洗濯洗剤、柔軟剤などの日用品市場は既に成熟しており、大手同士の競争も激しい市場です。商品の差別化を図り、CMなどで認知を高めても、最終的にユーザーと接触する店頭でのプロモーションの影響を多く受けるカテゴリーでもあります。なかなか消費者の本音が把握できず、マーケティング戦略を立てるのが難しいですが、検索データと言う新たな視線から、柔軟剤市場を分析してみました。
柔軟剤の市場規模と構造

柔軟剤市場は月平均207万回、年間で2750万回検索されています。4年間の推移を見ても検索量は安定しており、23年、24年と微増傾向にあります。24年10月にイロカの商品が改良新発売されたことにより、検索量が急増しました。
検索量を分析する際、単一のキーワードの検索量も重要ですが、トピックごとに見ることも重要です。柔軟剤が含まれた関連キーワード22,435個の中で共通して登場するワードを1つのトピックとして括って見ます。

トピックごとに見ると多くのユーザーがランキングやおすすめ、人気、組み合わせに関する情報を求めているということと、良い匂いに関するニーズが圧倒的に多いことが分かります。“柔軟剤”というキーワードとセットで検索されているブランド、商品ごとの月平均検索量TOP5は下記の通りでした。
- ファーファ:92,723
- レノア:87,181
- イロカ:71,214
- ラボン:62,871
- ランドリン:52,387
柔軟剤に関する検索量の変化

“柔軟剤”という単語が含まれた22,434件のキーワードの検索量変化を分析した表を見てみます。3ヶ月前と比較して検索量の増減量が多いキーワードと、増減率が高いキーワードを一目で把握することができます。
こちらのデータから、
増加量TOP5 : 冬になると静電気防止に関するニーズが高まる
増加率TOP5:1月からさくらの香りの柔軟剤(新作)が販売される
減少率TOP5:秋の香りであるキンモクセイの香りは冬になると需要が落ち着く
ということが読み取れ、柔軟剤も季節によって求められる香りや効果が異なることが分かりました。
季節ごとの消費者の悩みを検索量から把握してみます。
季節によって変化する消費者の悩み

セーターやニットを着始める10月から2月までは静電気を防止できる柔軟剤を、2月~3月には花粉対策ができる柔軟剤を、梅雨である6月には部屋干し用の柔軟剤、7月は汗の匂いに効果のある柔軟剤の需要が高まることが分かりました。柔軟剤を乗り換えず、同じ柔軟剤を使う方も多いですが、天気や着る服に合わせて柔軟剤も衣替えが必要なようです。
部屋干しは梅雨以外の時期も一定の需要があるということ、静電気防止や汗の匂いは冬や夏の期間に合わせて3~4ヶ月ほど、花粉の需要は長くとも2ヶ月というのも注目すべきポイントです。各需要が発生する時期だけでなく期間も異なります。商品開発やマーケティンを行う際に、ニーズが発生する期間もチェックしましょう。
柔軟剤に対する消費者の認識


次に、“柔軟剤 おすすめ”の前後3段階で発生したキーワード5505個を収集し、同じ意図を持ったユーザーをグループ化してみました。用途や求めている効果(青い網掛け)としては部屋干し、ふわふわ、消臭、毛玉防止がありました。他にも、メンズや赤ちゃんなど使用するユーザー/対象ごとに最適な柔軟剤を求めています。
匂いに関するクラスター(黄色い網掛け)を見ると、良い匂いや長持ちを求めているグループがいる一方で無香料を求めているグループもいますし、香害ともいわれる匂い問題についての悩みも見受けられます。“柔軟剤と洗剤の組み合わせ”、“柔軟剤ブレンド法”というグループも良い匂いを求めて単体ではなく組み合わせたり混ぜたりしようとしている意図がくみ取れます。
柔軟剤のブレンド法が知りたいユーザーのペルソナ像
では、柔軟剤のブレンド方法の情報を求めているユーザーはどのような人で、どのような質問を抱えているのでしょうか?検索ワードと検索結果画面をAIが分析し、抽出したペルソナをご紹介します。

