「見込み客のフォローが属人的になっている」「リード獲得はできているが、商談につながらない」——BtoBマーケティングで成果が伸び悩む背景には、見込み客の育成(ナーチャリング)プロセスの不在があります。手作業でのメール配信やリスト管理には限界があり、効率と精度の両立にはツールの活用が欠かせません。
MAツール(Marketing Automation Tool)とは、見込み客の獲得から育成・選別までのマーケティング活動を自動化し、営業部門に質の高いリードを引き渡すためのソフトウェアです。
この記事では、以下のポイントを解説します。
- MAツールの基本的な意味と主要機能
- 導入によるメリットと活用場面
- 自社に合ったMAツールの選び方
MAツール(マーケティングオートメーションツール)とは?意味と基本概念
MAツールとは、マーケティングオートメーション(Marketing Automation)を実現するためのソフトウェアで、リードの獲得・育成・スコアリング・営業への引き渡しを自動化・効率化するプラットフォームです。

マーケティングオートメーション(MA)という概念自体は、2000年代後半にアメリカで普及し始めました。日本では2014年頃から注目が高まり、現在ではBtoB企業を中心に導入が拡大しています。
MAツールが解決する根本的な課題は、「マーケティング部門と営業部門の間のリード引き渡しの非効率」です。マーケティングが獲得したリードの多くは、まだ購買意欲が低い「潜在的な見込み客」です。これを営業に直接渡しても商談化率は低くなります。MAツールを導入することで、潜在見込み客を「購買準備が整った状態」まで育成してから営業に引き渡す仕組みを構築できます。
MAツール(マーケティングオートメーションツール)の主要機能5つ
MAツールの主要機能は、「リード管理」「メール配信の自動化」「リードスコアリング」「シナリオ設計」「効果測定・レポーティング」の5つで構成されます。

機能1:リード管理
Webフォーム・展示会・セミナーなど複数チャネルから獲得したリード情報を一元管理します。リードの属性情報(企業名・役職・業種等)に加えて、Webサイトの閲覧履歴やメールの開封履歴などの行動データも紐づけて管理できます。
機能2:メール配信の自動化
あらかじめ設定した条件やタイミングに基づいて、メールを自動配信する機能です。「資料をダウンロードした人に3日後にフォローメールを送る」「特定のページを閲覧した人にセミナー案内を送る」といったシナリオを自動で実行できます。
機能3:リードスコアリング
リードの属性情報と行動データに基づいてスコア(点数)を付与し、購買意欲の高さを数値化する機能です。「料金ページを閲覧したら+10点」「メールのリンクをクリックしたら+5点」のようにルールを設定し、一定のスコアに達したリードを「ホットリード」として営業に引き渡します。
機能4:シナリオ設計(ワークフロー)
リードの行動に応じて、次に実行するアクション(メール送信・タグ付け・営業通知等)を自動的に分岐させるシナリオを設計する機能です。複雑なナーチャリングプロセスを視覚的に設計し、自動実行できます。
機能5:効果測定・レポーティング
メールの開封率・クリック率、コンバージョン率、リードの推移、チャネル別の獲得効率などを可視化するレポーティング機能です。施策の効果を定量的に把握し、改善につなげられます。
| 機能 | 主な役割 | 解決する課題 |
|---|---|---|
| リード管理 | リード情報の一元管理 | 情報の散在・重複 |
| メール自動化 | 条件に応じた自動配信 | 手作業の配信業務 |
| スコアリング | 購買意欲の数値化 | ホットリードの見極め |
| シナリオ設計 | ナーチャリングの自動化 | フォロー漏れ・属人化 |
| 効果測定 | 施策の定量評価 | 感覚的な判断 |
上記のとおり、リード管理は情報の散在を解消し、メール自動化は手作業を削減し、スコアリングはホットリードの見極めを可能にし、シナリオ設計はフォローの属人化を防ぎ、効果測定は感覚的な判断をデータに置き換えます。
MAツール(マーケティングオートメーションツール)導入のメリット3つ
MAツール導入の主なメリットは、「商談化率の向上」「マーケティングと営業の連携強化」「顧客理解の深化」の3つです。

メリット1:商談化率の向上
リードスコアリングとナーチャリングにより、購買意欲が高まったリードだけを営業に引き渡せるため、商談化率が向上します。Forrester Research社の調査によれば、ナーチャリングを実施した企業は、実施していない企業に比べて50%多くの商談を33%低いコストで創出しています。
メリット2:マーケティングと営業の連携強化
MAツールにより、リードの行動データとスコアが可視化されるため、営業部門は「なぜこのリードが引き渡されたのか」を具体的に理解できます。マーケティングと営業の共通言語ができ、部門間の連携がスムーズになります。
メリット3:顧客理解の深化
MAツールに蓄積されるリードの行動データは、顧客がどのような情報を求めているか、どのような検討プロセスを経ているかを示す貴重な情報源です。この情報をもとに、コンテンツ戦略や営業アプローチを最適化できます。

