顧客が認知から購買に至るまでの過程を正確に把握できていますか。多くの企業は顧客の行動を点で捉え、点で施策を打つため、全体最適なマーケティングができていません。
カスタマージャーニーマップとは、顧客が商品やサービスを認知してから購買・利用に至るまでの一連の行動・思考・感情のプロセスを、時系列で図表化したツールです。
この記事では、以下のポイントを解説します。
- カスタマージャーニーマップの基本的な意味と構成
- カスタマージャーニーマップと従来のカスタマージャーニーの違い
- カスタマージャーニーマップを作成する5つのステップ
- 検索行動データを活用した新しいマップ設計方法
- 実際のマーケティング施策への適用事例
カスタマージャーニーマップとは何か
カスタマージャーニーマップは、顧客が解決したい課題から購買・利用に至るまでの各段階における行動・感情・タッチポイントを図で可視化したものです。
カスタマージャーニーマップは単なる「顧客の流れ図」ではありません。各段階で顧客が何を考え、どのような感情を抱き、どのチャネルに接触しているかを詳細に記録することで、マーケティング施策の最適化を実現するツールです。
従来のマーケティングでは「認知→興味→比較→購買」という直線的なファネルモデルが主流でした。しかし、デジタル化によって顧客の購買行動は複雑化しています。一人の顧客がGoogle検索、SNS、比較サイト、動画、実店舗を行き来しながら情報を集め、何度も意思決定地点を往復します。
こうした複雑な現代の購買プロセスを正確に理解し、最適な施策を打つために、カスタマージャーニーマップが必須になったのです。
カスタマージャーニーマップの基本構成要素
カスタマージャーニーマップに含まれる主な要素は次のとおりです。
| 要素 | 説明 |
|---|---|
| ペルソナ | 対象となる典型的な顧客像 |
| ジャーニーの段階 | 認知→興味→検討→購買→継続など |
| 顧客の行動 | 各段階で実際にとる行動 |
| 顧客の思考 | 各段階で考えていることや疑問 |
| 顧客の感情 | 満足度や不安、信頼度の変化 |
| タッチポイント | 顧客が接触するチャネルやメディア |
| ペインポイント | 顧客が直面する課題や障壁 |
| 改善施策 | 企業がとるべきアクション |
これらの要素を時系列で横軸に展開し、各段階での行動・感情を縦軸で表現することで、顧客体験全体が一覧で把握できるようになります。
カスタマージャーニーマップが重要な理由
カスタマージャーニーマップが重要な理由は、顧客理解の精度を高め、全社的な施策の一貫性を実現するためです。

理由1:顧客視点で施策が設計できる
企業視点だけでマーケティング施策を決めると、「企業が売りたい情報」を「企業のタイミング」で発信してしまいます。マップを作成することで「顧客が欲しい情報」を「顧客が必要なタイミング」で届けることができます。
認知段階の顧客は商品名を知らないため、解決できる課題で検索します。興味段階の顧客は複数の選択肢を比較します。購買段階では導入後のサポート情報が重要になります。各段階の顧客ニーズを理解することで、施策の効果が大きく高まります。
理由2:部門横断の共通認識が生まれる
マーケティング部門は「認知」「興味」の段階、営業部門は「検討」「購買」の段階、カスタマーサポートは「継続」「推奨」の段階と、各部門は顧客の一面しか見ていません。カスタマージャーニーマップを共有することで、全社が顧客体験全体を理解し、一貫した対応が可能になります。
理由3:データに基づいた改善が可能になる
マップに定量データ(流入数・閲覧数・離脱率・コンバージョン率)を重ね合わせることで、「どの段階で」「なぜ」顧客が離脱しているかが明確になります。勘や経験ではなく、データ根拠のある改善施策が立案できるようになります。
カスタマージャーニーとカスタマージャーニーマップの違い
「カスタマージャーニー」と「カスタマージャーニーマップ」は異なる概念です。
| 観点 | カスタマージャーニー | カスタマージャーニーマップ |
|---|---|---|
| 定義 | 顧客の購買プロセスの「概念」 | 購買プロセスを「図で可視化」したツール |
| 形態 | 考え方・フレームワーク | 具体的な表現・成果物 |
| 役割 | マーケティング戦略の基礎 | 施策の具体化・チーム共有 |
| 作成時間 | 短時間での検討 | データ収集を含み時間要 |
| 活用場面 | 戦略立案の初期段階 | 施策実行・改善フェーズ |
カスタマージャーニーは「顧客が商品を知ってから購買に至るプロセスがある」という認識や考え方です。これに対しカスタマージャーニーマップは、その思想を実際の顧客データやインサイトに基づいて「図に落とし込んだ具体的なツール」なのです。
CDJマップとカスタマージャーニーマップの関係性
「Consumer Decision Journey(CDJ)マップ」というフレームワークもあります。CDJマップは、McKinseyが提唱した「顧客の購買意思決定経路」に基づくもので、より短期的な決定プロセスに焦点を当てます。
カスタマージャーニーマップがより広い「認知から継続利用までの全体プロセス」を対象とするのに対し、CDJマップは「購買検討から購買決定」という限定的な段階に特化しています。両者は補完関係にあり、「長期的な顧客体験にはカスタマージャーニーマップ」「短期的な購買意思決定にはCDJマップ」と使い分けることで、より精密な施策設計が可能になります。
カスタマージャーニーマップの構成要素と役割
マップを正確に作成するには、各構成要素の役割を理解することが重要です。
ペルソナとジョブ(解決したい課題)
マップの最初のステップはペルソナの定義です。年齢・性別・職業といった属性情報だけでは不十分です。最も重要なのは「そのペルソナが何を解決したいのか」というジョブの定義です。
例えば「営業部長」というペルソナには複数のジョブがあります。「営業チームの効率を上げたい」というジョブもあれば「営業データを経営層に報告したい」というジョブもあります。同じペルソナでもジョブが異なれば、ジャーニーは大きく変わります。

