「顧客がどのような経緯で自社を知り、購買に至ったのかがわからない」「施策を打っているのに成果が上がらない原因を特定できない」——そんな課題に直面していませんか。顧客の行動を点ではなく線で捉えなければ、最適な施策を最適なタイミングで届けることはできません。
カスタマージャーニーとは、顧客が商品やサービスを認知してから購買・利用・推奨に至るまでの一連の行動・思考・感情のプロセスを時系列で捉えた概念です。
この記事では、以下のポイントを解説します。
- カスタマージャーニーの基本的な意味と5段階の構造
- 従来のファネルモデルとの違いと現代における重要性
- カスタマージャーニーをマーケティング施策に活かす方法
- カスタマージャーニーマップの概要と活用のポイント
カスタマージャーニーの意味と基本概念
カスタマージャーニーとは、顧客が商品・サービスとの最初の接点から購買後の体験までを一連の「旅」として時系列で捉え、各段階の行動・思考・感情・接点を可視化するマーケティング概念です。
カスタマージャーニーの考え方は、2000年代後半から注目されるようになりました。従来のマーケティングでは「認知→興味→比較→購買」というファネル型の直線的なモデルが主流でしたが、デジタル化の進展により消費者の行動は複雑化しています。
現代の消費者は、Web検索・SNS・口コミサイト・動画・実店舗など複数のチャネルを行き来しながら情報を収集し、購買を決定します。こうした複雑な行動プロセスを包括的に理解するために、カスタマージャーニーの概念が不可欠になりました。
従来のファネルモデルとの違い
| 観点 | 従来のファネルモデル | カスタマージャーニー |
|---|---|---|
| 構造 | 直線的・一方向 | 非線形・往復あり |
| 捉え方 | 企業視点(売る側の論理) | 顧客視点(買う側の行動) |
| 対象 | 行動(何をしたか) | 行動・思考・感情の3軸 |
| チャネル | 単一または限定的 | オンライン・オフライン横断 |
| 目的 | 購買までの誘導 | 購買後のLTV・推奨まで含む |
ファネルモデルが「企業が顧客を漏斗のように絞り込む」発想であるのに対し、カスタマージャーニーは「顧客が自分の意志で情報を集め、意思決定する」プロセスを追う発想です。顧客中心のマーケティングを実践するうえで、この視点の転換が重要です。

【ヒント】消費者がどのような関心の流れで購買に至るのかを把握することが重要です。リスニングマインドのジャーニーファインダーでは機械学習を用いて消費者の関心の変化を自動で分析し、ジャーニーの全体像把握を支援します。<ジャーニーファインダーの機能紹介>
カスタマージャーニーの5段階と各フェーズの特徴
カスタマージャーニーは一般的に「認知→興味・関心→比較・検討→購買・決定→継続・推奨」の5段階で構成されます。各段階で顧客の行動・思考・感情は大きく異なります。

第1段階:認知(Awareness)
顧客が自分の課題やニーズを自覚し、解決策の情報を探し始める段階です。この段階では「まだ何を買うかは決まっていない」状態であるため、カテゴリーや課題に関連したキーワードで検索します。
この段階で重要なのが CEP(カテゴリーエントリーポイント)の把握です。消費者がカテゴリーに関心を持つ最初のきっかけとなる文脈を理解することで、ターゲットとの最初の接点を効果的に設計できます。

【ヒント】消費者がどのようなキーワードで関心を持つカテゴリーに入ってくるのかを把握することで、認知段階の最適なメッセージが設計できます。リスニングマインドのクエリーファインダーであれば、指定したキーワード周辺の検索語をボリューム順に一覧表示し、認知段階の施策対象キーワードを特定できます。<クエリファインダーの機能紹介>
第2段階:興味・関心(Interest)
特定のカテゴリーや商品に興味を持ち、積極的に情報を集める段階です。「○○とは何か」「○○のメリット・デメリット」「○○ 比較」といったキーワードで検索し、複数の情報源を参照します。
この段階では、顧客はまだ購買を決めていません。比較検討の材料を提供することで、次のフェーズへの移行を促します。ホワイトペーパー、事例紹介、ブログ記事などのコンテンツが有効です。