【ヒント】検索の経路をみると、消費者が自分の目的を達成するためにどのように検索語を変化させていったのか、その経緯を確認することができます。このことで、その行動から意図の流れを知ることができます。リスニングマインドのパスファインダーであれば、こうした経路の変化を約15億語の語彙について表示させることができます。<パスファインダーの機能紹介>
MA(マーケティングオートメーションツール)のデメリット
MA(マーケティングオートメーションツール)は、見込み客の育成や営業連携を効率化できる一方で、導入すればすぐに成果が出るわけではありません。運用体制やコンテンツ準備が不十分なまま導入すると、期待した効果が得られないこともあります。
主なデメリットは、次の3つです。
デメリット1:導入しただけでは成果が出にくい
MAはあくまでマーケティング施策を自動化・効率化するための仕組みです。配信するメール、育成シナリオ、ホワイトペーパー、営業への引き渡し基準などが整っていなければ、ツールだけ導入しても成果にはつながりにくくなります。
デメリット2:運用設計に手間がかかる
MAを活用するには、スコアリングルール、配信シナリオ、セグメント設計、効果測定の基準などを事前に決める必要があります。初期設定の負荷が高く、専任担当者がいない場合は運用が止まりやすい点に注意が必要です。
デメリット3:接触前の顧客理解までは補いにくい
MAで把握しやすいのは、自社に接触した後の行動データです。一方で、見込み客が接触前にどのような情報を探し、何を比較し、どのような不安を持っていたのかまでは見えにくい傾向があります。そのため、シナリオ設計やコンテンツ設計の精度を高めるには、検索行動データなど外部の顧客理解もあわせて見ることが重要です。
このように、MA(マーケティングオートメーションツール)には大きな効果がある一方で、運用体制・コンテンツ準備・顧客理解が伴わなければ十分に活かしきれません。導入前には、ツールの機能だけでなく、社内で継続的に運用できるかどうかまで含めて検討することが大切です。
MAツール(マーケティングオートメーションツール)の選び方:5つの評価ポイント
MAツールの選び方では、「自社のリード規模」「必要な機能の優先度」「CRM/SFAとの連携」「操作性とサポート体制」「料金体系」の5つのポイントを評価します。
ポイント1:自社のリード規模に合っているか
MAツールの料金はリード数(管理するコンタクト数)に応じて変動するケースが多いです。現時点のリード数と今後の拡大見込みを踏まえて、コスト効率の良いプランを選びましょう。
ポイント2:必要な機能の優先度を明確にする
すべての機能を初日から使いこなす必要はありません。自社の最優先課題が「メール配信の自動化」なのか「リードスコアリング」なのかを整理し、必要な機能が充実したツールを選びましょう。
ポイント3:CRM/SFAとの連携が可能か
営業部門が使用しているCRM(Salesforce、HubSpot CRMなど)やSFA(営業支援ツール)との連携は必須です。連携がスムーズでないと、リードの引き渡しにおいてデータの手動転記が発生し、MAツール導入の効果が半減します。
ポイント4:操作性とサポート体制
MA担当者が専任でない場合(兼務の場合)は、直感的に操作できるUIと充実した日本語サポートが重要な選定基準になります。無料トライアルで実際の操作感を確認することをおすすめします。
ポイント5:料金体系の透明性
初期費用、月額費用、追加リード数による従量課金、オプション機能の費用などを総合的に比較します。「安いプランで始めたが、必要な機能がオプションで追加費用が嵩んだ」というケースは少なくありません。

