マーケティングファネルとは?
マーケティングファネルとは、消費者が検索を通じて商品やサービスを認知し、興味・関心を深めながら最終的に購入やコンバージョンに至るまでのプロセスを示すモデルです。検索データや消費者インテントを分析することで、新たな市場機会を発掘し、未顧客を効果的に取り込むことが可能になります。
“Funnel (ファネル)” とは英語で「じょうご」や「漏料」を意味します。商品やサービスを購入するまでの顧客の行動プロセスは、まさに「漏料」の形によく似ています。
例えば、「認知→興味→欲求→購入」という一連の流れの中で、各ステップで顧客の数は徐々に減少していきます。たとえ大勢の人が最初に広告を見て認知したとしても、最終的に購入に至る人は一部に限られるという仕組みです。
では、具体的にどのようなプロセスで顧客が購買に至るのか、詳しく見ていきましょう!
iPhone を例にしたファネルマーケティングの4つのフェーズ

1. 認知フェーズ(Attention)
Appleの新しいスマホの広告を見て、その存在を知る段階です。このフェーズでは、潜在顧客に商品やサービスの存在を認識させ、関心を持ってもらうことが重要です。顧客にとって、自分のニーズを満たす商品やソリューションと出会う瞬間でもあります。
認知を高めるためには、複数のチャネルを活用してターゲットにリーチすることが効果的です。特に、ブランド力が強い場合は、短期間で商品名やブランドの価値を印象付けることができます。
✅ 主な手法:広告(テレビCM、SNS広告、Google広告)、口コミ(友人・家族の紹介、SNSシェア)、検索(GoogleやYahoo!での商品検索)
2. 興味フェーズ(Interest)
iPhoneの広告を見た人が、その新機能に興味を持ち始める段階です。このフェーズでは、顧客の関心を「気になる」から「もっと知りたい」に変えることが求められます。
特に、競合製品(Samsungなど)との違いを明確にし、顧客にとってのメリットを伝えることが重要です。魅力的な情報を提供することで、製品への理解を深め、購買行動へとつなげることができます。
✅ 主な手法:製品の詳細情報(スペック、特徴、比較表)、SNSやウェブサイトでの製品紹介、インフルエンサーによるレビュー
3. 欲求フェーズ(Desire)
iPhoneのデザインや機能に魅力を感じ、「欲しい!」と思い始める段階です。このフェーズでは、顧客が「この商品を手に入れたい」と強く思うような仕掛けを作ることが大切です。
たとえ価格が高くても、機能性やデザイン、ブランド価値を通じて「この製品なら満足できる」と納得してもらうことが重要です。限定性やプレミアム感を演出したり、実際のユーザーの成功体験を共有したりすることで、購買意欲を刺激できます。
✅ 主な手法:プレミアムデザインや数量限定販売、ユーザーの成功事例(「この製品で生活が変わった!」など)、期間限定キャンペーンや特典
4. 購入フェーズ(Action)
iPhoneの購入を決断し、実際に注文する段階です。このフェーズでは、顧客がスムーズに購入へ進めるように、決済や注文の手続きを簡潔にし、安心して購入できる環境を整えることが重要です。
また、購入後のフォローも欠かせません。リピート購入やブランドへのロイヤルティを高めるためには、アフターサービスの充実や特典の提供が効果的です。新規顧客の獲得にはコストがかかるため、一度購入した顧客との関係を維持し、継続的な購買につなげることがビジネスの成功につながります。
✅ 主な手法:ワンクリック決済や簡単なフォーム入力、レビューや口コミの活用、返品保証やアフターサービスの提供
マーケティングファネルって、種類がこんなに多いの?
マーケティングファネルの概念は、Elmo Lewisが1898年に提唱したものです。先ほど紹介したモデルこそ、彼が生み出した AIDAファネル です。しかし、時代の流れとともに 消費者の購買行動が変化 し、それに適応したさまざまな形のファネルが登場しました。今日は、その中でも特に代表的な 4つの進化型ファネル をご紹介します!
1. TOFU-MOFU-BOFU (Top → Middle → Bottom)

