
| モデル名 | 特徴 | 向いているビジネス |
|---|---|---|
| AIDAモデル | 最もシンプルな4段階。購買までの基本フローを整理するのに最適 | 新規事業・フレームワーク理解の出発点 |
| TOFU-MOFU-BOFU | 認知・検討・購買の3段階。段階ごとの施策・KPI設計に強い | コンテンツマーケティング、SEO施策設計 |
| パイレーツファネル(AAARRR) | 獲得→活性化→継続→紹介→収益の6段階。プロダクト成長の全体を測る | SaaSやアプリなどプロダクト型ビジネス |
| ダブルファネル | 購買前後を2つのファネルで設計。既存顧客のロイヤルティ向上まで包括 | リピート型・サブスクリプション型ビジネス |
これらのモデルは、いずれも「AIDAモデル」を土台としながら、現代の購買行動に合わせて進化したものです。どれが「正解」かではなく、自社のビジネスフェーズと目的に応じて選択・組み合わせることが重要です。

どのモデルが自社に適しているかを判断するには、顧客の実際の検索行動データを参照することが有効です。たとえばキャットタワーでは、ListeningMind上で検索パスを確認すると、一般的な商品認知の検索から、おしゃれ・木製・スリム・省スペース・購入先比較といった具体的な検討テーマへ関心が移っていく様子がわかります。このように、購買前にどのような経路で比較検討が進むかを把握することで、どのファネル段階に課題があるかをより具体的に見極められます。<パスファインダーの機能紹介>
👉TOFU-MOFU-BOFUの実践的な施策設計については、ファネルマーケティングとは?TOFU・MOFU・BOFUの施策戦略を解説をご覧ください。
マーケティングファネルとセールスファネルの違い
「マーケティングファネル」と「セールスファネル」は、似た言葉ですが役割が異なります。
| 比較項目 | マーケティングファネル | セールスファネル |
|---|---|---|
| 対象範囲 | 市場全体の消費者行動 | 自社が管理する顧客接点での行動 |
| 主な目的 | ブランド認知・潜在顧客の獲得 | 購買へのコンバージョン・売上最大化 |
| 担当部門 | マーケティング部門 | 営業部門・フィールドセールス |
| 主な指標 | リーチ数・認知率・リード数 | 商談数・成約率・売上 |

マーケティングファネルは「市場全体の中での顧客の動き」を把握するためのツールであり、セールスファネルは「自社が接触した顧客の動き」を管理するためのツールです。どちらか一方だけでなく、2つを連携させることで、マーケティングから営業・購買後サポートまで、顧客体験の全体を一貫して設計できます。
👉2つのファネルの詳細な比較と連携方法については、マーケティングファネルとセールスファネルの違いと連携の重要性をご覧ください。
マーケティングファネルを実務で活用する3つのポイント
ポイント1:段階ごとに適切なKPIを設定する
最もよくある失敗は、認知段階の施策にコンバージョン率を求めることです。各段階には適切な指標があります。まずファネルを設計し、次に各段階のKPIを決定してから施策を評価するプロセスを習慣化することが重要です。
ポイント2:離脱ポイントを特定し、改善を優先する
ファネルのどの段階で顧客が最も離脱しているかを把握することが、最も効率的な改善につながります。たとえばWebサイトのセッション数は多いがカート追加率が低い場合、問題は「検討段階のコンテンツ」や「商品ページの説得力」にある可能性が高いです。データを見て、問題のある段階から手を打ちましょう。
ポイント3:全段階の施策バランスを定期的に見直す
BOFUへの施策集中は短期的な成果を生みますが、TOFUへの投資を怠ると、半年後・1年後のリード数が枯渇します。認知・検討・購買の各段階に対して、バランスよく予算と施策を配分することが、長期的な成長の基盤になります。

