アメリカのスキンケア市場を検索データで調査|注目成分・肌悩み・評価傾向を読み解く

前回の記事では、検索データを活用してアメリカのスキンケア市場全体を俯瞰し、特に検索数が多かった「日焼け止め」に焦点を当てて分析しました。今回はその続編として、「スキンケア成分」や「肌悩み」といった切り口から、アメリカ市場における消費者の関心の変化とその背後にある検索意図をひも解きます。
(※検索量は直近3ヶ月の月平均検索量ベースで表記しています。)

スキンケア成分カテゴリ Top 5:検索から見る注目成分

アメリカのスキンケア市場で、消費者が最も多く検索したスキンケア成分は以下の5つです。
1. Retinol(レチノール)|月平均 1,357,686回
2. Hyaluronic(ヒアルロン酸)|月平均 1,310,641回
3. Niacinamide(ナイアシンアミド)|月平均 913,241回
4. Vitamin C(ビタミンC)|月平均 623,049回
5. Glycolic(グリコール酸)|月平均 603,395回

トップはエイジングケア成分「レチノール」

最も検索量が多かったのは、エイジングケア成分として根強い人気を誇るRetinol(レチノール)。月間135万回以上の検索が行われており、アメリカ市場における高い関心度がうかがえます。
検索内容の傾向としては、「レチノールとは」「効果」「使い方」などの基礎情報に加え、「おすすめ製品」「使用感レビュー」「製品比較」など、具体的な商品選定に向けた検討フェーズの検索も多く見られました。

人気の製品タイプ:セラム&クリーム

レチノール関連では、以下の製品タイプが高い検索数を記録しています。
Serum(セラム):約167,220回
・Cream(クリーム):約140,426回

この傾向から、レチノールは「成分」単位での関心にとどまらず、テクスチャーへの具体的な期待・比較検討へと進んでいることがわかります。

レチノール関連検索で注目されたブランド

レチノールとともに多く検索されたブランドは以下の通りです。
CeraVe(セラヴィ):約61,731回
Olay(オレイ):約45,487回
・The Ordinary(ジ・オーディナリー):約32,564回

いずれもドラッグストアやオンラインで入手しやすいブランドであり、信頼性や価格バランスの観点から、成分起点の検索行動と親和性が高いブランドといえます。

消費者は「成分理解 → 使用方法 → 製品タイプ → ブランド比較 → 購入検討」といった段階を踏んで、多面的に検索を行っていることが明らかです。

スキンケア部位カテゴリ Top 5:検索に見る部位別関心度

アメリカのスキンケア市場において、消費者が多く検索した“ケア対象部位”は以下の5つです。
1. Face(顔)|月平均 2,536,058回
2. Body(ボディ)|月平均 297,276回
3. Pores(毛穴)|月平均 95,675回
4. Scalp(頭皮)|月平均 62,172回
5. Eyes(目元)|月平均 43,626回

圧倒的に検索されたのは「Face(顔)」

中でも圧倒的な検索量を誇るのが、Face(顔)に関するスキンケアです。月間検索数は250万件を超え、他部位と比較しても約8倍以上の差があり、消費者の関心が非常に集中していることがわかります。

代表的なキーワード例:
face masks(マスクパック):約135,000回
・cerave face wash(セラヴィ フェイスウォッシュ):約90,500回
・exfoliating scrub for face(顔用角質ケアスクラブ):約69,500回

さらに以下の目的別検索も高い水準を記録しています:
Best(おすすめ・ベスト商品):約419,373回
Sunscreen(日焼け止め):約399,890回
Wash(洗顔):約911,578回

このようなデータから、消費者は“顔”という部位に対して、アイテムの機能性や使用目的を細かく比較・検討し、自分に合ったアイテムを探していることがうかがえます。

顔関連ワードとともに検索されたブランド

検索キーワードに頻出したブランドは以下の通りです。
CeraVe(セラヴィ):約115,079回
・Neutrogena(ニュートロジーナ):約60,340回
・Panoxyl(パノキシル):約56,068回

これらは洗顔やニキビケアなど、機能性と信頼性を兼ね備えた製品群を展開しており、ブランドへの信頼度が高く、消費者から支持されていると考えられます。

また、東アジアの伝統的な美容法である「Gua Sha(かっさ)」も注目を集めており、月間約80,067回の検索が確認されました。特にFace Oil(フェイスオイル)と組み合わせた使用方法に関する検索が多く、製品単体の関心から“スキンケアルーティン全体”へと関心が広がっている傾向が見受けられます。