【ヒント】検索の経路をみると、消費者が自分の目的を達成するためにどのように検索語を変化させていったのか、その経緯を確認することができます。このことで、その行動から意図の流れを知ることができます。リスニングマインドのパスファインダーであれば、こうした経路の変化を約15億語の語彙について表示させることができます。<パスファインダーの機能紹介>
各段階の顧客行動と思考
認知段階、興味段階、検討段階、購買段階、継続段階の各段階で、顧客は異なる行動を取り、異なることを考えています。
認知段階では「このような課題を解決する方法がある」という新たな可能性を発見します。興味段階では「この業界・商品についてもっと知りたい」という欲求が高まります。検討段階では「複数の選択肢を比較して最適な選択肢を見つけたい」というプロセスに入ります。各段階の行動と思考を正確に把握することが、施策設計の基礎になります。
タッチポイントと感情曲線
タッチポイントはどこで顧客が企業と接触するかを示すもので、SEO・SNS・広告・ダイレクトメール・営業電話・実店舗など多岐にわたります。各段階で優先的に使うべきタッチポイントは異なります。
感情曲線はマップの中でも重要な要素です。顧客の満足度や信頼度、不安感が各段階でどのように推移するかを可視化することで、改善が必要なポイントが明確になります。
カスタマージャーニーマップの作り方:5ステップ
カスタマージャーニーマップを効果的に作成するには、まず基本的な手順に沿って全体像を設計することが重要です。ここでは、一般的な作成方法を5つのステップで整理します。

ステップ1:マップ作成の目的とスコープを明確にする
まず「なぜこのマップを作るのか」を定義します。「新規顧客の獲得を加速したい」のか「既存顧客の離脱を防ぎたい」のか「カテゴリー全体の認知を高めたい」のか、目的によってマップの範囲が変わります。
スコープも重要です。製品導入から継続利用までの全体を対象とするのか、導入前の検討段階だけを深掘りするのか。最初は限定的なスコープで始めて、精度が高まるにつれ拡大する方がよい結果につながります。

たとえば、賃貸を起点に関連キーワードを見ると、スーモ賃貸、UR賃貸、賃貸マンション、東京 賃貸、賃貸 探し方、一戸建て賃貸 など、地域、ブランド、物件タイプ、探し方まで幅広い関心が含まれていることがわかります。つまり、賃貸というテーマは入口が広く、最初から市場全体のジャーニーを描こうとすると対象がぼやけやすくなります。
そのため、この段階では市場全体をそのまま扱うのではなく、たとえば「東京で賃貸物件を探している人」や「賃貸の探し方を調べている人」のように、対象とする関心群や段階を絞ってスコープを決めるのが適切です。最初に範囲を限定しておくことで、その後のペルソナ設定や行動整理も具体化しやすくなります。<クエリファインダーの機能紹介>
ステップ2:ペルソナを定義し、解決したいジョブを明確にする
次にペルソナを設定します。複数のペルソナがある場合は、最も重要な1つ、または最も購買確度の高いペルソナから始めるのがよいでしょう。
ペルソナには「田中太郎、35歳、営業マネージャー、年収600万円」といった属性情報だけでなく、「何を実現したくて検索しているのか」というジョブを定義することが重要です。ジョブが明確になれば、検索キーワードや行動パターンの予測精度が大きく高まります。

