本記事では、アメリカのスキンケア市場分析シリーズの続きとして、指名検索量トップ3ブランドにフォーカスして分析します。
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アメリカのスキンケア市場を検索データで調査|注目成分・肌悩み・評価傾向を読み解く
アメリカスキンケア市場 検索量トップ3ブランド
スキンケアアイテムとセットで検索されることが多いブランドはどこでしょうか?

直近3ヶ月間のアメリカ市場において、特に高い認知度(検索量)を誇るスキンケアブランド上位3社は次の通りです。
1. The Ordinary(ジ・オーディナリー) | 月平均検索量:527,473回
2. CeraVe(セラヴィ) | 月平均検索量:378,852回
3. Neutrogena(ニュートロジーナ) | 月平均検索量:374,175回
ブランド別分析:The Ordinary(オーディナリー)
検索ワードから読み解く消費者インテント

アメリカ市場で最も検索量が多かったThe Ordinary(オーディナリー)に関連するキーワードを詳しく見てみると、グリコール酸、ヒアルロン酸、アゼライン酸といった機能性成分に関する検索が多いことが特徴的です。
さらに「7%」「2%」といった具体的な成分濃度に関する検索も目立ち、消費者が成分や配合量に対して非常に敏感であることがわかります。
the ordinary niacinamide 10 + zinc 1(増減率816%)
the ordinary glycolic acid 7% toning solution(増減率650%)
といった製品名・正式名称での検索が急増しており、単なる成分名やブランド名だけでなく、「どのブランドの、どの成分が、どれだけ配合された製品なのか」まで具体的に認識し、目的意識を持って検索する消費者が増えていることが分かります。
検索経路から読み解く消費者行動:The Ordinary Glycolic Acid

前後の検索経路を分析した結果、The Ordinary Glycolic Acidを検索する消費者は、明確な使用目的を持った上で検索行動を続ける傾向が見られます。
消費者は「the ordinary glycolic acid toner」「how to use glycolic acid the ordinary」など、ブランド名を含んだキーワードから検索を開始するケースが多く、ブランドへの親しみやすさと製品への具体的なイメージが定着している様子がうかがえます。
【検索ジャーニーの2つの方向性】
以降の検索経路は以下の2方向に分かれます。
- より深い使用目的探索:
脇の美白や太ももの内側など特定部位での活用法に関する検索が多く、「for underarms」「for thighs」「for hair」など用途別の検索が細かく枝分かれしている。
ニキビケア用途だけでなく、頭皮や髪、足まで多様な活用シーンが広がっています。脇の美白、太ももの内側など、特定部位での活用法中心。 - 消費者検証段階への拡張:
「the ordinary glycolic acid review reddit」「routine reddit」といったキーワードが頻出し、実際の使用レビューやスキンケアルーティン、副作用に関する議論を通じて、購入前後で繰り返し情報を確認する傾向。
特にRedditを中心としたコミュニティサイトが意思決定プロセスの鍵となっている。
【主なインサイト】
- Redditは決定段階の重要なトリガー
消費者は公式情報だけでなく、実際の利用者の声を重視し、口コミやビフォーアフター事例を通じて信頼を形成しています。 - 使用目的が急速に多様化
グリコール酸は単なるニキビケアを超え、脇の下・太もも・頭皮・足・髪など多様な部位で使われるケースが増加。また「glycolic acid and caffeine」など、他成分と併用する検索も見られています。 - 適合性と安全性への関心の高さ
「副作用」「敏感肌対応」「使用期限」などに関連する検索が旅路後半で集中し、消費者は安心して使用できるかどうか慎重に検証する姿勢を持っています。例えば「glycolic acid cream vs gel」「fragrance free vs scented」など、使用感や香りの有無まで細かく比較されています。
このような検索経路から、単なる成分探索を超えて、日常の肌悩みの解決を目的とした消費者の実用的な探索行動へと進化していることを示しています。
The Ordinaryは、消費者が探索過程で偶然見つけるブランドではなく、すでに認知した上で検索を始める、「アンカーブランド(anchor brand)」として確立されている存在です。
ブランド別分析:Cerave(セラヴィ)
検索ワードから読み解く消費者インテント

CeraVe(セラヴィ)に関する検索ワードを詳しく見ると、代表製品であるフェイスウォッシュの検索量が圧倒的ですが、最近ではレチノールセラム、ティンテッドサンスクリーン、ビタミンCルーティンなど機能性スキンケアアイテムへの関心も増加していることが分かりました。
検索経路から読み解く消費者行動:Cerave Resurfacing Retinol Serum

