エンティティSEOとは?生成AI時代の検索に求められる新しい戦略

自社のブランドが、ChatGPTやGoogleのAIにどう認識されているかご存知ですか?
従来の「キーワード中心」のSEOにとどまっていると、AI時代の検索結果で競合に後れを取るリスクが高まっています。本記事では、エンティティSEOとGEO(生成エンジン最適化)という新しい検索戦略の基本から、実践的な活用方法までをわかりやすく解説します。


ここ数年で生成AIの普及が加速する中、多くのマーケティング担当者やブランド責任者は、「情報の作られ方」や「ユーザーへの届き方」そのものが、根本から変わりつつあることを実感しているのではないでしょうか。

ほんの10年ほど前、2015年頃までは、SEOといえば「バックリンクの獲得」と「キーワードをページ内に自然に、かつ大量に散りばめること」が王道の戦略でした。
つまり、人々が検索しそうな言葉をできる限り網羅的に、サイト内に配置することが重視されていたのです。

当時はこのやり方でも一定の成果が得られましたが、やがて多くの企業が同じ手法に頼るようになり、キーワード乱用によるコンテンツの質の低下という弊害が顕在化していきました。

SEOの進化:キーワードからトピック、そしてエンティティへ

Googleアルゴリズムの進化と「文脈理解」

こうした状況に対応するため、Googleは検索アルゴリズムを継続的にアップデートしてきました。
Hummingbird(ハミングバード)、RankBrain(ランクブレイン)、BERT(双方向トランスフォーマー表現)といった自然言語処理(NLP)技術を取り入れたAIベースの仕組みにより、Googleはもはや「入力された単語そのもの」ではなく、「その単語が使われた文脈」や「ユーザーの検索意図」まで読み取れるようになっています。

トピック中心SEOへのシフト

こうしたアルゴリズムの進化により、かつてはSEO専門会社が「SEO」というキーワードをページ内に大量に詰め込んだだけのコンテンツでも検索上位を取れていた時代がありました。しかし今では、「SEOトレンド」「エンティティSEOとの違い」「SEOの実践事例」といった、関連性の高いサブテーマや文脈まで含めて丁寧に解説したコンテンツこそが、検索エンジンから高く評価されるようになっています。

新たなパラダイムの到来:エンティティSEOとGEO

こうした変化からも分かるように、SEOはキーワード重視からトピック重視へと進化を遂げてきましたが、今、さらにもう一段階大きな転換期を迎えようとしています。
それが、 「エンティティSEO(Entity SEO)」と「GEO(生成エンジン最適化:Generative Engine Optimization)」という、次世代の検索戦略を支える新たなパラダイムの登場です。

エンティティSEOの基本概念

エンティティSEOとは?

エンティティSEOとは、検索エンジンに対して「自社のコンテンツがどの対象(=エンティティ)について書かれており、それらがどのように関係しているのか」を明確かつ構造的に伝えるための手法です。

例)「iPhone 16は、Appleが2024年9月に発売したスマートフォンであり、カリフォルニア州クパチーノにあるApple Park内のスティーブ・ジョブズ・シアターで発表された製品です」

このように、iPhone 16・Apple・Apple Park・スティーブ・ジョブズ・シアターといった複数のエンティティとその関係性を、自然な文章で具体的に記述することで、検索エンジンは「このページは誰について、何について語っているのか」をより正確に理解できるようになります。

さらに、スキーママークアップ(構造化データ)をあわせて実装することで、検索エンジンがこれらの情報を機械的にもほぼ完璧な精度で解釈できるようになり、エンティティSEOの効果を最大限に引き出すことが可能です。

「エンティティ」とは?

「エンティティ」とは、単なる名詞ではなく、検索エンジンが“実体”として認識できる対象のことです。具体的には、人物・企業・商品・サービス・場所・ブランド・技術・イベント・概念など、明確に定義可能なものを指します。

例)
1.「オリオン」という言葉は、文脈によって「オリオンビール(沖縄のビールメーカー)」を意味することもあれば、「オリオン座(冬の代表的な星座)」を指すこともあります。
2.「ライオン」も同様に、日用品メーカーの「LION株式会社」のことか、動物としてのライオンかは文脈次第です。
3.「Apple」という単語も、英語では「果物のリンゴ」か「テクノロジー企業(Apple Inc.)」かで意味が大きく異なります。

このように、ひとつの単語が複数の意味や解釈を持ちうるため、検索エンジンがユーザーの真意を正確に汲み取り、適切な情報を返すためには、「その言葉が実際にどのエンティティを指しているのか」を認識することが不可欠です。

Googleなどの検索エンジンは、Wikipedia、Wikidata、Google Knowledge Graphなどの信頼性の高い外部データソースを活用し、各エンティティに固有のID(識別子)を付与しています。これにより、検索エンジンは単語をただの文字列としてではなく、明確な「実体」として理解・処理できるようになります。