【ヒント】検索の経路をみると、消費者が自分の目的を達成するためにどのように検索語を変化させていったのか、その経緯を確認することができます。リスニングマインドのパスファインダーであれば、こうした経路の変化を約15億語の語彙について表示させることができます。<パスファインダーの機能紹介>
第3段階:比較・検討(Consideration)
複数の選択肢を比較し、自分に合った商品・サービスを絞り込む段階です。「○○ vs ○○」「○○ 評判」「○○ 料金」などの具体的なキーワードで検索し、競合との違いを精査します。
この段階が最も競合との差別化が問われるフェーズです。顧客が比較検討している軸を正確に把握し、自社の強みを訴求するコンテンツを提供することが重要です。

【ヒント】検討段階の顧客が自社と競合をどのように比較検討しているのかを把握することで、優先的に提供すべきコンテンツが明確になります。リスニングマインドのロードビュー機能では、自社から競合への検索経路の中間にある語彙を特定でき、検討段階の顧客が求めている比較軸が見えてきます。<ロードビューの機能紹介>
第4段階:購買・決定(Purchase)
最終的な購買や契約を行う段階です。この段階では、残った不安や懸念を解消することが購買率を高める鍵になります。無料トライアル、デモ、個別提案、導入事例など、意思決定を後押しするコンテンツが効果的です。
BtoBでは、複数のステークホルダーが関与するため、役職・立場ごとに異なる懸念点に対応することが重要です。営業担当者はROI、IT部門はセキュリティ、経営層はコストといったように、意思決定に関わる全員のニーズを満たす情報を準備します。
第5段階:継続・推奨(Loyalty/Advocacy)
購入後の利用体験を経て、リピートや他者への推奨が生まれる段階です。この段階を設計することで、LTV(顧客生涯価値)の向上と、口コミによる新規顧客獲得のサイクルが生まれます。
オンボーディング支援、定期的なフォローアップ、コミュニティ運営などで顧客との関係を継続的に深めることが、継続・推奨段階の施策の基本です。

【ヒント】過去の検索経路と比較することで、消費者の関心がどのように変化しているのかを確認できます。リスニングマインドの過去比較機能では、現在の検索経路と過去(3ヶ月〜12ヶ月)の検索経路を比較し、こうした消費者の関心の変化を可視化できます。<過去比較機能の紹介>
カスタマージャーニーが重要な3つの理由
カスタマージャーニーが重要な理由は、「顧客視点での施策設計」「部門横断の共通認識形成」「データに基づく体験改善」の3つの価値をもたらすためです。

理由1:顧客視点で施策を設計できる
企業視点だけで施策を考えると、「売りたい商品の情報」を「企業が届けたいタイミング」で発信しがちです。カスタマージャーニーを描くことで、「顧客が求めている情報」を「顧客が必要としているタイミング」で届ける設計に転換できます。
理由2:部門横断の共通認識を持てる
マーケティング部門・営業部門・カスタマーサポート部門はそれぞれ顧客の一面しか見ていません。カスタマージャーニーを共有することで、各部門が顧客体験の全体像を理解し、一貫した顧客対応が可能になります。
理由3:データに基づいて体験を改善できる
カスタマージャーニーに定量データ(アクセスデータ・コンバージョン率・離脱率など)を重ね合わせることで、「どの段階で」「なぜ」顧客が離脱しているかを特定できます。勘や経験ではなく、データに基づいた改善が可能になります。
カスタマージャーニーの活用法:施策への展開
カスタマージャーニーのマーケティング活用では、各段階に最適なコンテンツとチャネルを割り当てることで施策の精度と一貫性を高められます。
| ジャーニー段階 | 主な施策 | 重要なKPI |
|---|---|---|
| 認知 | SEO・SNS・Web広告 | 流入数・インプレッション |
| 興味・検討 | コンテンツ・メール・リターゲティング | 資料DL数・回遊率 |
| 購買 | デモ・無料トライアル・個別提案 | コンバージョン率・商談化率 |
| 継続・推奨 | オンボーディング・CS・コミュニティ | リピート率・NPS |
認知段階ではSEOやSNSで流入を確保し、興味・検討段階ではコンテンツで検討材料を提供し、購買段階ではデモや提案でコンバージョンを促し、継続段階ではCSやコミュニティでLTVを高めます。各段階に最適なKPIを設定することで、改善の方向性が明確になります。
BtoBにおけるカスタマージャーニーの特徴
BtoBのカスタマージャーニーは、BtoCと比べて複雑です。購買に関わるステークホルダーが複数存在し、それぞれ異なる関心と懸念を持っています。また検討期間が長く(数週間〜数ヶ月)、社内稟議や複数回の商談を経て意思決定されます。
BtoBでは「情報収集→社内提案→比較検討→稟議→契約→オンボーディング」のように段階が細分化されるため、ステークホルダーごとにジャーニーを描き、それぞれに最適な情報提供を行うことが商談化率向上の鍵です。