マーケティングファネルの複雑なプロセスを シンプルに3つの段階に分ける戦略 であり、「認知 / 検討 / 購入 & ロイヤルティ」 という視点で整理されています。
ファネルの上部(TOFU)、中部(MOFU)、下部(BOFU)という形で簡略化されますが、従来のAIDAモデルよりも具体的なリードナーチャリング(潜在顧客の育成)が可能になるのが特徴です。
TOFU(Top of Funnel):ファネル上部のブランド認知フェーズ
TOFUの最も重要な目的は、ブランドの認知度を高め、最終的に潜在顧客が自社の製品やサービスを知り、興味を持つこと です。
例えば、今こうして ListeningMindのブログを読んでいる皆さん は、自然と「ListeningMindはマーケティングの専門会社なんだな」と認識されたのではないでしょうか?
もしこの記事の内容が役立つと感じれば、他のコンテンツも読んでみたくなり、ListeningMindへの関心が深まっていくはずです。
📌 KPI: MAU(Monthly Active Users / 月間アクティブユーザー数)、 DAU(Daily Active Users / 日間アクティブユーザー数)、 広告のインプレッション数・クリック率(CTR)、 ブログ訪問者数
MOFU(Middle of Funnel):ファネル中部の検討フェーズ
MOFUでは、消費者が購入する可能性が高まる時期を捉え、詳細な説明やストーリーテリングを通じて関心をさらに引き出す ことが重要です。
もし 低関与商品(例:日用品、食品) を販売しているなら、すぐに商品ページへ誘導し、購入を促す のが効果的でしょう。
しかし、高関与商品(例:高級家電、自動車、B2B製品) の場合は、単純な広告だけではなく、製品やブランドのストーリーを伝えるコンテンツ制作が必要になります。
このような 長期的に価値を提供できるコンテンツ を エバーグリーンコンテンツ(Evergreen Content) と呼び、時間が経つほど大きな効果を発揮します。
📌 KPI: 詳細ページの閲覧数、 新規ブランド認知率、 ブランド名の検索回数、
BOFU(Bottom of Funnel):ファネル下部の購入 & ロイヤルティフェーズ
BOFUは、顧客が実際に購入し、ブランドに対するロイヤルティを持つフェーズ です。
ファネルの最終段階であるため、これまでのマーケティング戦略を振り返り、どの施策が効果的だったかを分析することが重要になります。
また、割引クーポンの配布、ニュースレターの購読促進、会員プログラム などを活用し、購入後も継続的に顧客との接点を持つこと でブランドの存在を強く印象付けることができます。
📌 KPI: 広告投資収益率(ROAS)、 広告費用対売上高(ACOS)、 顧客獲得コスト(CAC)、 注文数・販売数
2. パイレーツファネル(Pirate Funnel, AAARRR)

AARRRモデルは、海賊の叫び声のように聞こえることから「海賊指標(Pirate Metrics)」とも呼ばれています。この指標は、ビジネスの健全性に直接影響を与える重要な指標(KPI) にフォーカスしており、特にスタートアップや新興企業に適したマーケティングファネルです。また、正確なデータ測定を行うことで、効果のない施策を特定し、改善につなげることが可能 です。そのため、AARRRモデルは、リソースの限られた企業が成長の最適化を図る際に非常に有効なフレームワークとなります。
Acquisition(獲得) → ファネル上部(認知フェーズ)
ユーザーが初めて商品やサービスを知る段階です。広告やSEO、SNSマーケティングを活用し、できるだけ多くの潜在顧客にリーチすることが重要です。
💡 主な施策:SEO、SNS広告、インフルエンサーマーケティング、プレスリリース、口コミサイト活用、アフィリエイト・パートナーシップ展開
📌 KPI: ウェブサイト訪問数、 広告のCTR(クリック率)、 登録フォームのコンバージョン率
Activation(活性化)
新規ユーザーが実際にサービスを試し、価値を感じる段階です。アカウント登録後の体験がスムーズであるほど、継続利用につながる可能性が高まります。
💡 主な施策:無料トライアルの提供(SaaSの14日間無料プランなど)、オンボーディング(チュートリアル、ガイドツアー)、初期成功体験を提供(特典やボーナス)
📌 KPI: 無料トライアル後のアクティブ率、 初回ログイン後の滞在時間、 アプリやソフトウェアの利用頻度
Retention(継続)
サービスを利用し続けてもらうためのフェーズです。継続利用の促進には、ユーザーの課題を解決し、メリットを感じ続けてもらうことが不可欠です。
💡 主な施策:メールマーケティング・プッシュ通知、定期的なコンテンツ提供(ブログ、動画、ニュースレター)、ユーザーコミュニティの形成、カスタマーサポートの充実
📌 KPI: ユーザーの定着率(DAU/MAU)、 友達紹介数・口コミ投稿数、 顧客LTV(生涯価値)
Referral(紹介)
満足度の高いユーザーがサービスを他者に紹介する段階です。口コミを活性化する仕組みを整えることで、新規ユーザー獲得コストを抑えつつ、成長スピードを上げることができます。
💡 主な施策:友達紹介プログラム(紹介すると特典付与)、バイラルキャンペーン(SNS投稿で報酬)、口コミやレビュー投稿の促進
📌 KPI:友達紹介数、SNSシェア数、口コミ投稿率
Revenue(収益化)
有料プランへのアップグレードや追加購入を促すフェーズです。価格設定や特典、クロスセル・アップセル戦略が重要になります。
💡 主な施策:プレミアムプランの特典訴求、アップセル・クロスセル戦略(追加機能の提供)、長期契約割引
📌 KPI:売上成長率、顧客生涯価値(LTV)、有料ユーザー転換率
3. フライホイール(Flywheel Model)

