「利益の80%を生み出す20%のロイヤル顧客に集中せよ」という話に、何かしらの違和感を持っていた方いらっしゃいますか?本日はそのような方にピッタリの面白い本を一冊ご紹介したいと思います。
「“未”顧客理解 なぜ、「買ってくれる人=顧客」しか見ないのか?」という本です。
未顧客という言葉に馴染みがなく、しっくりこないかも知れませんが、この本から得られるインサイトは非常に興味深いものです。
未顧客の重要性
未顧客の重要性は、多くの研究や書籍で強調されています。既存の顧客を維持することも重要ですが、未顧客を顧客に転換することは、企業の長期的な成長に不可欠です。既存顧客の維持とロイヤルティの向上は短期的な売上増加に繋がりますが、長期的な成長は主に新規顧客の獲得によって達成されます。
エレンバーグ・バス研究所のバイロン・シャープ教授は、ライトユーザー(Light Users)を増やすことがブランド成長に不可欠であると主張しています。どの製品カテゴリーでも、市場シェアが高いブランドと低いブランドの差は浸透率にあり、売上やシェアが増加する時には必ず、ライトユーザーが増加しているからです。
このような理由から、ブランドは購買頻度が低いライトユーザーや非消費者を効果的にターゲティングする必要があります。
未顧客理解の難しさ
未顧客を理解することは簡単ではありません。多くの企業は顧客データを収集し分析していますが、それは主に既存顧客に関するデータです。未顧客に関するデータが不足しているため、未顧客の行動や好みを把握するのが難しいのです。
また、未顧客はブランドに対する興味が低い(or全くない)ため、興味を持ってもらうのはさらに難しいです。
マーケティングでよく使用されるカスタマージャーニー(Customer Journey)分析、CRM(Customer Relationship Management)、CDP(Customer Data Platform)などのツールは、既存顧客の行動を分析するのに役立ちますが、未顧客に関するインサイトを得るには限界があります。
そのため、未顧客を理解し、アプローチするための新しい方法が必要です。
文脈を変えれば興味は「作り出せる」
未顧客をターゲティングする効果的な方法の一つは、文脈(コンテキスト)を変えることです。例えば、子どもたちがお風呂を嫌う理由は、遊びの連続性が途切れるからです。しかし、お風呂を遊びの延長として再定義すれば、子どもたちはお風呂に入るのを嫌がらなくなります。これは未顧客を対象としたマーケティングにも適用できます。
ブランドは未顧客の文脈に合わせて製品やサービスを再定義し、興味関心を引き出す必要があります。これは単に製品の機能をアピールするのではなく、未顧客の欲求や興味関心に合った体験を提供するということです。
お風呂を嫌がる子どもたちには、水遊び用のおもちゃや泡風呂を通じてお風呂を遊びとして再定義することで、お風呂を楽しめるように誘導することができます。
未顧客のための新しいアプローチ方法
未顧客をターゲティングするための新しいアプローチ方法には、以下のようなものがあります。
- データ駆動型アプローチ:未顧客に関するデータを収集・分析し、彼らの行動や好みを把握。
ソーシャルメディア分析、アンケート調査、オンライン行動データ、検索データなどを活用。 - 文脈ベースのマーケティング:未顧客の文脈に合わせたマーケティングメッセージと体験を提供。
特定の状況や問題を解決する方法を提示することで、未顧客の興味関心を引き出す等。 - 体験をデザイン:未顧客がブランドとポジティブな体験ができるように製品やサービスをデザイン。
これは未顧客の興味を引き、購入につながる重要なポイント。 - 心理的アプローチ:未顧客の心理的なハードルを理解し、それを克服する戦略を立案。
未顧客がブランドに対して持っている偏見やマイナスイメージを改善するためのコミュニケーション戦略を立てる等。
事例:お風呂を嫌がる子どもたちへのアプローチ:
保育士は子どもたちがお風呂を遊びの延長と認識するように誘導し、お風呂を嫌がる子どもたちも楽しく入浴できるようにします。これはお風呂を単に体をきれいにする作業ではなく、楽しい遊びとして再定義したものです。
これにより、子どもたちはお風呂を嫌がることなく、楽しむようになります。
このようなアプローチは未顧客を対象としたマーケティングでも有効です。ブランドは未顧客の文脈に合わせて製品やサービスを再定義し、未顧客の興味を引き出す必要があります。
未顧客の理解とアプローチは現代のマーケティングにおいて重要な課題です。未顧客をターゲティングすることは、既存顧客の維持とロイヤルティの向上だけでは達成できない長期的な成長を実現します。
未顧客を理解するためには、新しいアプローチ方法と戦略が必要であり、文脈を変える、体験をデザインする、心理的ハードルを下げるなど、様々な方法があります。
未顧客をターゲティングする効果的なマーケティング戦略を通じて、企業はより多くの潜在顧客を確保し、長期的な成長を遂げることができます。そのためには、未顧客に対する理解を深め、新しいアプローチ方法が不可欠です。その際に、バイアスのない全数データである検索データが活躍するでしょう。
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