ListeningMind & ChatGPTで新領域でのカテゴリーエントリーポイント(CEP)を探索する

~機能起点×API×LLMで「意外な入口」を発見する~

CEP(カテゴリーエントリーポイント)とは、消費者が特定のカテゴリーに興味を持ち、商品やサービスの情報探索や購買を始める最初のきっかけや入口となるポイントです。従来のマーケティングでは、自社商品やサービスのメインターゲットや“王道”の利用シーンに注目しがちですが、商品の全く新しい活用方法を発見し、いわゆるブルーオーシャンとなるCEPを見出すことは、競争の激しい市場において非常に有益です。しかし、これまで“既存とは異なる商品カテゴリ”での可能性を調べることは、膨大な労力と手間がかかる難題でした。今回紹介するCEP探索手法は、ビッグデータとAI(ChatGPT、ListeningMind API)を組み合わせることで、自社商品の機能から利用シーンや連想されるワードを網羅的に抽出・分析でき、全く異なるカテゴリでの新たなCEP候補を発見できます。これにより、従来の枠を超えた新市場の開拓や革新的な提案が、効率的かつ実践的に実現可能となります。

今回の調査で使用したプロンプト
・防水スプレーの持つ代表的な機能について、消費者が検索に用いそうな表現で列挙してください。アイテム名は除き、目的ワードのみを列挙してください。
・これらから、スプレーやグッズなどアイテム名を除き、汚れ防止、長持ち、など機能キーワードを10件を選び、これらについて検索されている関連キーワードをAPIの上限まで取得し、実行して進めよ
・こうした取得キーワードの中に含まれる、靴以外のカテゴリを示す名詞を取得せよ
・以下の各語彙について、それぞれ防水と防汚それぞれをかけ合わせたキーワードについて検索ボリュームを取得せよ:窓、壁、寝室、リビング、キッチン、トイレ、クローゼット、図書館、博物館、ソファー、カーペット、カーテン、襟、帽子、花

リスニングマインドのAPI通信を開始する段階で、以下のような確認画面が表示されます。「確認」をクリックします。

今回のCEP探索から得られること

  • 意外な入り口(CEP)の発見:
    靴や衣類の「防水・汚れ防止」だけでなく、「花」「窓」「風呂」「壁」「テント」「家電」「家具」「カバン」「ペット用品」など、本来の用途を超えた多様なカテゴリでニーズが見つかる。
  • 新規用途提案や販路拡大:
    消費者が“どんな生活シーンやカテゴリ”で課題・悩みを感じているかを把握し、「新しい使い方」や「異分野とのコラボ」に活かせる。
  • 既存想定外のターゲットセグメント発掘:
    ファッションやアウトドアだけでなく、「インテリア」「キッチン」「自動車」「文化財保護」「施設管理」など新しい市場開拓の種になる。

従来の新領域探索で用いられる方法

  • ユーザーインタビュー/アンケート調査:
    利用実態や困りごと、きっかけなどを定性的・定量的にヒアリング。ただし主観や想定内に偏りやすい。
  • SNS・レビュー・Q&A分析:
    リアルな“声”や“悩み”から用途の入口を拾う。生活文脈のヒントは得やすいが、膨大な情報の中から発掘する手間がかかる。
  • 競合サイト・FAQ調査:
    他社や他カテゴリの入口ワードやコンテンツを収集・参考にする方法。しかし共起キーワードは基本的に既存知識の再生産。

今回のCEP探索の流れ

今回は、靴の防水スプレーを例にとりあげて試してみます。

❶商品のもつ機能を、ChatGPTを使って利用者目線で列挙する
まずは、商品の持つ機能を列挙します。もちろん、自社商品の機能として自分で書き出してもよいのですが、ChatGPT(LLM)は、市場の知識体系を学習した認識の集まりですので、ChatGPTに作業させてみるのも面白いでしょう。調査担当者のパーセプションを超えた方法や記述形式が発見できるかもしれません。もちろん、ChatGPT側の作業ですので、ハルシネーションが発生する可能性があります。参考にしつつ、チェックしましょう。

汚れ防止、長持ち、カビ防止、汚れ落とし…など

❷機能とに、ListeningMindのAPIから利用シーンを取得する
そうした機能がどのようなシーンで求められているのか、実際の消費者検索情報をもとに取得します。今回は❶の作業で得た機能の列挙から10件について、それぞれAPIの上限200件づつ取得しました。ここでえられたデータは、ハルシネーションの無い、実際のデータです。もちろん、利用シーン以外の、具体的な商品名など、今回の調査にそぐわない情報も大量に含まれていますが問題ありません。これらを、次のステップで精査します。

花 長持ち、窓 カビ防止、風呂 カビ予防 おすすめ、賃貸壁 汚れ落とし ・・・など

❸得られた情報から、利用シーンの主語となるような名詞を取得する
こうした処理はChatGPT(LLM)が非常に得意です。こうして得られた名詞は、これまでとは異なった領域での利用シーンを表すものとなります。

