YouTube「急上昇動画」サービス終了が示すもの:マイクロトレンドとユーザーインテントの時代へ

「急上昇動画」サービスの終了

YouTubeは「急上昇動画」サービスを終了しました。
コンテンツもブランドもあふれるこの時代、なぜYouTubeがこの機能を廃止したのかは考えてみる価値があるテーマだと思います。

メガトレンドの重要性は低下し、マイクロトレンドの重要性が高まっています。
そして今、私たちに必要なのは ユーザーインテント(User Intent) だと考え、この記事をまとめました。

「急上昇動画」とは?

考える人:「急上昇動画」とは?

2025年7月21日、YouTubeの「急上昇動画」サービスが廃止されました。単なるサービスの一つがなくなったという話ではなく、市場と消費者の変化を反映した出来事として注目すべきです。

「急上昇動画」は、一定期間にアップロードされた数多くの動画の中から一部を選び出して表示する機能でした。その基準は以下の通りです。

  • 多様な視聴者の関心を引く動画
  • 扇情的・釣り的でない動画
  • 世界で起きている出来事を扱った動画
  • クリエイターの多様性を示す動画
  • 興味や新鮮さを感じさせる動画

再生回数、増加速度(いわゆる“温度”)、トラフィックの流入元、アップロードのタイミングなどを総合的に考慮し、「今まさに注目されている動画」を紹介する仕組みでした。

事業者にとってはトレンドを発掘でき、利用者にとっては手軽に話題を追える便利な機能でした。

「急上昇動画」サービス終了の背景

Googleの公式コメントによれば、社会的な問題ではなく 事業上の判断 に近いものでした。

「今日のトレンドは、多様なコミュニティから生まれる小さな流れで構成されています。
YouTube全体でユーザーはすでに様々な場面でトレンドに触れており、過去5年間で『急上昇動画』ページの訪問は大幅に減少しました。」

つまり、トラフィックが減少し、他の機能で十分代替できているため、維持する意義が薄れたということです。

「急上昇動画」サービス終了の3つの理由

  1. コンテンツの爆発的増加
    • 2025年現在、YouTubeには約51億本の動画が存在し、1日あたり約260万本がアップロードされています。
    • Shortsは全体の26%を占め、成長を牽引しています。
    • 膨大な量の中で単純な人気指標だけでは限界が生じました。
  2. 類似コンテンツの氾濫
    • 人気テーマが出ると、国籍や言語だけ変えたコピー動画が世界中で量産されます。
    • アルゴリズムがそれらを推薦すると、ユーザーの満足度は下がります。
  3. ユーザーの能動的・断片的消費
    • かつては「みんなが見る大ヒット動画」がありましたが、今は違います。
    • Shortsを含め、ユーザーは短く多様な動画を消費し、さらにGPTのようなツールで自分の欲しい情報を直接探します。
    • その結果、「多数が好む動画」自体の魅力は薄れています。

変化が示すもの – メガトレンドからマイクロトレンドへ

変化が示すもの – メガトレンドからマイクロトレンドへ

この変化は、マイクロトレンドの台頭とインテント中心の消費を意味します。
人々は依然としてトレンドに関心を持っていますが、もはや全体的な流れではなく、自分のコミュニティや嗜好、特定領域の小さな流れにフォーカスしています。

Googleも「パーソナライゼーション」や「Smaller Trend」という概念を強調しています。
つまり、ブランドやサービスの企画者に求められるのは、ユーザーの具体的なインテント(意図)を理解することです。

BEAMSの事例 – インテントに基づくブランディング

この流れをよく示しているのが、日本のブランド BEAMS です。

BEAMSは、販売スタッフを単なる店員ではなく スター的なインフルエンサー として育成してきました。スタッフ自身がコーディネートを発信し、顧客は自分の嗜好に合うスタッフをフォローし、自然と購買に繋がります。

ビームス スタッフコーデ画像
google「ビームス スタッフコーデ」画像検索結果画面

驚くべきことに、EC売上の約60%がこうしたスタッフ発信コンテンツ経由で発生しているのです。

つまり「誰が薦めているのか」というユーザーの意図を満たすことで、マイクロインテントを捉えたマーケティングを実現したわけです。

まとめ – インテントを掴むことがカギ

YouTubeの「急上昇動画」サービス終了は、単なる機能廃止ではありません。
これは マイクロトレンドとユーザーインテントの時代が本格化したことを示しています。

  • もはや全員が同じメガトレンドを追う時代ではありません。
  • 顧客は自分の嗜好や文脈に合った体験を求めています。
  • BEAMSのように、ユーザーインテントに基づいたブランディングとマーケティングを展開した企業が生き残ります。

私たち ListeningMind も同じ哲学を持っています。
人々がなぜそのキーワードを検索するのか、その背後にある意図を分析するツールを提供しています。
ぜひ ListeningMindの体験を通して、顧客の細やかなインテントを捉える力を実感してみてください。