ListeningMindのロードビューを見ると、「キャットタワー ニトリ」で情報収集を始めたユーザーが、その後「キャットタワー カインズ」や「カインズ キャットタワー 口コミ」「カインズ キャットタワー パーツ」などの検索へ移行していることが確認できます。これは、特定ブランドへの関心で検索が完結するのではなく、購入前の比較検討の中で他社ブランドや関連情報へ探索が広がっていることを示しています。こうした検索の分岐を把握することで、ブランド比較、口コミ、パーツ情報といった検討段階で必要とされるコンテンツをより具体的に設計しやすくなります。<ロードビューの機能紹介>
よくある質問(FAQ)
Q1. マーケティングファネルとは何ですか?簡単に説明してください。
マーケティングファネルとは、顧客が商品・サービスを知ってから購入するまでのプロセスを「認知→関心→欲求→行動」の段階に分けて可視化したフレームワークです。漏斗(ファネル)の形に似ていることからこの名称が使われます。各段階に合わせた施策を設計することで、マーケティング投資の効率を高めることができます。
Q2. マーケティングファネルとセールスファネルの違いは何ですか?
マーケティングファネルは市場全体における消費者の行動を把握するためのモデルであり、主にマーケティング部門が活用します。一方、セールスファネルは自社が管理する顧客接点での行動を追跡するモデルで、営業部門が活用します。2つは対象範囲と担当部門が異なりますが、連携させることで顧客体験全体を設計できます。詳しくは「マーケティングファネルとセールスファネルの違いと連携の重要性」をご参照ください。
Q3. TOFU・MOFU・BOFUとは何ですか?
TOFU(Top of Funnel)・MOFU(Middle of Funnel)・BOFU(Bottom of Funnel)は、マーケティングファネルを「認知段階・検討段階・購買段階」の3つに簡略化した表現です。各段階で顧客のニーズが異なるため、それぞれに適したコンテンツや施策を設計するためのフレームとして広く使われています。TOFU-MOFU-BOFUの具体的な施策については「ファネルマーケティングとは?TOFU・MOFU・BOFUの施策戦略を解説」で詳しく解説しています。
Q4. マーケティングファネルはBtoBでも使えますか?
はい、BtoBビジネスでも広く活用されています。ただし、BtoBの購買プロセスは複数の意思決定者が関与し、検討期間も長い傾向があります。そのため、MOFUに相当する「比較・検討段階」のコンテンツ(ホワイトペーパー、導入事例、ウェビナーなど)が特に重要になります。AIDAモデルよりもTOFU-MOFU-BOFUのフレームを活用し、段階ごとのリードナーチャリングを設計することが効果的です。
Q5. マーケティングファネルはどこから設計し始めればいいですか?
まず自社のビジネスモデルと顧客の購買行動を整理することが出発点です。「どのようなきっかけで顧客は自社を知るのか」「購買決断までに何を調べるのか」「購買後にどのような体験を期待しているか」の3点を起点に、ファネルの各段階を設計します。その後、各段階のKPIを設定し、現状のデータと照らし合わせることで、どの段階に課題があるかが明確になります。
Q6. AIDAモデルとTOFU-MOFU-BOFUはどう違いますか?
AIDAモデルは「認知・関心・欲求・行動」の4段階で顧客の心理変化を説明するモデルです。TOFU-MOFU-BOFUはこれをシンプルに「認知・検討・購買」の3段階に整理し、施策設計に使いやすくしたフレームです。基本的な考え方は同じですが、AIDAモデルは顧客心理の理解、TOFU-MOFU-BOFUは施策・KPI設計の実務ツールとして使い分けられることが多いです。
Q7. マーケティングファネルは古いモデルではないですか?
「ファネルは単純すぎる」「現代の購買行動に合わない」という指摘は確かにあります。実際、消費者の購買行動は非線形化しており、SNSで偶然見た投稿がきっかけで即購入するケースや、購買後の口コミが新たな認知を生むケースも増えています。ただし、これはAIDAモデルそのものが無効になったのではなく、購買後の「継続・推薦」まで含めた拡張モデル(ダブルファネルなど)が必要になってきたということです。基本的な「段階を分けて考える」という発想は今も有効で、特にBtoBビジネスでは購買プロセスが比較的一方向的なため、ファネルモデルの実用性は変わらず高いとされています。
Q8. マーケティングファネルとカスタマージャーニーの違いは何ですか?
マーケティングファネルは「各段階にいる顧客の人数の変化」に注目したモデルで、施策の効率化や離脱ポイントの特定に使います。一方、カスタマージャーニーは「特定の顧客が購買に至るまでの体験・感情・行動の流れ」を描いたもので、顧客体験の設計や改善に使います。ファネルは数値・集計の視点、カスタマージャーニーは個人の体験・感情の視点という違いがあり、2つは対立するものではなく補完関係にあります。
Q9. マーケティングファネルを使っても成果が出ない場合、何が原因ですか?
最も多い原因は「各段階に対する施策のバランスの偏り」です。BOFUだけに予算を集中させると、TOFUからの顧客流入が細くなり、中長期的に成果が落ちます。次に多いのは「段階ごとのKPIが設定されていない」ケースで、認知施策にコンバージョン率を求めるなど、不適切な指標で施策を評価してしまいます。まず各段階の現状データを把握し、どこで顧客が離脱しているかを特定することから始めましょう。
まとめ
この記事では、マーケティングファネルの基本について解説しました。
マーケティングファネルとは、顧客が商品・サービスを「知る」から「買う」までのプロセスを段階的に可視化したフレームワークです。1898年にElmo Lewisが提唱したAIDAモデルを起点に、TOFU-MOFU-BOFU・パイレーツファネル・ダブルファネルなど、現代のビジネス環境に合わせた多様なモデルが発展してきました。
この記事で整理したポイントは以下の通りです。
- マーケティングファネルは「漏斗」の形で顧客の購買プロセスを表したもの
- 基本はAIDAモデル:認知→関心→欲求→行動の4段階
- 段階ごとに適切なKPIと施策を設計することが成果につながる
- マーケティングファネルとセールスファネルは役割が異なり、連携して使うことが重要
- BOFUへの集中は短期的効果があるが、全体バランスが長期成長の鍵
マーケティングファネルは設計したら終わりではありません。定期的にデータを見直し、どの段階で顧客が離脱しているかを確認し続けることが、継続的な成果改善につながります。顧客の実際の検索行動をもとに、比較検討の流れやファネル上の課題をより具体的に把握したい場合は、ListeningMindのデモをお申し込みください。
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本記事の情報は2026年4月時点のものです。最新情報はListeningMind公式サイトをご確認ください。
執筆者紹介
株式会社 アセントネットワークス ソリューション事業部 シニアアナリスト 吉岡直樹
デジタル系プロダクションの設立の後、NEC(ヒアラブルデバイスUX設計)、JTB(輸出促進支援事業次席顧問)、TBS(Screenless Media Lab. テクニカルフェロー)、NHK(放送100年プロジェクト/データ分析)などへの参加を経て現職。
日本ディープラーニング協会 認定エンジニア (JDLA for ENGINEER 2022#2)、(米)PMI認定 プロジェクトマネジメント・プロフェッショナル (PMP)、経営学MQT 上級 (NOMA)、データサイエンティスト協会 会員 (個人)、日本マネジメント学会 会員 (個人)。
著書:「AIアシスタントのコア・コンセプト/人工知能時代の意思決定プロセスデザイン(BNN:2017)」、「SENSE インターネットの世界は「感覚」に働きかける(日経BP:2022)」
※ NHK 放送100年「メディアが私たちをつくってきた!?」データ分析担当