花 、窓 、風呂 、壁 ・・・など

❹さらに探索する
得られた語彙ごとに、実際の検索数から簡易な市場規模の把握を試みました。また今回は花という特定のキーワードについて、さらなる探索を実施しました。このように調査で感じた些細な興味・関心のままに、対話的に実データを探索できる、というのはListeningMind & ChatGPTの醍醐味だといえるでしょう。

「花を長持ちさせるスプレー」「着色スプレー」「保存用スプレー」「ドライフラワー用コーティング」など、花の美観維持・演出用途での“スプレー”市場は存在。「霧吹き 花」などの湿度・水分管理用途もあり、「花 防水」「花 防汚」は現状で一般化していないが、“花の表面保護・コーティング・美観維持”というニーズや文脈と接点がある。

「花 スプレー」領域は、色付け・保存・アレンジ等の市場ニーズが強い。「防水」「防汚」機能を“花の長持ち・美観維持・新しいアレンジ”という文脈で訴求すれば、既存の花スプレー市場やギフト・アレンジ分野で新たなCEP(用途入口)を創出できる可能性があります。

実際のCEP探索

では早速始めてみましょう。まずは以下のプロンプトを入力してみます。

プロンプト
防水スプレーの持つ代表的な機能について、消費者が検索に用いそうな表現で列挙してください。アイテム名は除き、目的ワードのみを列挙してください。

この結果、得られた回答が以下です。

防水スプレーおすすめ、撥水スプレー効果、濡れない方法、雨対策、汚れ防止、シミ防止、汚れにくくする方法、防水加工、雨に弱い対策、汗じみ防止、カビ防止、防臭スプレー、清潔にする、長持ちさせるコツ、色落ちしない、防水持続期間、無臭、防水コーティング、蒸れない方法、防臭・カビ防止、雨対策、メンテナンス、手入れ簡単、汚れ落としスプレー、カビ対策グッズ

今回は広くアイデアを得たいので、この程度であれば特に除外すべきデータは無いと判断しました。そのうえで、改めてアイテム名を除き、機能キーワードとして指定してListeningMindのAPIから情報を取得してみます。プロンプトは下記の通りです。

これらから、スプレーやグッズなどアイテム名を除き、汚れ防止、長持ち、など機能キーワードを10件を選び、これらについて検索されている関連キーワードをAPIの上限まで取得し、実行して進めよ

得られた結果は以下のようなものでした。

  • 汚れ防止:汚れ防止フィルム、汚れ防止テープ(服・襟・帽子)、汚れ防止スプレー、汚れ防止剤、作業着、100均、家具、DIYリフォーム、衣類、カバー…など
  • シミ防止:(十分な関連ワード取得できず)
  • 長持ち:長持ち家具、嫁入り道具、耐久性、長寿命、長持ちする花、長持ち英語、服が長持ち、物持ちがいい、使い続ける、再利用、リメイク…など
  • 色落ち防止:(十分な関連ワード取得できず)
  • カビ防止:カビ防止窓、窓カビ防止、カビ防止テープ、カビ防止置くだけ、風呂カビ防止、部屋防カビ、衣類防カビ、文化財カビ対策、建物、換気、エアコン、クローゼット、キッチン、寝室…など
  • その他....

関連キーワードが取得できなかったものもありますが、今回は探索が目的ですので問題ありません。APIの上限は200件ですので、それでも十分に膨大な数です。これらの中に含まれた名詞は、これまでとは異なった領域での利用シーンを表すものとなります。これらを人間が判別することは大変ですが、こうした処理はChatGPT(LLM)が非常に得意です。

プロンプト
こうした取得キーワードの中に含まれる、靴以外のカテゴリを示す名詞を取得せよ

得られた結果は以下のようなものでした。

  • 家・建物:家、建物、窓、窓枠、窓サッシ、壁、壁紙、部屋、寝室、リビング、キッチン、トイレ、クローゼット、施設、学校、図書館、博物館
  • 家具・インテリア:家具、ソファー、カーペット、カバー、カーテン、テーブルクロス
  • ファッション・布製品:服、襟、帽子、衣類、バッグ、鞄
  • 生活雑貨・日用品:フィルム、テープ、スポンジ、クリーナー、100均商品、バッテリー
  • アウトドア・レジャー:テント、傘、自転車、車
  • 家電・デジタル機器:スマホケース、家電
  • 植物・ギフト:花、切り花、花瓶
  • 文化・特別分野:文化財、博物館

例えばメーカーの担当者であれば、ここまでで十分にヒントになるかもしれません。しかし今回はもう少し処理を進めてみましょう。私自身がいくつか選んでみました。今回の調査の目的から、家電・デジタル機器などは、対象になりにくいでしょう。生活雑貨・日用品なども、該当しないように思います。