たとえば、東京 賃貸 に関する関心を見ても、東京女性一人暮らし賃貸、東京一人暮らし賃貸事情、東京駅周辺駅近賃貸、東京近郊2LDK賃貸相場、東京ペット可賃貸物件、ロフト付き賃貸物件情報 など、複数の関心群に分かれています。つまり、同じ東京で賃貸を探しているユーザーでも、「女性が安心して一人暮らしできる物件を探したい」のか、「通勤しやすい駅近物件を比較したい」のか、「家族で住める2LDKの相場を知りたい」のかで、見ている情報も比較軸も異なります。
このように、ペルソナは年齢や性別だけで設定するのではなく、「どのような条件で、何を解決したい人なのか」というジョブまで含めて定義することが重要です。ジョブを起点にペルソナを定めることで、この後に整理する検索行動、思考、不安、タッチポイントも具体化しやすくなります。<ペルソナビューの機能紹介>
ステップ3:各段階の具体的な行動と思考を洗い出す
ペルソナを定めたら、次はそのユーザーが実際にどのような検索の流れをたどっているのかを確認します。ここで重要なのは、「物件を探す」といった抽象的な行動で終わらせず、どのような条件を加えながら関心を具体化していくのかを見ることです。

東京 ペット可賃貸 を起点に検索の流れを見ると、その前段階では 東京 賃貸 や ペット可、ペット可の賃貸 といった広いテーマから入り、そこから 東京 ペット可賃貸 に絞り込まれていることがわかります。さらにその先では、東京賃貸ペット可デザイナーズ、ペット可賃貸東京 一軒家、東京ペット可 マンション、東京 ペット可賃貸 3ldk など、より具体的な住まいの条件へ関心が分かれていきます。
この流れから見えてくるのは、このペルソナが最初から「一つの物件条件」を決めているわけではないということです。まずは東京でペットと住める物件があるのかを広く調べ、その後にデザイナーズ物件、一軒家、マンション、間取りといった条件を比較しながら、自分に合う選択肢を絞り込んでいくと考えられます。
このように検索の流れを見ていくことで、認知段階では「ペット可の賃貸はどのくらいあるのかを知りたい」、比較段階では「マンションか一軒家か、どの条件が自分に合うのかを比べたい」、検討段階では「間取りや設備まで含めて具体的に選びたい」といったように、段階ごとの行動と思考を具体的に整理しやすくなります。<パスファインダーの機能紹介>
ステップ4:各段階のタッチポイントと感情を整理する
行動と思考を整理したら、次はそのユーザーがどの接点で比較や迷いを深めているのかを見ていきます。カスタマージャーニーマップでは、顧客が接触するチャネルや情報だけでなく、どの段階で不安や期待が強まるのかまで整理することが重要です。