ペルソナ 1:香りにこだわる主婦、家庭での洗濯を楽しみたい人
このペルソナは香りの組み合わせやオリジナルの香りを作ることに興味があるようです。検索結果には、柔軟剤を混ぜることのメリットや注意点、具体的なブレンド方法が示されており、香りを楽しむことを重視していることが伺える。
質問1. 柔軟剤を混ぜるとどんな香りになるの?
質問2. どの柔軟剤をブレンドすれば香りが良くなるの?
質問3. 混ぜる際に注意すべき成分はあるの?
ペルソナ 2:新しい洗濯方法を探している若いカップル
このペルソナは、柔軟剤を使って洗濯をより楽しく、個性的にしたいという欲求を持っています。オリジナルの香りを作りたいという意図が見え、検索結果には自分だけの香りを作るための具体的な方法や製品が紹介されています。アロマミックスやカスタマイズ可能な柔軟剤に関する情報が多く、個性を表現したいというニーズが反映されている。
質問1. どの柔軟剤を組み合わせるとオリジナルの香りが作れるの?
質問2. 混ぜる柔軟剤のおすすめは?
質問3. 自分たちのライフスタイルに合った柔軟剤はどれ?
AI分析の結果、上記のようなペルソナが抽出されましたが、2つのペルソナは柔軟剤ブレンドに関する情報を求めているという共通点はありますが、求めている情報や目的、欲求は少しずつ異なります。各ペルソナが求めている情報を発信し、各ペルソナの目的に合ったマーケティングメッセージが必要です。
ユーザーとのコミュニケーションの際に業界用語ではなく、ユーザーが実際に検索の際に使用するワードを把握するのも重要です。クラスター内の検索ワードから、ブレンドという畏まったフレーズではなく“混ぜる、ミックス、掛け合わせ”という消費者が普段使っているフレーズを把握できたのも大きな収穫です。
柔軟剤ブレンド、柔軟剤組み合わせの検索量推移

先ほどの柔軟剤ブレンド法のクラスター内にあった“柔軟剤 ブレンド おすすめ”“柔軟剤混ぜる おすすめ”“柔軟剤 ミックス”“柔軟剤 掛け合わせ”“柔軟剤 ブレンド”というキーワードの検索量推移を見てみました。検索量は月平均で100~200と、そこまで多くありませんが、検索量が微増していることが分かります。

次にもう少し範囲を広げ、[柔軟剤+組み合わせ]が含まれたキーワードの検索量と市場状況を見てみました。関連キーワードは377個あり、月平均7万4千回、年間90万回検索されています。柔軟剤と洗剤の組み合わせに関するニーズは以前からありましたが、洗濯ビーズと柔軟剤の組み合わせのニーズ22年以降に発生しています。左にあるトピックを見ると、組み合わせの対象としては洗剤が基準となる場合、アリエール>ボールド>アタックの順であり、柔軟剤が基準となる場合はランドリン>イロカ>レノアであることが分かりました。
無香料の柔軟剤を求めるユーザー

多くの消費者が良い匂い、匂いを長持ちさせる方法を求めている一方で、無香料の柔軟剤を求めている消費者もいます。“柔軟剤無香料”の前後の検索経路から、消費者の意図を把握してみました。以前の経路を見ると香水に関するキーワードが多く登場します。近年、香害やスメハラが注目される中、柔軟剤の香りと混ざってお気に入りの香りが変わったり、香りが強くなりすぎることを懸念しており、結果的に無香料の柔軟剤にたどり着いています。
以降の経路では無印良品やレノアが無香料柔軟剤の中で第一想起されており、無香料ではなく微香や香り控えめを、香りがしないのではなく消臭効果があるものを求めているユーザーもいるということが分かりました。
香水や柔軟剤だけでなく、体臭や服のニオイにも敏感になっている様子が伺えます。
まとめ
今回は検索データを活用し、柔軟剤の市場分析、消費者の意図を把握してみました。リスニングマインドに“柔軟剤”というキーワードを1つ入れただけで、これだけの情報を簡単に把握することができました。他にもタオルの仕上がりや香りにこだわって柔軟剤の購入を決めるユーザーがいるということや、柔軟剤にもメンズ用のニーズがあるということが分かりました。
検索データを活用し、消費者分析を行い、商品開発やマーケティング戦略に活用してみませんか?
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