検索経路を分析したところ、多くの場合、Cerave製品名から検索を始めるのではなく、レチノール濃度や肌の悩みといったノンブランドキーワードでの検索や、他ブランドとの比較をまず行い、その後Ceraveに絞り込んで検索を進めています。
【検索ジャーニーの2つの方向性】
以降の検索経路は以下の2方向に分かれます。
- ブランドおよび成分比較の深化:
様々なレチノール製品間での効能、価格、テクスチャー、濃度などを比較しながら情報を探す流れ。
特にThe Ordinary、Olay、La Roche-Posayなど他ブランド製品名や「retinol percentage」「is 1.0 too strong」といった具体的な濃度・強度比較に関する検索が頻繁に見られる。 - 使用レビューおよび使用方法確認:製品使用前にRedditレビューやビフォーアフター画像、使用のタイミング(朝夜)や回数などの検索を通じて確信を得る流れ。「cerave resurfacing retinol serum review reddit」「how to use cerave retinol serum」だけでなく、「before and after」「wrinkles」「acne scars」など使用効果に関する検索も目立つ。
【主なインサイト】
- ブランド比較は検索序盤から登場:The Ordinary、Olay、Neutrogena、Sunday Riley、La Roche-Posayなど様々なブランドのレチノール製品との比較検索が序盤に頻繁に見られる。製品選びにあたり、複数ブランドを横並びで検討する消費者行動が確認できる。
- テクスチャーや濃度への関心が核心:「retinol percentage」「is 1.0 too strong」「cerave retinol percentage」など、製品の濃度やテクスチャー、強度に関する具体的な比較検索が目立つ。
- 使用方法やレビュー確認が決定段階の鍵:「cerave resurfacing retinol serum review reddit」「how to use cerave retinol serum」「when to apply cerave retinol serum」といった検索が多く、使用効果や実際の使用方法、使うタイミング(朝夜など)まで含めた具体的な情報収集が購入決定において重要な役割を果たしていることが確認できる。
消費者の検索行動は、ブランドを知ることからスタートし、成分や使用レビューを比較・検討しながら、段階的に信頼を形成していく流れです。
Ceraveは親しみやすさと安全性、合理的な価格競争力を背景に、競合ブランドとの比較の中で説得力を高め、比較優位性を証明したときに選ばれるブランドとして機能しています。
ブランド別分析:Neutrogena(ニュートロジーナ)
検索ワードから読み解く消費者インテント

Neutrogena(ニュートロジーナ)に関する検索ワードは、保湿と紫外線対策が中心となりつつあり、代表製品であるHydro BoostやUltra Sheerラインへの関心が高まっています。
「hydro boost water gel」、「hydro boost water gel moisturizer」の検索量が5月、6月に急増していました。
検索経路から読み解く消費者行動:Neutrogena Hydro Boost Water Gel