東京 ペット可賃貸マンション から ペット可賃貸東京一軒家 へ流れる経路を見ると、ユーザーは単純に「マンションではなく一軒家がいい」と考えて移動しているわけではありません。実際には、東京 賃貸、ペット可、東京 ペット可賃貸 といった広い条件を維持しながら、東京ペット可賃貸 1ldk 安い、東京 ペット可賃貸 駅近、東京賃貸ペット可デザイナーズ などの具体条件を比較し、そのうえで 東京 ペット可賃貸 ファミリー や 東京 ペット可賃貸 3ldk のような、より広さや住環境を重視する方向へ関心が移っていることがわかります。
つまりこの流れは、ペットと住めることを前提に物件を探し始めたユーザーが、比較を進める中で「広さが足りない」「家族で住むには厳しい」「より自由度の高い住環境がほしい」といった課題を感じ、一軒家という選択肢に移っていく過程として読むことができます。カスタマージャーニーマップでは、このような条件比較の途中で生まれる不満や優先順位の変化を整理することで、どの段階でどの情報が必要になるのかを具体化しやすくなります。<ロードビューの機能紹介>
ステップ5:改善機会を特定し、施策を設計する
最後に、ここまで整理したペルソナ、検索行動、比較の分岐をもとに、どこに改善機会があるのかを整理します。重要なのは、検索の流れを眺めて終わるのではなく、「どの段階で迷いが強くなっているのか」「どの条件比較で意思決定が止まっているのか」を見つけ、それに対応する施策へ落とし込むことです。
たとえば、東京 ペット可賃貸 を探しているユーザーが、マンションから一軒家へ流れている場合、その背景には「広さが足りない」「家族やペットと住むには条件が合わない」「住環境をもっと重視したい」といった不満や再検討のきっかけがあると考えられます。こうした場合は、単に物件一覧を見せるだけでなく、「マンションと一軒家の違い」「ペット可物件で重視すべき条件」「一人暮らし向けとファミリー向けの選び方」など、比較や判断を助ける情報を補うことが改善につながります。
このように、カスタマージャーニーマップでは、各段階でユーザーが何に迷い、何が不足しているのかを整理することで、必要なコンテンツ、導線、比較情報、サポート情報を具体的に設計しやすくなります。
カスタマージャーニーマップのテンプレート例
まずは一般的なテンプレートを確認する
ここまで見てきたように、カスタマージャーニーマップは、顧客の行動を並べるだけでなく、各段階で何を考え、どこで迷い、どの接点で比較し、何が不足しているのかまで整理することが重要です。
その全体像を整理しやすくするために、まずは一般的なテンプレートの形を確認しておくと、どのような項目を埋めればよいのかがわかりやすくなります。

テンプレートは実際の検索行動に合わせて具体化する
上のようなテンプレートを使うと、認知、興味・関心、比較・検討、購買・決定、継続・推奨という各段階に沿って、顧客行動、接点、思考、課題、対応策を整理しやすくなります。
ただし、実務ではこの枠組みをそのまま埋めるだけでは不十分で、実際の検索行動や比較の流れに合わせて中身を具体化することが重要です。
たとえば今回のように、東京でペット可賃貸を探しているユーザーを例にすると、単に「比較する」と書くだけではなく、マンションから一軒家へ比較軸が移る流れや、広さ、駅近、間取り、住環境といった条件の変化まで反映した方が、より実態に近いマップになります。
東京ペット可賃貸の例に当てはめる
そこで、上のテンプレートをもとに、東京ペット可賃貸を例にしたカスタマージャーニーマップを整理すると、以下のようになります。
東京ペット可賃貸を例にしたカスタマージャーニーマップのテンプレート
| 認知 | 興味・関心 | 比較・検討 | 購買・決定 | 継続・推奨 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 顧客行動 |
・東京でペットと住める賃貸物件があるか調べる ・ペット可の条件や探し方を検索する |
・エリア、家賃、間取りなどの条件を絞って調べる ・ペット可賃貸の相場や住みやすさを確認する |
・マンションか一軒家かを比較する ・駅近、広さ、デザイナーズ、ファミリー向けなどの条件を比較する |
・問い合わせ、内見予約を行う ・初期費用、審査、契約条件を確認する |
・入居後の住みやすさを確認する ・口コミや体験談を共有する |
| 顧客接点 |
・検索エンジン ・不動産ポータル ・SNS |
・物件一覧ページ ・条件検索ページ ・比較記事 |
・物件詳細ページ ・比較コンテンツ ・レビュー、口コミ |
・問い合わせフォーム ・不動産会社 ・内見、相談窓口 |
・入居後サポート ・レビューサイト ・SNS、コミュニティ |
| 思考 |
・東京でペットと住める物件はどれくらいあるのか? ・まず何から探せばよいのか? |
・どのエリアが住みやすいのか? ・家賃や間取りはどの程度が現実的か? |
・マンションと一軒家のどちらが自分に合うのか? ・ペットと暮らしやすい条件は何か? |
・審査は通るのか? ・初期費用や契約条件に問題はないか? |
・実際に住みやすかったか? ・他の人にもおすすめできるか? |
| 課題 |
・情報の入口が広く、何から見ればよいかわかりにくい ・ペット可物件の全体像がつかみにくい |
・条件が多く、何を優先すべきかわからない ・エリアや家賃相場の判断が難しい |
・比較軸が整理されていない ・マンションから一軒家に流れるような迷いが生じる |
・審査、初期費用、契約条件への不安がある ・問い合わせ前に必要な情報が不足している |
・入居後の満足度が事前に想像しにくい ・体験共有の導線が弱い |
| 対応策 |
・東京ペット可賃貸の基本情報を整理した導入コンテンツを作る ・条件別の入口ページを設計する |
・エリア別、家賃帯別、間取り別の比較コンテンツを用意する ・初心者向けの探し方ガイドを整備する |
・マンションと一軒家の違いを比較できるコンテンツを作る ・ペット可物件で重視すべき条件を整理する |
・問い合わせ前FAQを充実させる ・初期費用、審査、契約条件をわかりやすく説明する |
・入居後サポート情報を整理する ・口コミ、レビュー投稿を促進する導線を設計する |
テンプレート化すると施策につなげやすくなる
このようにテンプレートに落とし込むことで、検索行動データから読み取った関心の変化や比較の分岐を、施策に使える形で整理しやすくなります。
特に、どの段階で情報不足が起きているのか、どの比較軸で迷いが生じているのかを可視化しておくことで、記事、比較コンテンツ、FAQ、導線改善など、次に打つべき施策も具体化しやすくなります。
ただし手作業では限界がある
一方で、ここまでの作業をすべて手作業で整理しようとすると、キーワードの収集、分類、段階分け、比較の読み取りに時間がかかり、担当者ごとの解釈ぶれも起きやすくなります。
次に、こうした整理をより効率的に進める方法として、検索行動データからジャーニー全体を把握しやすくする考え方を見ていきます。
検索行動データを使ったカスタマージャーニーマップ設計の新手法
ここまで紹介した5ステップは、カスタマージャーニーマップを整理するための基本的な考え方です。ただし、実際の現場でこの手順に沿ってマップを作成しようとすると、いくつかの課題に直面しやすくなります。
従来の作成方法で起こりやすい課題
一般的なカスタマージャーニーマップの作成では、まず関連キーワードや顧客行動データを集め、それを段階ごとに整理し、さらに顧客の意図や感情を読み解いていく必要があります。しかしこの作業は、多くの場合、担当者の手作業に依存します。
その結果、制作に1〜2か月かかることもあり、大量のキーワードを収集して分類するだけでも大きな負担になります。加えて、どのキーワードを関連語とみなすか、どのジャーニー段階に置くかといった判断は担当者ごとにぶれやすく、マップの再現性や一貫性が損なわれることもあります。
ジャーニーファインダーが改善できること