従来のファネルが「一度流れた顧客が離れてしまう構造」なのに対し、フライホイールモデルは「顧客との関係を継続的に強化しながら、成長を持続させる」ことを目的としたマーケティング手法です。特にB2B企業やSaaS事業者に適しており、長期的な顧客関係の構築を重視します。
このモデルでは、顧客のエンゲージメントを高めることで、新規獲得よりも効率的に事業を成長させることができる という考え方が根底にあります。マーケティングだけでなく、カスタマーサポートやプロダクト改善とも連携しながら、ブランドロイヤルティを向上させることが特徴です。
Attract(惹きつける) → 認知フェーズ
潜在顧客に対し、商品・サービスの価値を伝え、興味を持ってもらう段階です。単なる広告だけではなく、ユーザーにとって役立つコンテンツの提供 が重要になります。
💡 主な施策:SEO対策を施したブログ記事、SNSでの情報発信、動画コンテンツ制作、業界レポートや無料eBookの提供
📌 KPI:ウェブ訪問数、SNSエンゲージメント率、オーガニック検索流入数
Engage(関係を深める) → 検討フェーズ
商品やサービスに興味を持った顧客と、積極的にコミュニケーションを取る段階です。適切な情報を提供し、顧客にとっての価値を最大化させることが重要です。
💡 主な施策:チャットボット・カスタマーサポート、ウェビナー開催、無料トライアルの提供、ユーザーインタビュー
📌 KPI:リードナーチャリングの進捗、ウェビナー参加者数、問い合わせ数
Delight(満足度向上) → 購入&ロイヤルティフェーズ
既存顧客の満足度を高め、ブランドのファンになってもらう段階です。長期的に継続してもらうためには、アフターサポートやコミュニティの充実が欠かせません。
💡 主な施策:ロイヤルティプログラムの提供、コミュニティ運営、カスタマーサクセスチームの設置、定期的なアップデート情報の配信
📌 KPI:顧客満足度(NPS)、リピート購入率、カスタマーサポート満足度
どのファネルを選ぶべき?
マーケティングファネルにはさまざまな種類がありますが、ビジネスの目的や業種によって最適なモデルは異なります。例えば、B2CとB2Bでは購買プロセスが大きく異なり、必要な施策も変わってきます。また、短期的な売上向上を狙うのか、ブランドの長期的な成長を目指すのかによっても、適したファネルは変わります。では、具体的にどのファネルを選べばよいのでしょうか?業種や目的別におすすめのファネルを見てみましょう!
✅ B2C電子商取引(EC) → AIDAファネル、TOFU-MOFU-BOFUファネル
✅ B2B SaaS & スタートアップ → パイレーツファネル、フライホイールファネル
✅ ブランド認知度向上 & 長期的な成長戦略 → フライホイールファネル
ファネルの選択は、ビジネスのゴールと業界特性に合わせて最適化することが重要 です!
ファネルを活用して成功した企業事例を紹介
1. ZOZOTOWN

使用ファネル:TOFU-MOFU-BOFU(認知 → 検討 → 購入 & ロイヤルティ)
ZOZOTOWNは、ファッションEC業界において独自の戦略を展開し、新規顧客の獲得からロイヤルカスタマーの育成までを包括的にカバーするマーケティングファネル を活用しています。特に、個別最適化された購買体験の提供 や 独占アイテムを活用したブランディング戦略 によって、高いリピート率と成長を実現しています。
TOFU(認知フェーズ) – ブランド認知度向上 & 新規顧客の獲得
ZOZOTOWNは、有名ブランドやデザイナーとのコラボレーションを積極的に展開し、限定商品を提供することで話題性を獲得 しています。また、SNS広告やインフルエンサーマーケティングを活用し、若年層を中心にブランド認知を拡大。さらに、新規会員限定の割引キャンペーン を実施することで、新規顧客の流入を加速させています。