たとえば「エッフェル塔」という言葉は、日本語では「エッフェル塔」、英語では「Eiffel Tower」、韓国語では「에펠탑」と言語ごとに異なりますが、Google Knowledge Graph上ではすべて同じひとつの“Eiffel Tower”というエンティティとして扱われます。

エンティティSEOがもたらすビジネスへの効果

エンティティを軸としたSEO戦略を的確に実践できれば、検索エンジンは次のような情報を正確に把握できるようになります。
このコンテンツが「何について語っているのか」
どの「ブランド・製品・人物・場所・技術」に関する情報なのか
そして、それが「どの外部の信頼データベースと関連づけられているのか」

検索エンジンがコンテンツの対象とその関係性を正しく理解できれば、同音異義語の誤認や表現のズレといったリスクを回避し、情報の精度と一貫性を高めることができます。
結果として、ブランド・製品・サービスに関する正確で一貫性のある情報を、ユーザーに対して確実に届けることができるようになります。

生成エンジン最適化(GEO)とエンティティの融合

2023年を境に、オンラインにおける「情報の生成」と「情報の消費」のあり方が、再び大きく変わり始めました。

そのきっかけとなったのが、生成AIの本格的な台頭です。
ChatGPTをはじめ、GoogleのGemini、Bing Copilotといった
大規模言語モデル(LLM)が私たちの日常に浸透し、従来の検索体験を根本から変えつつあります。

情報の探し方・受け取り方が激変している

かつては、ユーザー自身が検索結果ページ(SERP)のリンクを一つひとつクリックして、必要な情報を手作業で拾い集めていました。

しかし現在では、AIが代わりに情報を収集・整理し、ユーザーが自然な言葉で質問するだけで、次のような最適化された情報パッケージを即座に提示してくれます。

  • 要点をまとめた1文の簡潔な回答
  • 関連する最新ニュースの要約
  • 競合製品とのブランド比較
  • 調査済みの専門家レビューのポイント

このように、ユーザーの意図に応じて、最適な形で構成された情報がAIによって直接提供されるという情報取得スタイルへとシフトしています。

AIにおける「エンティティ中心」の情報処理

生成AIによる情報の要約・提供プロセスにおいても、「エンティティを中心に捉える」という考え方が非常に重要な役割を果たしています。生成AIは、Web上や信頼性の高いデータベースから、エンティティ(対象となる人・物・ブランドなど)と、それらの関係性を抽出し、 独自の知識グラフ(Knowledge Graph)を構築しています。

💡たとえば、こんな情報が構造化されています
「Apple Inc.」という企業が、
「iPhone 16 Pro」という製品を、
「2024年9月10日のApple Special Event」で、
「Tim Cook」CEOが、
「iOS 18」とともに、
「カリフォルニア州クパチーノのApple Park」で発表した。

このように、企業・製品・イベント・人物・OS・場所といった複数のエンティティとその相互関係が、AIの内部データとして体系的に記録されているため、AIは複雑な質問にも速く、そして正確に回答することができるのです。

💡AIが重視する“信頼ソース”とは?
「iPhone 16の主な機能は?」

「Apple Special Event 2024で発表された主な機能は?」
「ソニーの2024年新製品発表会で公開された機種は何ですか?」
「Google Pixel 8のスペック一覧を教えて」

こうした質問に対して、ChatGPTやBing Copilot、GoogleのAI Overviewは、次のような信頼性の高い情報ソースをもとに回答を構成します。

ソニー/Appleなどの公式Webサイト
Wikipediaの製品ページ
IT専門メディア(例:Impress Watch、Engadget Japan、CNET Japanなど)
企業の公式YouTubeチャンネル
・Schema.orgによる構造化データが施されたページ

まとめ:AI時代の検索戦略に、エンティティ視点は欠かせない

検索エンジンは今、単なる「キーワード」ではなく、文脈・意図・そしてエンティティ(実体)そのものを理解しようとしています。
この変化は、生成AIの台頭によってさらに加速し、従来のSEOだけでは情報が届かない時代が到来しました。

その中で求められるのが、ブランド・製品・人物・技術などを「正しく識別・構造化」してAIに伝える力=エンティティSEOです。
情報の信頼性・精度・ブランドの存在感すべてを左右するこの新しい戦略を、いま取り入れるかどうかが、今後のマーケティング成果を大きく分けるポイントとなるでしょう。

後編では、「エンティティSEOをどう実装すればよいのか?」という実務ガイドをご紹介します。
ブランド担当者が押さえておくべき、エンティティの洗い出し方、構造化データの記述方法、外部DBとの連携、そして社内コンテンツへの具体的な適用ステップまでを、実践的に解説します。

後編はこちら👉エンティティSEO&GEO実践ガイド:AI検索・ChatGPTに選ばれるブランド戦略とは?