こうした従来の課題を改善するのが、ジャーニーファインダーです。ジャーニーファインダーは、ユーザーが入力したシードキーワードをもとに、関連キーワードの収集、無関係語の除外、ブランド識別、CDJ段階の分類、ステージ別のトピッククラスタリングまでをAIで自動化します。
これにより、従来は長い時間をかけて行っていた探索と整理の工程を大幅に短縮でき、短時間で戦略に使える形のジャーニーマップを作成しやすくなります。また、分類基準がAIのプロンプト基準に基づいて統一されるため、担当者ごとの解釈のばらつきを抑えながら、一貫した視点で市場を捉えられるようになります。
ジャーニーファインダーで把握できること
ジャーニーファインダーの価値は、単に作業を速くすることだけではありません。各キーワードをカスタマージャーニー段階ごとに分類し、それをトピック単位で可視化できるため、顧客がどの段階で何に関心を持ち、どのような文脈で検索しているのかを立体的に把握できます。
たとえば、初期探索ではどのような課題起点の検索が多いのか、情報探索ではどのブランドや比較軸が重視されているのか、購入確定段階では価格・割引・申込みなどのどの条件が意思決定を後押ししているのか、といった違いを段階別に確認できます。さらに、購入後の使い方、問い合わせ、故障対応といった検索も含めて把握できるため、購買後の体験まで含めた設計が可能になります。
施策設計にどうつながるのか
このように、ジャーニーファインダーを使うことで、従来のように仮説ベースでマップを埋めていくのではなく、実際の検索行動をもとに、どの段階にどのようなニーズや障壁があるのかを把握しやすくなります。
その結果、認知段階ではCEPを起点にした情報設計、情報探索段階では比較コンテンツの強化、購入確定段階では申込み導線や手続きガイドの最適化、購入後段階ではサポート情報や継続施策の強化といったように、各フェーズに応じた具体的なアクションへ落とし込みやすくなります。
つまり、ジャーニーファインダーは、カスタマージャーニーマップ作成そのものを置き換えるというより、従来の5ステップで発生しがちだった「時間がかかる」「人によって判断がぶれる」「市場全体を把握しにくい」といった問題を改善し、より速く、より一貫性のある形で、施策に使えるジャーニーマップ作成を支援する機能だといえます。
カスタマージャーニーマップの活用法
カスタマージャーニーマップは、顧客の行動を整理するための図としてだけでなく、実際のマーケティング施策や改善活動にも活用できます。ここでは代表的な活用法を紹介します。
1.各段階で必要なコンテンツを設計する
顧客は認知、比較検討、購買、継続利用と段階が進むにつれて、求める情報が変わります。カスタマージャーニーマップを使うことで、どの段階でどのような情報が必要なのかを整理しやすくなり、記事、比較コンテンツ、導入事例、FAQなどの設計に活かせます。
2. タッチポイントごとの課題を見つける