【ヒント】消費者は自分の関心を、日常の検索語として自然に表現しています。「MAツール+どんな言葉が一緒に検索されているか」を網羅的に把握することで、導入検討者が実際に重視している比較軸を定量的に確認できます。リスニングマインドのクエリーファインダーであれば、指定したキーワードに関連する検索語をボリューム順に一覧表示し、ニーズの強度を数値で比較することができます。<クエリーファインダーの機能紹介>
MA(マーケティングオートメーションツール)7個を比較
MA(マーケティングオートメーションツール)を選ぶ際は、機能数の多さだけでなく、自社のリード規模、営業体制、必要なシナリオの複雑さ、CRM/SFAとの連携、サポート体制などを総合的に見ることが重要です。ここでは、比較対象になりやすい代表的なMA製品を7つ紹介します。
製品名 特徴の方向性 向いている企業 HubSpot Marketing Hub MA、CRM、コンテンツ管理を一体で使いやすい 初めてMAを導入する企業、マーケと営業を一体で管理したい企業 Account Engagement(旧Pardot) Salesforce連携を前提にしたBtoB向け運用に強い Salesforceを中心に営業・マーケを運用している企業 Marketo Engage 高度なシナリオ設計や大規模運用に対応しやすい 複雑なナーチャリングや多施策運用を行う中堅〜大企業 SATORI 国産で日本企業向けの導入・運用を進めやすい 国産ツールを重視する企業、匿名顧客へのアプローチも検討したい企業 BowNow 比較的始めやすく、中小企業でも導入しやすい まずは小さくMAを始めたい企業 SHANON MARKETING PLATFORM セミナー・イベント施策との連携も含めた運用に対応しやすい 展示会やウェビナーを活用するBtoB企業 Adobe Marketo Engage 大規模なマーケティング施策や複数部門運用に適しやすい 高度な運用体制があり、全社的に活用したい企業 比較の際に確認したいポイントは、次の通りです。
・必要な機能が過不足なくそろっているか
・CRM/SFAやフォーム、メール配信基盤と連携しやすいか
・自社のリード数と料金体系が合っているか
・専任担当がいなくても運用しやすいか
・導入支援や日本語サポートが十分かMA(マーケティングオートメーションツール)は、価格や機能一覧だけで選ぶと、自社の運用体制と合わずに使いこなせないケースがあります。まずは「何を自動化したいのか」「営業にどの状態でリードを渡したいのか」を明確にしたうえで、比較対象を絞り込むことが重要です。
MAツール(マーケティングオートメーションツール)だけでは足りない理由
MAツールが扱うのは、基本的に「自社に接触した後」のデータです。
誰が資料請求したか、どのページを見たか、メールを開封したか、どのリンクをクリックしたかといった、自社接点以降の行動は把握できます。

しかし、実際の購買プロセスでは、その前段階にある「接触前の情報探索」が非常に重要です。見込み客は、自社サイトに来る前から、検索エンジンで情報を探し、比較し、課題を整理しながら検討を進めています。つまり、MAツールだけでは、「なぜその人が今その段階にいるのか」「何を不安に感じているのか」「何と比較しているのか」といった背景までは見えにくいのです。
この状態でシナリオを設計すると、「送ることはできるが、刺さる内容になっていない」という問題が起こりやすくなります。たとえば、比較検討段階にいる見込み客に対して導入事例を送るべきなのか、料金比較を送るべきなのか、あるいは失敗回避の情報を送るべきなのかは、接触後データだけでは判断しにくい場面があります。
つまり、MA運用で本当に難しいのは、自動化そのものではなく、「何を届けるべきか」を見極めることです。
ナーチャリング成果を高めるカギは「接触前の顧客理解」
MAの成果を高めるためには、見込み客が自社に接触する前に、どのような検索を行い、何を比較し、どのような不安や期待を持っていたのかを理解することが重要です。
たとえば、検索意図の流れをイメージしやすい例として、「ハイボール」というテーマを見てみると、前後でどんな語が一緒に検索されているかを見ると、「作り方」「度数」「割合」といった基本的な飲み方に関する語に加え、「おすすめウイスキー」「ハイボール缶」「角ハイボール」「トリスハイボール」「山崎ハイボール缶」のように、相性のよいウイスキーや具体的な商品名もあわせて検索されていることが分かります。

つまり、ユーザーは単に言葉の意味を知りたいだけではなく、飲み方を確認しながら、自分に合うウイスキーや商品を選ぼうとしていると考えられます。<クエリファインダーの機能紹介>