出典:https://corp.zozo.com/
💡 主な施策:
✔ ブランド・デザイナーとのコラボレーションによる話題作り
✔ ファッション雑誌、SNS広告、インフルエンサーマーケティングの活用
✔ 新規会員向けの割引プロモーション & 期間限定セールの開催
MOFU(検討フェーズ) – 購買意欲の向上 & ユーザー体験の最適化

顧客が商品に興味を持った段階では、詳細な商品情報やパーソナライズドなレコメンドを通じて、購入を促進 します。ZOZOTOWNの特徴の一つとして、ZOZOスーツ(3D体型測定サービス) を活用し、顧客に最適なサイズを提案する機能があります。これにより、サイズ選びの不安を解消し、返品率の低減とコンバージョン率の向上 を実現しています。
💡 主な施策:
✔ 商品詳細ページに高解像度画像、360度ビュー、着用レビューを掲載
✔ AIを活用したパーソナライズドレコメンド(類似商品・トレンド商品の提案)
✔ ZOZOスーツによる体型データ測定 & サイズ最適化サービス
BOFU(購入 & ロイヤルティフェーズ) – リピート購入 & 顧客ロイヤルティの強化

購入後のフェーズでは、顧客との継続的な関係構築を重視 し、リピート購入を促す施策を展開しています。特に、ZOZOプレミアム(会員制サービス) の導入により、送料無料やポイント特典などのメリットを提供し、継続利用を促進。また、購入後にはリマインドメールやプッシュ通知を活用し、再訪問・リピート購入を促しています。
💡 主な施策:
✔ ZOZOプレミアム会員制度(送料無料、ポイント還元、限定セールの提供)
✔ 購入後のリマインドメール & プッシュ通知による再訪問促進
✔ 期間限定セール & 特別キャンペーンを活用したリピート購入の促進
2.Netflix

使用ファネル:フライホイールモデル(Attract → Engage → Delight)
Netflixは、単なる動画配信サービスにとどまらず、長期的なユーザー関係を構築する「フライホイールモデル」を活用 しています。特に、パーソナライズされたレコメンド、オリジナルコンテンツの制作、視聴データに基づくアルゴリズム最適化 を駆使し、サブスクリプション型ビジネスとして圧倒的な成長を遂げています。
Attract(惹きつける) – 新規ユーザーの獲得

Netflixは、潜在ユーザーに対して「無料トライアル」や「独占コンテンツの魅力」を前面に出し、購読を促しています。また、SNSやデジタル広告を活用し、ターゲット層ごとに最適なプロモーションを展開 することで、幅広い層にリーチしています。
💡 主な施策:
✔ 独占配信作品(例:「ストレンジャー・シングス」「イカゲーム」など)で話題性を獲得
✔ YouTube、Instagram、Twitterを活用したターゲティング広告
✔ 無料トライアル(※地域によって異なる)や期間限定キャンペーンの実施
Engage(関係を深める) – ユーザーの定着

登録後、Netflixは視聴データをもとにユーザーごとに最適化されたレコメンドを提供 し、継続的な視聴を促します。また、オリジナルコンテンツの制作やインタラクティブ作品の導入 により、ユーザー体験を向上させています。
💡 主な施策:
✔ パーソナライズドレコメンド(視聴履歴に基づく最適な作品提案)
✔ オリジナル作品の充実(「Netflixオリジナル」ブランドの強化)
✔ インタラクティブコンテンツ(「ブラック・ミラー: バンダースナッチ」など)で視聴者参加型の体験を提供
Delight(満足度向上) – ロイヤルティ強化 & 長期的な継続利用

Netflixは、ユーザーが長期間サービスを利用し続けるよう、快適な視聴体験の提供と新たなエンターテイメント体験の創出 を重視しています。特に、広告なしのシームレスな視聴体験や、グローバル市場を意識した多様なコンテンツ展開 により、世界中で高いユーザー満足度を維持しています。
💡 主な施策:
✔ アカウント共有機能(家族や友人と同時視聴を可能に)
✔ 多言語対応 & ローカライズコンテンツ(日本、韓国、インド市場向けの作品制作)
✔ 定期的な機能アップデート(倍速再生、モバイル視聴オプションなど)