顧客がどのチャネルで接点を持ち、どこで迷いや不安を感じているのかを整理することで、改善すべきポイントが見えやすくなります。たとえば、認知段階では情報不足、比較検討段階では不安解消の不足、購買段階では導線の弱さといった課題を把握しやすくなります。
3. 部門間で顧客理解を共有する
カスタマージャーニーマップは、マーケティング、営業、カスタマーサポートなど、部門ごとに分断されがちな顧客理解をつなぐ役割も持ちます。共通のマップを持つことで、顧客体験全体を前提に施策を考えやすくなります。
4. 改善施策の優先順位を考える

顧客がどの段階で離脱しやすいのか、どの場面で不安が高まるのかを可視化することで、どこから改善すべきかを判断しやすくなります。限られたリソースの中でも、優先度の高い課題から着手しやすくなります。
こうした検索行動データの分析を、より実務で活用しやすい形で支援するのが Listening Mind です。検索キーワードを単体で見るのではなく、検索の流れや意図の変化まで含めて把握しやすくなるため、カスタマージャーニーマップの作成や活用をより効率的に進めたい場合に役立ちます。
検索インテントから顧客ジャーニーを読み取る — Listening Mind(リスニングマインド)

Listening Mind(リスニングマインド)とは、日本語3億語・英語10億語・韓国語2億語の消費者検索行動データを基盤に、消費者の認知から購買に至るまでのインテントの変化を可視化するSaaSプラットフォームです。
カスタマージャーニーマップ作成における最大の課題は「顧客の行動を正確に把握するデータ」の不足です。アンケートやインタビューは記憶バイアスの影響を受けますが、検索行動は消費者が「その時々に行った実際の行動」であるため、より正確なジャーニーの把握が可能です。
| 観点 | 従来の手法 | Listening Mind |
|---|---|---|
| データソース | アンケート・インタビュー(記憶ベース) | 検索行動データ(行動ベース) |
| 分析単位 | キーワード(点) | 検索パス(経路・文脈) |
| ペルソナ分類 | 属性・デモグラフィック | ジョブ(解決したい課題) |
| 更新頻度 | 年1〜2回 | 常時更新 |
| 市場カバー範囲 | 自社顧客に限定 | 市場全体の消費者行動 |
従来手法は自社顧客の限定的な回答に基づくのに対し、Listening Mindは市場全体の検索行動から、顧客が実際にどのようなプロセスで購買決定に至るかを客観的に把握できます。

