マンジャロで痩せた後、次に何が気になる?|日米Google検索データで見つけた新しい機会

最近、GLP-1(マンジャロなどを作る成分)への関心は急速に高まっています。その関心の高まりは、Google検索データにも明確に表れています。検索時に入れられるキーワードやその結果は、生活者が「何をどの程度気にしているのか」を映します。

日本におけるGLP-1関連検索量の4年間の推移を示したグラフ

図1|日本のGLP-1関連検索量の推移(4年)(*GLP-1以外にも関係性を持つ言葉を含む) 

マンジャロ(Mounjaro)、オゼンピック(Ozempic)、ウィーゴビ(Wegovy)、ゼップバウンド(Zepbound)などの製品名と、GLP-1、チルゼパチド(tirzepatide)、セマグルチド(semaglutide)などの成分名に関する検索量は、4年累計で約4,800万回、直近1年でも約2,400万回に達しています。月間検索量も大きく伸びており、GLP-1への関心が継続的に高まっていることがわかります。

GLP-1への関心が高まるなか、GLP-1を扱うクリニックにとっては別の課題もあります。同じ薬剤を扱う以上、薬そのものだけでは差別化しにくいことです。では、GLP-1治療に加えて、新たに提案できる価値はないのでしょうか。

そこで米国のGoogle検索データを見ていくと、「減量しながら筋肉を守りたい」というニーズと、そのための具体的な対策が確認できました。本記事では、米国で確認したニーズ、そのための具体的な対策を日本のデータと比較しながら、処方後にどのような支援やサービスの可能性があるのかを探ります。

この記事でわかること

  • 米国では「痩せた後、筋肉をどう守るか」という課題に対し、どのような対策が検討されているのか
  • 対して、日本では筋肉量低下への課題意識がどの程度高まり、どのような対策が検討されているのか
  • 米国では「不安の解消」から「手段の選択」へどのように変化しているのか
  • 日米の違いから、日本のクリニックにどのような新しい支援やサービスの可能性があるのか

米国では「痩せた後、筋肉をどう守るか」が主な課題に

米国におけるGLP-1関連検索量の4年間の推移を示したグラフ

図2|米国のGLP-1関連検索量の推移(4年)(*GLP-1以外にも関係性を持つ言葉を含む)

米国では、マンジャロ、オゼンピック、リベルサスなどの製品名と、GLP-1、チルゼパチド、セマグルチドなどの成分名に関連する検索量は、4年累計約8億5,000万回、直近1年でも約2億6,000万回に上ります。

「どれだけ痩せるか」だけでなく、「痩せた後どうなるか」への関心も拡大

米国で検索されているGLP-1使用後の効果・変化を分類し、見た目・体組成への関心が大きいことを示したグラフ

図3|米国の「GLP-1使用後の効果・変化」に関する米国消費者の関心事(検索量基準、1年累計)

上記の図によると、米国消費者の「見た目・体組成」に対する関心が2番目に大きい割合を占めています。

その中には、オゼンピックによる筋肉減少(ozempic muscle loss)、オゼンピックは筋肉減少を引き起こすのか(does ozempic cause muscle loss)、GLP-1による筋肉減少(glp-1 muscle loss)など、GLP-1の使用によって「筋肉が落ちるのではないか」という不安も含まれています。

そこで、GLP-1に関する検索のうち、「筋肉量低下・筋損失」への不安が表れているものを見ると、検索量は2022年8月時点と比べて約95倍に増えています。さらに、2023年7月以降は、オゼンピック使用中の筋肉減少をどう防ぐか(how to prevent muscle loss on ozempic)のように、解決策を調べるキーワードも加わっています。

「不安の確認」だけでなく、「具体策」への関心も拡大

では、筋肉を守るために、どのような手段が検索されているのでしょうか。

米国で検索されている筋肉を守るための手段を、食事・栄養、運動、筋肉維持、サプリメント別に示したグラフ

図4|米国の筋肉を守るための手段

最も大きいのは、タンパク質・プロテインの摂取や食事内容の見直しなどを含む「食事・栄養」への関心です。次いで、筋トレやワークアウトなどの「運動」、筋肉を維持・取り戻す方法、「サプリメント」と続きます。

なかでもサプリメント関連では、ほとんどをクレアチンが占めており、筋肉を守るための具体的な選択肢として関心を集めています。

米国では「不安の解消」から「手段の選択」へ進んでいる

では、クレアチンをめぐる検索行動は、直近3か月間でどのように変化しているのでしょうか。ListeningMindのパスファインダーを使い、「zepbound and creatine」の前後の検索経路を3か月前と現在で比較しました。

「zepbound and creatine」の前後に検索されたキーワードを、3か月前と現在で比較したパスファインダー図

図5|パスファインダーで見た「zepbound and creatine」の関連検索(左:3か月前/右:現在)

「zepbound and creatine」周辺の検索キーワードの変化を、3か月前と現在で比較した図

図6|「zepbound and creatine」の関連検索キーワードの変化(3か月前 → 現在)

変化がわかりやすい部分を見ると、3か月前には can を含む「一緒に摂ってよいか」という併用可否に関するキーワードが中心でした。一方、現在は best・should を含むキーワードが加わっています。

