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消費者分析/無線イヤホン-後編-

CaseStudy|Japan

前編に続き、後編に入りたいと思います。
前編をお読みでない方は、”消費者分析/無線イヤホン-前編-”をご確認ください。

マーケティング戦略を樹立するまでのプロセス

ワイヤレスイヤホンに関する購入要因、検索経路、価格、不安要素などの分析を基に日本市場でのマーケティング戦略を立てるまでのプロセスについて解説します。

ターゲットセグメントを分析する

デジタルマーケティングにおいて、セグメントを分ける際には主に4つの要素(デモグラフィック、関心領域、行動に基づくセグメント、または類似の潜在顧客)によって区別します。行動に基づくセグメントと類似の潜在顧客は、マーケティング活動が一定の進展を遂げた後に生成されるセグメント手法であるため、初期の段階では活用することができません。ですので、デモグラフィックと関心領域のセグメント組み合わせが一般的なターゲットセグメント手法となります。

ListeningMindには、製品群のクラスター(トピック)を自動的に分類し、マーケターがターゲットとすべきセグメント(ペルソナ)を発掘する機能が組み込まれています。以下の文章では、ListeningMindのクラスターファインダーの分析結果を中心にターゲットセグメントを区別し、定義してみます。

1. 価格重視派
1-1. 4,000円以下のしわたろう型

ドンキホーテやダイソーなどで4000円以下のお手頃なワイヤレスイヤホンを購入したいと考える男性の中には、これまで有線イヤホンを使用していた学生や社会初年生の層などが含まれています。

  • 男性 73% : 女性 26%
  • 24才 〜 34才 : 27%
  • 35才 〜 44才 : 24%
  • 45才 〜 55才 : 21%

主要検索キーワード:

  • ワイヤレスイヤホン 安い ドンキ
  • ダイソー ワイヤレスイヤホン 1000円
  • 100均 ワイヤレスイヤホン セリア
  • ワイヤレスイヤホン 初心者 安い

検索インテント:transactional / navigational

1-2. コスパ重視派

言葉でわかるように比較的安価でありながらも一定の性能を期待する心理が込められています。専門家ほどではないが、ある程度安定した性能とクオリティーを備えたイヤホンを購入したいセグメントであることがわかります。価格帯は5,000円から10,000万円台です。

主要検索キーワード:

  • コスパ最強 ランキング
  • ワイヤレスイヤホン 1万円前後
  • おすすめ 安い 日本製
  • ワイヤレスイヤホンおすすめ 5000円
  • ノイズキャンセリング 安い

検索インテント:Buy / Informational

2. iphone純正品派

iPhone使用者がAirPodsの購入を検討しているセグメントです。AirPodsに対するレビュー検索、価格比較、インターネット上またはオフライン店舗の中でも安い価格で購入できるところを積極的に探索するユーザーです。

主要検索キーワード:

  • iphone 純正イヤホン
  • iphone 純正イヤホン amazon
  • Airpods 純正 見分け方

検索インテント: informational / commercial / navigational

3. 音楽愛好家

ワイヤレスイヤホン購入において、音質にこだわるペルソナです。AACコーデック対応などの音質関連のキーワードを使用して検索するほか、ノイズキャンセリングが可能なブランドと製品を見つけるために多くのレビューを比較する音楽愛好家のセグメントです。また、オンラインだけでなく、直接音質を確認するために店舗の場所まで探すペルソナです。

主要検索キーワード:

  • aac対応 ワイヤレスイヤホン おすすめ
  • aac ノイズキャンセリング
  • ワイヤレスイヤホン 1万円 高音質
  • ノイズキャンセリング 最強
  • ハイレゾ イヤホン ワイヤレス

検索インテント: informational / commercial / navigational

4. 業務パフォーマンス重視派

テレワーク、オンライン会議など仕事で使用するイヤホンを探しているビジネスマンを含むセグメントです。このセグメントは、マイクの性能、周囲の騒音を遮断する機能、そして価格に重点を置いています。他のターゲットセグメントより多くの情報、レビュー、評価をチェックする傾向も持っています。

主要検索キーワード:

  • マイク付きワイヤレスイヤホン
  • web会議 ワイヤレスイヤホン
  • ワイヤレスイヤホン 通話 おすすめ
  • マイク性能 比較
  • 通話品質 ランキング

検索インテント: informational / commercial

5. デザイン重視派

このセグメントは、ワイヤレスイヤホンのデザインに重点を置く女性層で、適切な価格帯で高級感のあるデザインや可愛らしいイメージのイヤフォンを探している人々を指します。

主要検索キーワード:

  • ワイヤレスイヤホン デザイン
  • イヤホン おしゃれ 女性
  • ワイヤレスイヤホン かわいい
  • ワイヤレスイヤホン おしゃれ 安い
  • ワイヤレスイヤホン 色 人気