【ヒント】一般的には、入手したデータをデータサイエンティストが事前分析し、その結果に見えてきた傾向性をもとにアナリストが解釈を加えて読み取りを行います。リスニングマインドであれば、各ファインダー機能に専用のAIエージェントが搭載されており、分析結果について、その場でインサイトを読み取ることが可能です。<AIエージェントの機能紹介>
Listening Mindの実際の画面と分析デモを確認したい方へ
検索行動データから顧客の実際のジャーニーを可視化し、施策の最適化につなげる方法を、実際のデモ画面でご確認できます。Listening Mindの実際の画面と分析デモを確認したい方へ 検索行動データから顧客の実際のジャーニーを可視化し、施策の最適化につなげる方法を、実際のデモ画面でご確認できます。
よくある質問(FAQ)
Q1. カスタマージャーニーマップと従来のファネル分析の違いは何ですか?
ファネル分析は「認知→興味→比較→購買」という一方向の直線的なプロセスを想定していますが、現代の顧客行動は往復や迂回を含む複雑なプロセスです。カスタマージャーニーマップはそうした複雑な行動を全て可視化し、非線形のプロセスに対応できます。また、顧客の感情や思考も含めて把握できる点が大きな違いです。
Q2. カスタマージャーニーマップはいつ更新すべきですか?
市場の変化が大きい業界では3ヶ月ごと、比較的安定した業界でも6ヶ月ごとの更新が推奨されます。少なくとも年2回は新しいデータを収集して、マップの精度を確認してください。新製品発売やキャンペーン開始後は、その効果測定を含めて臨機応変に更新することも重要です。
Q3. 複数のペルソナがある場合、何個のマップを作るべきですか?
ペルソナごとにジャーニーが異なる場合は、別のマップを作成することをお勧めします。最初は「購買確度が高い」または「LTVが大きい」上位1〜2つのペルソナに絞って、マップの精度を高めてから追加するアプローチがよい結果につながります。
Q4. データが不足している場合、マップは作成できますか?
完璧なデータを待つのではなく、現在利用可能なデータ(Google Analytics、営業記録、カスタマーサポート問い合わせ)で「仮説的なマップ」を作成してから、検証と改善を繰り返すアプローチが現実的です。データ不足の段階では、仮説として記述し、段階的に実データで置き換えていきましょう。
Q5. カスタマージャーニーマップを作成するために、どのような人員や時間が必要ですか?
最小限は「マーケティング担当者1名、営業管理者1名、顧客データ分析者1名」の3名が4〜8週間かけて完成させるのが目安です。ただし、複雑なジャーニーや複数のペルソナを対象とする場合は、時間がかかる可能性があります。まずはシンプルなマップから始めて、段階的に複雑さを増やすアプローチをお勧めします。
Q6. カスタマージャーニーマップは社内で共有・更新する際の注意点は何ですか?
「一度作ったら終わり」ではなく、定期的に全社で見直す仕組みが重要です。マーケティング部門、営業部門、カスタマーサポート部門それぞれが「最新の顧客情報」を持っており、その情報を定期的に集約してマップに反映することで、現実に基づいたツールになります。Google ドライブやNotionなどのクラウドツールを活用して、複数部門での協調編集体制を作ることをお勧めします。
まとめ
カスタマージャーニーマップは、現代のマーケティングに不可欠なツールです。本記事の重要なポイントを整理します。
- カスタマージャーニーマップとは、顧客が認知から購買に至るまでの行動・思考・感情を図で可視化したツールであり、従来のファネル分析よりも複雑で現実的なプロセスを表現できます
- マップ作成の5つのステップは、目的設定→ペルソナ定義(ジョブの明確化)→行動洗い出し→タッチポイント整理→改善施策設計で進めます
- 検索行動データを活用することで、顧客の無意識の本音が反映され、より精度高いマップが実現できます
- 定期的な更新が重要であり、3〜6ヶ月ごとに新しいデータを組み込むことで、現実に基づいた施策が立案できます
- 全社的な共有と協力が成功のカギであり、マーケティング・営業・CS各部門の情報を統合することで初めてマップの価値が生まれます
カスタマージャーニーマップを作成・活用することで、顧客視点の施策設計が可能になり、マーケティングの効果が大きく向上します。
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本記事の情報は2026年時点のものです。
執筆者紹介
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株式会社 アセントネットワークス ソリューション事業部 シニアアナリスト 吉岡直樹
デジタル系プロダクションの設立の後、NEC(ヒアラブルデバイスUX設計)、JTB(輸出促進支援事業次席顧問)、TBS(Screenless Media Lab. テクニカルフェロー)、NHK(放送100年プロジェクト/データ分析)などへの参加を経て現職。
日本ディープラーニング協会 認定エンジニア (JDLA for ENGINEER 2022#2)、(米)PMI認定 プロジェクトマネジメント・プロフェッショナル (PMP)、経営学MQT 上級 (NOMA)、データサイエンティスト協会 会員 (個人)、日本マネジメント学会 会員 (個人)。
著書:「AIアシスタントのコア・コンセプト/人工知能時代の意思決定プロセスデザイン(BNN:2017)」、「SENSE インターネットの世界は「感覚」に働きかける(日経BP:2022)」
※ NHK 放送100年「メディアが私たちをつくってきた!?」データ分析担当