たとえば、「ハイボール」では、「作り方」から「おすすめウイスキー」や商品選びへと関心がつながっていく流れや、「ハイボール缶」から具体的な商品比較に進んでいく流れが見られます。こうした検索のつながりを見ると、ユーザーの関心が理解から選定へと進んでいることが分かります。<パスファインダーの機能紹介>
ListeningMindが補完できること
ListeningMindは、MAツールの代わりになるものではありません。役割が異なります。MAツールが得意なのは、自社に接触した後の見込み客育成です。
一方でListeningMindは、自社に接触する前の市場全体の検索行動をもとに、消費者が何を課題として認識し、どのようなキーワードで情報収集し、何を比較しながら意思決定に進んでいるのかを可視化するツールです。
この違いを一言でまとめるなら、MAツールは after capture、ListeningMind は before capture の領域に強みがあるということです。
この2つを組み合わせることで、たとえば以下のような改善が考えられます。
- 見込み客が比較時に重視しているポイントを把握し、メールコンテンツに反映する
- 検討初期に多い検索テーマを起点に、ホワイトペーパーや記事を設計する
- 競合と比較されやすい軸を把握し、ナーチャリングの訴求順を見直す
- 検索行動から見込み客の不安要素を把握し、FAQや導入事例を強化する
つまりListeningMindは、MAの自動化そのものを担うのではなく、検索行動データをもとに、見込み客に対して何をどの順番で届けるべきかという設計精度を高める役割を果たします。
MAツール(マーケティングオートメーションツール)はどんな企業に向いているか
MAツールは、特に次のような企業に向いています。
- 資料請求や問い合わせはあるが、商談化率が低い
- フォローメールやリード管理が手作業で煩雑になっている
- 営業に渡すリードの質を改善したい
- BtoBで検討期間が長く、継続的な情報提供が必要
- コンテンツマーケティングやセミナー施策を活用している
一方で、まだリード数が少なく、営業が個別対応で十分フォローできる段階なら、必ずしもすぐにMA導入が必要とは限りません。まずは、自社にとって本当に自動化すべきプロセスがあるかを見極めることが重要です。
ListeningMindの実際の画面と分析デモを確認したい方へ
MAツールと検索行動データを組み合わせた顧客理解の深化方法を、実際のデモ画面で確認できます。
よくある質問(FAQ)
Q1. MAツール(マーケティングオートメーションツール)とは何ですか?
MAツール(Marketing Automation Tool)とは、見込み客の獲得から育成・選別までのマーケティング活動を自動化し、営業部門に質の高いリードを引き渡すためのソフトウェアです。メール配信の自動化、リードスコアリング、シナリオ設計などの機能を備えています。
Q2. MAツール(マーケティングオートメーションツール)とCRMの違いは何ですか?
MAツールは「見込み客の獲得・育成」に特化し、CRMは「顧客との関係管理全般」に特化しています。MAツールで育成したリードをCRMに引き渡し、営業が商談化・顧客化を進める、という役割分担が一般的です。
Q3. MAツール(マーケティングオートメーションツール)の導入にかかる費用は?
月額5万円〜30万円程度のミドルレンジ製品が中心です。エンタープライズ向けは月額数十万円〜100万円以上になる場合もあります。リード数や利用機能によって変動するため、自社の規模に合ったプランを選びましょう。
Q4. MAツール(マーケティングオートメーションツール)を導入する前に準備すべきことは?
まず「リードの定義(MQL・SQL)」と「スコアリングの基準」を営業部門と合意しておくことが重要です。また、配信するコンテンツ(メール、ホワイトペーパー等)の準備も導入前に進めましょう。
Q5. MAツール(マーケティングオートメーションツール)はBtoC企業でも使えますか?
BtoCでも活用できます。ECサイトのカゴ落ちフォローメール、購入履歴に応じたレコメンド、誕生日メールなどのシナリオ配信で活用されています。ただし、BtoBに比べてリード数が大幅に多くなるため、コストと機能のバランスに注意が必要です。
まとめ
- MAツールとは、見込み客へのフォローや育成を自動化し、営業につながる状態まで引き上げるためのマーケティングソフトウェアである
- 主要機能は、リード管理、メール配信の自動化、リードスコアリング、シナリオ設計、効果測定の5つが中心となる
- 導入によって、商談化率の向上、マーケティングと営業の連携強化、フォロー業務の再現性向上が期待できる
- 一方で、MAツールが把握しやすいのは自社に接触した後の行動であり、接触前にどのような検索を行い、何を比較し、何に不安を感じていたのかまでは見えにくい
- 成果の出るナーチャリングを設計するには、自動化そのものよりも、「誰に、何を、どの順番で届けるか」という設計の精度が重要になる
- その設計精度を高めるには、検索行動データを活用し、見込み客の接触前の関心や比較軸まで含めて顧客理解を広げることが有効である
- ListeningMindは、MAツールだけでは捉えにくい接触前の検索行動や意図を可視化し、シナリオ設計やコンテンツ設計の精度向上を支援する
本記事の情報は2026年時点のものです。
執筆者紹介
株式会社 アセントネットワークス ソリューション事業部 シニアアナリスト 吉岡直樹
デジタル系プロダクションの設立の後、NEC(ヒアラブルデバイスUX設計)、JTB(輸出促進支援事業次席顧問)、TBS(Screenless Media Lab. テクニカルフェロー)、NHK(放送100年プロジェクト/データ分析)などへの参加を経て現職。
日本ディープラーニング協会 認定エンジニア (JDLA for ENGINEER 2022#2)、(米)PMI認定 プロジェクトマネジメント・プロフェッショナル (PMP)、経営学MQT 上級 (NOMA)、データサイエンティスト協会 会員 (個人)、日本マネジメント学会 会員 (個人)。
著書:「AIアシスタントのコア・コンセプト/人工知能時代の意思決定プロセスデザイン(BNN:2017)」、「SENSE インターネットの世界は「感覚」に働きかける(日経BP:2022)」
※ NHK 放送100年「メディアが私たちをつくってきた!?」データ分析担当