【ヒント】消費者の関心は購買に至るまでのプロセスの中で変化します。こうした変化を捉えることで、認知に至る道筋や、競合へブリッジするキッカケなど、重要なインサイトを得ることができます。リスニングマインドのジャーニーファインダーでは機械学習を用いてこうした変化の様子を自動で分析できます。<ジャーニーファインダーの機能紹介>
カスタマージャーニーマップとは?概要と役割
カスタマージャーニーマップとは、カスタマージャーニーの各段階における顧客の行動・思考・感情・接点・課題を一枚の図表に可視化したツールです。
カスタマージャーニーが「概念・考え方」であるのに対し、カスタマージャーニーマップはそれを「具体的に図に落とし込んだ成果物」です。マップを作成することで、チーム全員が顧客体験の全体像を共有し、改善すべきポイントを特定できるようになります。
カスタマージャーニーマップの主な構成要素
| 構成要素 | 説明 |
|---|---|
| ペルソナ | 対象となる典型的な顧客像 |
| ジャーニーの段階 | 認知→興味→検討→購買→継続の各フェーズ |
| 行動(Doing) | 各段階で顧客が実際にとる行動 |
| 思考(Thinking) | 各段階で顧客が考えていること |
| 感情(Feeling) | 各段階で顧客が感じている満足度や不安 |
| タッチポイント | 顧客が接触するチャネルや媒体 |
| 課題・ペインポイント | 顧客が各段階で感じている障壁や不満 |
| 改善機会 | 企業が対応すべきアクションや施策 |
カスタマージャーニーマップの具体的な作り方・作成ステップ・失敗しないポイントについては、下記の記事で詳しく解説しています。
カスタマージャーニーを検索データで可視化する — ListeningMind(リスニングマインド)
ListeningMind(リスニングマインド)とは、日本語3億語・英語10億語・韓国語2億語の消費者検索行動データを基盤に、消費者の認知から購買に至るまでの情報探索プロセスをデータで可視化するSaaSプラットフォームです。
カスタマージャーニーの設計において最大の課題は、「顧客の行動を正確に把握するデータが不足している」ことです。アンケートやインタビューでは顧客の記憶に依存するため、実際の行動と回答にギャップが生じます。一方、検索行動データは消費者が「自分の意志で、リアルタイムに」行った行動の記録であるため、より正確なジャーニーの把握が可能です。
| 観点 | 従来のジャーニー設計 | Listening Mind |
|---|---|---|
| データソース | アンケート・インタビュー(記憶ベース) | 検索行動データ(行動ベース) |
| 分析の粒度 | 大まかな段階の把握 | 検索キーワードの変化から具体的な行動を特定 |
| 更新頻度 | 年1〜2回の定期調査 | 常時更新の検索データ |
| カバー範囲 | 自社顧客に限定 | 市場全体の消費者行動 |
| CEPの把握 | 推測に依存 | 検索データから定量的に特定 |
【ヒント】消費者の意図や認知を量で測ることには限界があります。消費者の関心は購買に至るまでのプロセスの中で変化します。こうした変化を捉えることで、認知に至る道筋や、競合へブリッジするキッカケなど、重要なインサイトを得ることができます。リスニングマインドのジャーニーファインダーでは機械学習を用いてこうした変化の様子を自動で分析できます。<ジャーニーファインダーの機能紹介>
Listening Mindの実際の画面と分析デモを確認したい方へ 検索行動データから自社のカスタマージャーニーを可視化する方法を、実際のデモ画面でご確認いただけます。