Neutrogena Hydro Boost Water Gelの前後の検索経路から、消費者は明確な購入意図から出発するというよりも、製品適合性、肌質、安全性への懸念、さらには他ブランド製品との比較を含む分散型・慎重型の検索プロセスを特徴とします。
多くのユーザーはブランドへの忠誠心というよりも、「ニュートロジーナは脂性肌に合うか?」「ヒアルロン酸は効果があるか?」「この製品は廃盤になったのか?」といった汎用的疑問から検索をスタートさせ、RedditやAmazonなど第三者レビューサイトを活用しながら製品選定を進める傾向があります。
主なインサイト
- 不確実性への懸念が検索に反映
販売終了(discontinued)関連キーワードが集中:「この製品は廃盤になったのか」「再販されているのか」など、検索経路後半で繰り返し確認される傾向が顕著。
皮膚科推奨やレビューサイト依存:「dermatologist recommended」「Reddit review」などが後半フローで目立つ。 - 消費者の成分リテラシーが向上
検索初期から成分名・効果ワードが登場:「ヒアルロン酸」「無香料(fragrance-free)」「ノンコメドジェニック」など。
他ブランド製品との比較:Cerave、La Roche-Posay、Cetaphilなどが同時に検索され、消費者は成分ベースで横断的に比較。 - テクスチャー・パッケージ選択肢の細分化傾向
「cream vs gel」「pump vs tube」「fragrance free vs scented」といった比較キーワードが繰り返し登場。製品オプション選定に細かくこだわる購買行動が確認。 - コミュニティ依存型の意思決定プロセス
RedditやAmazonレビューが意思決定の鍵:検索経路内において「reddit acne」「reddit review」「amazon」など具体的プラットフォーム名が頻出。→ 情報源として公式サイトではなくコミュニティ・第三者レビューを重視する傾向。
多様な製品オプションが存在するNeutrogena製品群の特性上、消費者は即時購入決定よりも繰り返しの検索と検証プロセスを経る傾向があります。
これは単なる「混乱」ではなく、検索を通じて明確な選択をするために複数要素を繰り返し確認する慎重な意思決定行動と捉えられます。
ブランド信頼構築の過程で、複数回の判断・比較が必要であることを示しており、マーケティング設計時にはその行動プロセスを前提とした情報提供設計(FAQ、成分比較表、口コミ促進施策など)が有効と考えられます。
ブランド別カスタマージャーニー比較
アメリカ市場の検索データを基にした上位3大スキンケアブランドの消費者検索ジャーニーを比較すると、ブランドごとに認知段階や探索経路が明確に異なることがわかりました。
The Ordinary —「最初から目的が明確なアンカーブランド」。
消費者は製品名・成分濃度(例:the ordinary glycolic acid 7%、niacinamide 10% + zinc 1%)といった具体的で機能的なキーワードで直接検索を開始します。
- 検索スタート地点: ブランド名+成分濃度
- ジャーニー特徴:
- 用途別(underarms、hair、thighs)など部位特化検索が細かく枝分かれ
- Redditレビューや副作用確認が決定段階の必須プロセス
- 「glycolic acid and caffeine」のような他成分との併用検索
The Ordinaryは比較対象ではなく、自分の悩みに対する最初の解決策候補として認識されています。
つまり、「どれを選ぶか」よりも「どう使うか」「どこに使うか」に意識が向いているブランドです
CeraVe —「比較と検証を通じて信頼を獲得するブランド」
消費者は最初からCeraVeを指定するのではなく、「retinol percentage」「is 1.0 too strong」など成分名や濃度条件で検索を始めます。
- 検索スタート地点: レチノール濃度、肌悩み(ニキビ・敏感肌)
- ジャーニー特徴:
- The OrdinaryやLa Roche-Posayなど他ブランドとの横断比較
- 「cerave resurfacing retinol serum review reddit」などレビューや使用タイミング確認(morning vs night)
- 濃度や価格、安全性を踏まえた段階的信頼構築
CeraVeは価格・成分・安全性バランスの中で選ばれるセカンドブランドとして機能します。
比較と検証を重ねる中で信頼が積み上がり、「やっぱりこれかな」と選ばれるポジションです。
Neutrogena —「馴染みがあるからこそ再確認するブランド」
ブランドとしての認知は強いものの、消費者は「念のため確認」を繰り返します。
- 検索スタート地点: ニュートロジーナ製品名+安全性や販売状況確認
- ジャーニー特徴:
- 「hydro boost water gel discontinued」など販売継続性チェック
- 「cream vs gel」「pump vs tube」「fragrance free vs scented」など細かい製品オプション比較
- Cerave、Cetaphilなど他ブランドとの比較検索も並行
- RedditやAmazonレビュー依存
Neutrogenaは過去に使ったことがあるが、今も買うべきか再検証するブランドとして機能しています。
即決ではなく、「廃盤になっていないか」「今の肌状態に合うか」など慎重に確かめる探索スタイルが特徴です。
要約すると:
・The Ordinary: 「欲しい製品がある。どう使えばいい?」
・CeraVe: 「良いって聞いたけど、他と比べたらどう?」
・Neutrogena: 「馴染みはあるけど、もう一度確認してみようか。」
このような検索ジャーニーの違いは単なるブランド好みではなく、成分リテラシー、比較検証、製品信頼構築という複合的要素が消費者選択に影響していることを示しています。
マーケティング戦略やコンテンツ設計では、こうしたブランド別ジャーニーの違いを前提にした訴求ポイントや情報提供設計が重要となります。
最後に
アメリカのスキンケア市場において、The Ordinary、CeraVe、Neutrogenaはそれぞれ異なる方法で消費者の認知と探索ジャーニーを導いています。
ブランド選択は単なる認知度や好感度だけでなく、消費者の情報探索力や実際の問題解決ニーズが組み合わさった結果であることがわかります。
スキンケア市場での成功は、今やブランドが消費者の検索ジャーニーのどの位置に存在するかにかかっています。
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