検索インテント: informational / commercial

ワイヤレスイヤホン市場のターゲットセグメントは、大きく5つに分けられます。まず初めに、有線イヤフォンを使ってきたが初めてのワイヤレスイヤホンを購入しようとしているため、3,000円から4,000円を超えない手頃な価格が何よりも重要なセグメントがあります。そして、5,000円から1万円までなら支払う意欲があり、この価格帯に品質と性能が最も良い製品を探すコストパフォーマンス重視のセグメントが存在します。

次に、1万円以上でありながら高音質と強力なノイズキャンセリングの製品を求める音楽愛好家のセグメントがあります。3番目に、適切な価格でマイクの性能とノイズキャンセリングを搭載して、会議やテレワークに最適な製品を探すビジネスパフォーマンス重視のセグメントがあります。そして最後に、手頃な価格でありながら高級感がありかわいらしいイヤフォンを求める女性中心のデザイン重視のセグメントがあります。

これまで日本の消費者のワイヤレスイヤホンに対する認識、購買要因、そして5つのターゲットセグメントを整理しました。これらのデータを元に、日本に進出したワイヤレスイヤホン製品の一つであるAnker社のSoundcore Liberty 4製品をマーケティングする方向性、オーガニックマーケティング、paidマーケティングの戦略について話してみます。

Soundcore Liberty 4製品は14,990円で販売されています。この製品の特徴をブランドのウェブサイトを参考にまとめると、

  • C.A.A3.0 搭載の高音質
  • 360度 立体感あるサウンド
  • ウルトラノイズキャンセリング2.0
  • 最大28時間再生可能
  • ワイヤレス充電

<Soundcore Liberty 4 PDP ページ(出処) https://www.ankerjapan.com/pages/soundcore-liberty-4>

Anker社のSoundcore Liberty 4製品は、高音質とノイズキャンセリングを優先的に強調しつつ、1万5,000円というエントリーとハイエンドの中間に位置する適切な価格帯を形成しています。この価格帯で、2万5,000円以上のハイエンド製品と同等の性能を持つ「コスパ最強」の製品としての位置づけになるでしょう。

Organicマーケティング戦略(inbound marketing)

SEO

日本のマーケティングにおいては、SEOは最も基本的かつ重要な戦略です。ブランドや製品の購入に関する重要な情報源として、検索チャネルが74%以上を占めています。本文では、テクニカルSEOや外部リンクに関する一般的な説明ではなく、上記製品ページ (www.ankerjapan.com/collections/tws) における自然流入に関する部分について記述してみます。

<Ankerワイヤレスイヤホンにおける上位流入キーワード(出処)ahrefs>

アンカー、サウンドコアなどのキーワード流入がほとんどを占めています。今度はブランドキーワードではなく、本製品の強みである「高音質」、「ノイズキャンセリング」、「コスパ」などの検索結果を見てみましょう。

  • 高音質 ワイヤレスイヤホン:アンカーの製品ページのGoogle順位は51位で、これでは自然流入を期待することは難しいです。
  • ノイズキャンセリング ワイヤレスイヤホン:100位以内では見つかりません。
  • その他、「コスパ」や「業務用 ワイヤレスイヤホン」も検索結果で流入可能性のある順位内には存在していません。

本製品の強みである「高音質」「ノイズキャンセリング」「コスパ」「業務用ワイヤレスイヤホン」に関して、潜在顧客に表示されていない状態となっています。

これらの強みに関しては、代表的な検索結果の上位に位置づけることが必要です。競合が激しい場合は、検索ボリュームの2グループに属するクエリを対象にするSEO戦略が必要です。また、これらの4つの分野については、ターゲットセグメントに対して検索広告を活用することも必要だと思われます。

コンテンツマーケティング

SEOとともにコンテンツマーケティングは非常に重要なマーケティング施策です。製品PDP(製品詳細ページ)で消化されない主要な検索ジャーニー上、トピックをカバーする役割はコンテンツマーケティングが担当するからです。しかし、良いコンテンツを作っても検索上位にポジションされなければ、潜在顧客たちの反応を期待することが難しいです。

Googleのアルゴリズムでは、上位表示は技術的要因よりも、検索ユーザーの意図と深く関連しているため、コンテンツ作成の前に対象トピックに関連するコンテンツが上位にポジションしているかを把握し、それを参考にしてコンテンツ戦略を立てる必要があります。

<関連トピックに対する上位コンテンツと該当コンテンツが対応する検索クエリを把握する機能(出処)リスニングマインド>

Listening Mindには、トピック全体に関連するコンテンツが上位にあるかどうか、そして各検索クエリがどれだけ含まれているかを一目で把握できる機能が組み込まれています。個々の検索クエリを個別に調べるのではなく、トピック単位で把握することができるようになります。これにより、適切なコンテンツ戦略を立てることができます。