よくある質問(FAQ)
Q1. カスタマージャーニーとは何ですか?
カスタマージャーニーとは、顧客が商品やサービスを認知してから購買・利用・推奨に至るまでの一連の行動・思考・感情のプロセスを時系列で捉えた概念です。顧客体験を「旅(ジャーニー)」に見立てて全体像を把握します。
Q2. カスタマージャーニーとカスタマージャーニーマップの違いは?
カスタマージャーニーは「顧客の行動プロセス全体を捉える概念」、カスタマージャーニーマップは「その概念を図表に可視化した成果物」です。まず概念を理解し、マップで可視化・共有するという順序で活用します。
Q3. BtoBでもカスタマージャーニーは有効ですか?
BtoBにおいてもカスタマージャーニーは非常に有効です。BtoBでは購買に関わるステークホルダーが複数いるため、各決裁者・利用者ごとにジャーニーを描き、それぞれに適した情報提供を行うことで商談化率を高められます。
Q4. カスタマージャーニーはどのくらいの頻度で見直すべきですか?
半年〜1年に一度の見直しを推奨します。市場環境や消費者の行動パターンは常に変化するため、新しいデータに基づいて定期的に更新することが重要です。
Q5. CEP(カテゴリーエントリーポイント)とは何ですか?
CEP(Category Entry Point)とは、消費者が特定のカテゴリーに関心を持つ最初のきっかけや文脈のことです。カスタマージャーニーの認知段階においてCEPを把握することで、ターゲットとの最初の接点を効果的に設計できます。
まとめ
カスタマージャーニーとは、顧客が認知から購買・推奨に至るまでの行動・思考・感情を時系列で捉える概念です。重要なポイントを整理します。
- カスタマージャーニーは「認知→興味・関心→比較・検討→購買・決定→継続・推奨」の5段階で構成される
- 従来のファネルモデルと異なり、顧客視点・非線形・購買後まで含む点が特徴
- 各段階で顧客の行動・思考・感情は大きく異なり、段階別に最適な施策設計が必要
- BtoBではステークホルダーごとのジャーニー設計が商談化率向上の鍵
- カスタマージャーニーマップは、ジャーニーを図表に可視化してチームで共有するためのツール
顧客の行動を「点」ではなく「経路」として捉えることが、マーケティング施策の精度を高める第一歩です。消費者の実際の検索行動からジャーニーを可視化したい方は、リスニングマインドのデモをお試しください。
本記事の情報は2026年時点のものです。
執筆者紹介
株式会社 アセントネットワークス ソリューション事業部 シニアアナリスト 吉岡直樹
デジタル系プロダクションの設立の後、NEC(ヒアラブルデバイスUX設計)、JTB(輸出促進支援事業次席顧問)、TBS(Screenless Media Lab. テクニカルフェロー)、NHK(放送100年プロジェクト/データ分析)などへの参加を経て現職。
日本ディープラーニング協会 認定エンジニア (JDLA for ENGINEER 2022#2)、(米)PMI認定 プロジェクトマネジメント・プロフェッショナル (PMP)、経営学MQT 上級 (NOMA)、データサイエンティスト協会 会員 (個人)、日本マネジメント学会 会員 (個人)。
著書:「AIアシスタントのコア・コンセプト/人工知能時代の意思決定プロセスデザイン(BNN:2017)」、「SENSE インターネットの世界は「感覚」に働きかける(日経BP:2022)」
※ NHK 放送100年「メディアが私たちをつくってきた!?」データ分析担当
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