 窓、壁、寝室、リビング、キッチン、トイレ、クローゼット、図書館、博物館、ソファー、カーペット、カーテン、襟、帽子、花

この候補について、市場規模がどの程度あるのかを調べてみましょう。例えば、防水、防汚というキーワードとのかけ合わせで、検索数を調べてみる、ということもListeningMind & ChatGPTであれば簡単に可能です。

プロンプト
以下の各語彙について、それぞれ防水と防汚それぞれをかけ合わせたキーワードについて検索ボリュームを取得せよ:窓、壁、寝室、リビング、キッチン、トイレ、クローゼット、図書館、博物館、ソファー、カーペット、カーテン、襟、帽子、花

得られた結果は以下のようなものでした。

キーワード平均月間検索数競争度備考
キッチン 防水50
トイレ 防水83
トイレ 防汚63
ソファー 防水676
カーペット 防水1700
カーテン 防水920
カーテン 防汚13

例えば、キッチンの水しぶきや汚れが跳ねて汚れることを、あらかじめ予防するために防水スプレーを吹き付ける、というような利用方法には可能性を感じます。個人的には、花という結果について意外性があり非常に興味があったので、調べてみました。

花 防水:API(info_by_cluster_post)による関連ワード・ネットワーク分析を実施しましたが、関連語・ネットワークは取得できませんでした

花 防汚:API(info_by_cluster_post)による関連ワード・ネットワーク分析を実施しましたが、関連語・ネットワークは取得できませんでした

花 スプレー:「花 スプレー」でAPIによる関連語・ネットワーク探索を行った結果、花業界で実際に検索・話題になっているキーワード群が豊富に得られました。

▼主な関連ワード・ネットワーク(抜粋)

  • 花スプレーマム(=スプレー咲きの菊、商品ジャンル・品種名)
  • スプレーマムの育て方、スプレーマム プレゼント、ドライフラワー、花言葉、品種
  • 花カラースプレー、ファンシーカラースプレー、オアシスカラースプレー(切り花やドライフラワー、造花着色用のスプレー商品)
  • 造花 アレンジ スプレー、花用スプレー
  • スプレー咲き、スプレー咲き菊、スプレー咲きカーネーション、スプレー咲きひまわり
  • 花 着色 スプレー、生花 着色 スプレー
  • ドライフラワー カラースプレー、花束 スプレー
  • 霧吹き 花
  • スプレー花言葉、スプレーバラ、スプレーストック、スプレーカーネーション、生花用カラースプレー

▼得られた示唆・可能性

  • 「防水」「防汚」の直接的な検索・語彙はほぼ見当たらず、主に「花を色付け・コーティング・保存・アレンジ」する用途のスプレーが主流。
  • 「花を長持ちさせるスプレー」「着色スプレー」「保存用スプレー」「ドライフラワー用コーティング」など、花の美観維持・演出用途での“スプレー”市場は存在
  • 「霧吹き 花」などの湿度・水分管理用途もあり、「花 防水」「花 防汚」は現状で一般化していないが、“花の表面保護・コーティング・美観維持”というニーズや文脈と接点がある。

まとめ

  • 「花 スプレー」領域は、色付け・保存・アレンジ等の市場ニーズが強い
  • 「防水」「防汚」機能を“花の長持ち・美観維持・新しいアレンジ”という文脈で訴求すれば、
     既存の花スプレー市場やギフト・アレンジ分野で新たなCEP(用途入口)を創出できる可能性があります。

なかなか可能性を感じさせる結果ではないでしょうか?このように調査で感じた些細な興味・関心のままに、対話的に実データを探索できる、というのはListeningMind & ChatGPTの醍醐味だといえるでしょう。

まとめ

ListeningMind × ChatGPT(LLM)の組み合わせによるCEP探索は、
「自社商品の“機能”から、まだ誰も気づいていない“新しい用途の入口”を、ビッグデータ&AIで発掘できる現代的な方法論です。
従来のヒアリングや主観的調査では見逃しがちな、「壁」「花」「テント」「文化財」など異分野の“入口”が浮き彫りになることで、
新規市場開拓・異業種コラボ・販路拡大などの事業戦略に直結するヒントが得られるでしょう。是非、興味も赴くまま、深堀してみてください。

プロンプト
防水スプレーの持つ代表的な機能について、消費者が検索に用いそうな表現で列挙してください。アイテム名は除き、目的ワードのみを列挙してください。

注記 

本記事は、検索データに基づく分析事例であり、特定のブランドや製品のマーケティング戦略を代弁または評価することを目的としたものではありません。 

使用されているキーワードは、実際の検索ボリューム、サジェスト、関連検索語などの情報をもとに収集されたものであり、消費者の関心や情報探索パターンを理解するための分析例として提示しています。 

記載されているブランド名および製品は、分析構造を説明するための事例として引用しており、各企業の公式な見解や実際の施策とは関係ありません。

本文の内容は筆者個人の見解に基づくものであり、誹謗中傷、歪曲、営利目的は一切含まれておりません。