スキンケア評価カテゴリ Top 5:選ばれる理由と比較軸

アメリカの消費者がスキンケア製品を選ぶ際に、どのような観点から情報を検索しているのか。その傾向を示すのが「評価」に関連する検索ワードです。

検索回数の多い評価関連キーワードTop 5は以下の通りです。
1. Best(おすすめ・ベスト商品)|月平均 1,809,355回
2. Benefits(効果・効能)|月平均 500,634回
3. Good(良い製品)|月平均 302,337回
4. After(使用後の状態)|月平均 271,870回
5. Vs(製品比較)|月平均 262,243回

最も多く検索されたのは「Best(おすすめ・ベスト商品)」

アメリカのスキンケア消費者は、自分の肌質や目的に合った“ベストな製品”を探す検索行動を活発に行っており、関連キーワードの月平均検索数は180万件を超えています。
特に「best sunscreen for sensitive skin(敏感肌向けベスト日焼け止め)」のように、「製品カテゴリ × 肌悩み」を掛け合わせた検索が目立ち、パーソナライズされたおすすめ情報への関心が非常に高いことがわかります。

検索量が多い代表的なキーワード:
best sunscreen(おすすめ日焼け止め)| 54,666回
・best sunscreen for face(顔用おすすめ日焼け止め)|月平均 53,166回
・best cleansing gel for face(顔用おすすめクレンジングジェル)|月平均 35,566回

おすすめニーズの背後にある関心カテゴリ

「Best」に関連して検索されるトピックとしては、以下のカテゴリとの結びつきが特に強く見られました。
Skin(肌全般)|月平均 525,166回
・Sunscreen(日焼け止め)|月平均 499,573回
・Face(顔)|月平均 419,373回

また、消費者が重視している肌の状態・悩みとしては以下が上位を占めています。
Sensitive(敏感肌)|月平均 204,125回
・Oily(脂性肌)|月平均 149,020回
・Wrinkles(しわ)|月平均 128,111回

これらのデータから、アメリカ市場では「ベスト商品」は万人向けの汎用的な情報ではなく、“肌タイプ別・悩み別のベスト”が求められていることが明らかです。
さらに「Korean Skincare(韓国コスメ)」に関する検索も月平均 約74,774回を記録しており、K-Beautyへの信頼と関心が依然高いことがわかります。

肌悩みカテゴリ Top 5:美容から“医療視点”へと広がる検索傾向

アメリカ市場において、スキンケアに関連する「肌悩み」に対して、消費者がどのようなテーマに関心を寄せているかを検索データから分析した結果、月平均検索量が多かった上位5テーマは以下の通りです。
1. Rosacea(酒さ様皮膚炎)|月平均 1,082,031回
2. Hyperpigmentation(色素沈着)|月平均 992,212回
3. Wrinkles(しわ)|月平均 890,395回
4. Sensitive(敏感肌)|月平均 778,349回
5. Oily(脂性肌)|月平均 564,485回

最も検索されたのは「Rosacea(酒さ様皮膚炎)」

中でも最も検索された肌悩みはRosacea(酒さ様皮膚炎)で、月間検索回数は100万回を超える水準に達しています。
代表的な検索キーワード:
・rosacea(酒さ様皮膚炎)|368,000回
・treat rosacea(酒さ様皮膚炎の治療|165,000回
・dermatologist rosacea(皮膚科+酒さ様皮膚炎|35,566回

検索行動をさらに深掘りすると、治療成分・処方薬・医療施術に関する検索が目立ち、以下のようなキーワードが頻出しています。
Metronidazole(メトロニダゾール)|35,422回
・Azelaic Acid(アゼライン酸)|29,425回
・Ivermectin(イベルメクチン)|24,241回
Laser Treatment(レーザー治療)|26,286回
これらはいずれも実際の治療選択肢や専門医の処方領域に関わる内容であり、美容観点ではなく“医療的アプローチ”を求める検索意図が強く表れています。

Rosacea関連の検索文脈

最も多く検索された関連トピックは以下の3つです:
Treat(治療)|165,491回
Best(おすすめ商品)|49,684回
Cream(クリーム)|44,031回

これらの傾向から、アメリカの消費者は単なる症状の理解にとどまらず、実際の治療手段、専門家の見解、効果的な成分といった、より医療的な視点で情報収集を行っていることがわかります。
これらの傾向は、アメリカ市場においてスキンケアに対する意識が“美容”から“医療的ケア”へとシフトしつつあることを示しています。

おわりに

本記事では、リスニングマインドを使った検索データ分析を通じて、アメリカのスキンケア市場における消費者の関心を、「成分」「部位」「製品評価」「肌悩み」といった主要カテゴリ別に読み解いてきました。
単なる製品比較にとどまらず、医療的視点での肌悩みへのアプローチや、フェイスオイルとかっさのようなルーティン提案型の検索行動など、スキンケアに対する関心がより立体的に広がっている点が印象的です。

こうした検索行動の変化は、消費者のインサイトを捉えるうえで極めて重要な示唆を含んでおり、製品開発やマーケティング戦略にも直結するヒントとなります。

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