「摂ってよいか」という確認に加えて、「摂るべきか」「どれを選ぶか」という選択に関する関心が表れています。

さらに現在の検索経路には、ゼップバウンドと運動(zepbound and exercise)、ゼップバウンドのトレーニング計画(zepbound workout plan)など、運動に関するキーワードも加わっています。現在の検索経路には、併用可否の確認だけでなく、製品選択や運動など、より具体的な行動につながる検索も現れています。

日本でも「筋肉を守る」ことへの関心は急速に高まっている

関心の中心は「どれだけ痩せるか」

日本の消費者の「見た目・体組成」に対する関心を確認すると、米国との違いは関心の偏り方にあります。

日本で検索されているGLP-1使用後の効果・変化を分類し、減量効果・体重減少への関心が大きいことを示したグラフ

図7|日本の「GLP-1使用後の効果・変化」に関する日本消費者の関心事(検索量基準、1年累計)

「減量効果・体重減少」への関心が8割近くを占める一方、「見た目・体組成」は1割に届きません。

「筋肉量低下・筋損失」に関する検索は、GLP-1関連検索全体を上回るペースで増加

「マンジャロ 筋肉落ちる」「マンジャロ 筋肉量」「glp 1 筋肉」などのキーワードから、日本でも筋肉量低下・筋損失への関心が確認できます。

日本の「筋肉量低下・筋損失」関連検索とGLP-1関連検索全体の伸びを比較したグラフ

図8|日本の「筋肉量低下・筋損失」に対する関心度の変化(対、GLP-1との比較)

直近1年の累計で見ると、3年前の約11倍に増加。同じ期間のGLP-1関連検索量全体の伸びが約5.6倍だったことと比べると「筋肉量低下・筋損失」関連検索のほうが、より速いペースで増加しています。

対策は「運動」と「食事・栄養」が中心

日本でも、「筋肉が落ちるのか」という不安だけでなく、「どう守るか」を探す検索が確認できます。検索量では、具体的な対策を探す検索が、不安を確認する検索を上回っています。

日本で検索されている筋肉を守るための手段を、運動と食事・栄養に分けて示したグラフ

図9|日本の筋肉を守るための手段

具体的には、「運動」への関心が最も大きく、次いでタンパク質・プロテインの摂取などを含む「食事・栄養」が続きます。一方、「サプリメント」に該当する検索はなく、クレアチンを含むキーワードも確認されていません。

日米の違いは、「不安の行き先」にある

日米に共通しているのは、「筋肉が落ちるのか」という不安だけでなく、「どう守るか」という具体的な対策への関心があることです。一方で、その対策の中身には違いがあります。

日本では、運動と、タンパク質・プロテインなどの食事・栄養に関する検索が中心でした。一方、米国ではそれらに加えて、クレアチンという具体的な成分名も現れています。米国ではクレアチン関連の検索量が44,410回ある一方、日本ではGLP-1とクレアチンを組み合わせた検索は確認されていません。さらに、日本のクレアチン関連キーワード2,144件を確認した結果、マンジャロなどのGLP-1関連薬剤やGLP-1そのものとの組み合わせはありませんでした。

日本では「筋肉を守りたい」という関心はすでにあるものの、その先の具体的な商品やサービスの選択肢までは、まだ表れていません。

ここに、新たな支援やサービスを検討する余地があります。

日本のクリニックは、筋肉維持をどう支援できるのか

日本では、「筋肉が落ちるのではないか」という不安に加え、「どう守るか」という具体的な対策への関心も確認できます。一方で、その関心はまだ、具体的な商品やサービスの選択肢まで十分につながっていません。ここに、GLP-1の処方だけで終わらせない提案の余地があります。

「マンジャロ 筋トレ」「マンジャロ プロテイン」といったキーワードからは、投与に加えて、運動や栄養面でも何か対策をしたいというニーズがうかがえます。処方に、運動指導、タンパク質・栄養サポート、体組成の測定などを組み合わせることは、こうしたニーズに応える具体的な支援策になり得ます。

実際、日本では「ゼップバウンド 栄養指導」「ウゴービ 栄養指導」といったキーワードも検索されており、栄養指導への関心も確認できます。

米国で見えたのは「クレアチン」ではなく、その手前の変化

日本では、GLP-1とクレアチンを組み合わせた検索需要は確認できていません。米国の事例から読み取れるのは、「クレアチンが売れる」ということではなく、筋肉を守るための検索が、具体的な商品やサービスの選択にまで広がっていることです。

日本でその受け皿になるのが、運動指導なのか、プロテインなのか、体組成測定なのか。現在の日本のデータでは、運動、栄養管理、タンパク質・プロテインへの関心が確認されています。まずは、こうした領域でどのような商品やサービスが求められているのかを検証していくのが自然です。

今後、日本でも具体的な商品やサービスの選択に関するニーズが現れるかを継続的に検証していく必要があります。海外で先に起きている検索行動の変化と比較しながら、日本側の関心を継続的に追うことで、新しい支援テーマをより早く捉えることができます。

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