さらに、トピックごとの上位メディア(Earned Media)との協力によって、広告、プロモーション、コンテンツの共同制作などを行うことで、ブランド認知だけでなく、そのサイトを通じたコンバージョンも期待できます。日本では特定のトピックについて深いコンテンツを持つプロフェッショナルなブロガーやブランドとの協力が多く行われています。

<トピック「ワイヤレスイヤホン おすすめ」で上位占されているブログ(出処)https://music.bear-blog.net/ >
広告戦略 (ペイドマーケティング戦略)
検索広告

リスニングマインドの分析結果をもとに検索広告を実行する場合、キャンペーン戦略はターゲットセグメントに応じて構築しても問題はありません。「iPhone純正派」や「価格重視派」でたとえた製品、Soundcore Libertyと関連のないセグメントは除外します。

例えば、音楽愛好家をターゲットにしたキャンペーンは、1つのキャンペーンユニットとして構成できます。そして広告グループ単位では「高音質」と「ノイズキャンセリング」に細分化します。各グループに含まれるべきキーワードは、既にリスニングマインドの分析過程で全て抽出されているため、キーワード設定を迅速に完了できます 。

検索広告クリエイティブ:

コミュニケーションメッセージ戦略テンプレートを活用して、「高音質」広告グループのレスポンシブ広告クリエイティブの方向性を整理すると、

  • Keyword Focused : aac対応、SBC/AAC/LDAC対応、高音質、ウルトラノイズキャンセリング…
  • Social Proof : グローバル販売累計 3,800万個…
  • Price Comparisons : 1万円台、14,990 …
  • Benefits : コスパ最強、IPX4 防水…
  • Pain Reliever : 6ヶ月保証、28時間連続再生…
  • Call to Action : 10周年記念セール…

など豊富なクリエイティブ組み合わせができます。

キーワードフォーカスでは「高音質」クラスターで頻繁に出現した「AAC対応(総検索数:306,900)」などを含めることができます。また、Pain Relieverの側面では、上記の分析結果に基づいて「不安要素」を中心に、そして価格の側面ではハイエンドモデルとの競争力のある「14,990円」を強調することで、効果的な検索広告を実行することができるでしょう。

リスニングマインドを活用した検索データの分析により、ワイヤレスイヤホンに対する潜在顧客の不安要素として、「寿命」が全体の77%を占めていることが分かりました。

このうち、主な要因はバッテリー寿命とされています。また、「ワイヤレスイヤホン 寿命」と関連して消費者から多く質問と回答のやりとりをしているコミュニティがYahooの知恵袋です。

(リスニングマインドのロードビューとパスファインダーで確認した結果、どちらもYahoo知恵袋が上位に参照されています)

Yahooの知恵袋で「ワイヤレスイヤホン 寿命」で調べると、311件の質問があります。

多くの質問が「1日で○○時間使用した場合、あと何年使えますか?」といった内容が多く、その回答のほとんどが「主にバッテリーが左右している」とコメントされています。

デザインや音質も良いですが、消費者の最も大きな不安要素は「寿命」と「バッテリー」といったキーワードを広告のコンセプトにすると良いでしょう。

ペルソナ:

1万円以上のワイヤレスイヤホンを購入する際、特にバッテリー寿命に不安を感じる20代から50代の男女です。主要検索キーワードは「iphone イヤホン 寿命」、「sony イヤホン 寿命」、「イヤホン 寿命 3ヶ月」、「イヤホン 寿命 ワイヤレス」、「イヤホン 寿命 6ヶ月」、「ワイヤレス イヤホン バッテリー 交換」などで、Yahoo知恵袋での質問と回答を通じてワイヤレスイヤホンの使用期間やバッテリーに関する情報を検討しています。また、バッテリーだけを個別に交換することができないか、バッテリーだけを無償で修理することができるかについて検索する意図も相当数存在しています。

クリエイティブ方向性:

  • 顧客不安要素:長期間使用したいが、ワイヤレスイヤホンの寿命が短すぎて悩んでいる。原因となるバッテリーを交換することができない。
  • 価値提案:ワイヤレスイヤホンの寿命はバッテリーにかかっている。世界でモバイルバッテリー1位のブランド Ankerの技術を用いて開発されたSoundcoreなら、長時間使用が可能、さらに18ヶ月間無償保証。

バッテリー寿命を考えると憂鬱

1年も経ってないのにバッテリーが・・・

NOTE :

  • 本レポートは、リスニングマインドソリューションを活用した日本の消費者分析およびマーケティング戦略の方向性についての記事であり、AnkerやSoundcoreの製品とは直接の関係はありません。
  • 上記のデータはリスニングマインドによって分析され、使用されたデータは、2023年4月時点で取得されたものです。
  • 購入要因の分析や顧客の不安要因の分析に使用された検索クエリおよび検索ボリュームは、一部のみ取得されたもので、実際にはさらに多くのデータがあります。
  • 例えた広告クリエイティブは筆者が仮で考案したもので実際のブランドと関連性はありません。
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