インテントデータとは？基本概念と重要性

インテントデータとは、消費者や顧客がWeb上で特定の目的や意図を持って行う行動データのことを指します。具体的には、検索クエリ、ウェブサイトの閲覧履歴、SNSでの投稿などが含まれます。従来の仮説に基づいたマーケティングアプローチから、実際の行動を分析して顧客の意図を把握する手法へと移行する中で、インテントデータはこれからのマーケティング活動のカギとして注目されています。

マーケティングで活用できるデータの種類とは？

インテントデータの特性を理解するには、マーケティングに活用できる他のデータについても把握しておくことが重要です。一口にマーケティングデータといっても、その内容や用途は大きく異なります。データを適切に活用するには、自社の目的や施策に合ったものを選ぶことが不可欠です。以下のような主要な分類を理解しておくことで、より効果的なマーケティング戦略を立てる手助けとなるでしょう。

１．直接的な行動分析に基づくデータ

消費者の行動を直接取得したデータであり、ビッグデータ技術の発展により活用の幅が広がっています。現在、マーケティングの主流となりつつあり、今後さらにデジタル技術が進化することで、より高度な分析が可能になり、マーケティング戦略の中心となることが期待されています。

ビヘイビア（行動）データ (Behavioral Data):

• ユーザーのオンライン行動を追跡するデータ（ウェブサイトの閲覧履歴、購買行動など）
• データの分析・解釈には専門的なスキルが必要

インテント（意図）データ (Intent Data：★本記事で取り上げるもの）

• 行動データから、目的や意図を分析したもの
• 意思決定の材料として活用しやすいが、高度なビッグデータ解析が求められる

２．ターゲットをモデリングするためのデータ

ビッグデータが普及する以前は、ターゲット像をモデル化するためのデータが活用されていました。しかし、近年の市場環境の多様化に伴い、一貫したターゲティングの維持が難しくなり、より柔軟で動的な分析が求められています。

デモグラフィックデータ (Demographic Data):

• 年齢、性別、職業、所得などの人口統計学的データ
• ターゲティングの精度が低下しつつある

心理グラフィックデータ (Psychographic Data):

• 価値観、興味、ライフスタイルなどの心理的特性データ
• 顧客のニーズの多様化に伴い、細分化が進んでいる

3. リード獲得のためのデータ

インテントデータが消費者分析や市場調査に用いられる一方で、営業活動、特にABM（アカウントベースドマーケティング）などにおいてソースとして活用されるのが、以下のようなリード獲得データです。B2Bターゲティングするためのリストであることが多いでしょう。

ファームグラフィックデータ (Firmographic Data):

• 企業情報（企業名、業種、従業員数、収益額など）
• アカウントベースマーケティング（ABM）に有効

クロノグラフィックデータ (Chronographic Data):

• 企業や個人の重要なイベント（企業移転、役員交代、新規資金調達など）
  • 買い意欲の高まりを予測するのに適している

インテントデータのソースと種類を理解しよう

インテントデータがどのようなソース（データの取得元）から作られているのかを理解することは非常に重要です。ソースの違いによってデータの特性や活用方法が大きく異なるため、それぞれの特徴を把握しておく必要があります。以下に挙げる主なデータ種別を理解することで、目的に応じた最適なデータを選択しやすくなります。

１．1stパーティーデータ:

企業が自社で収集・管理するデータで、顧客情報、Webサイトの閲覧履歴、購買履歴などを含みます。信頼性が高く、マーケティング施策を柔軟にカスタマイズできる点が特徴です。一方、2ndパーティーデータは、提携企業から共有されるデータで、自社データと組み合わせることでターゲティング精度を向上させるのに役立ちます。

２．3rdパーティーデータ:

3rdパーティーデータは、不特定の第三者によって収集される外部データを指します。市場調査データや国勢調査データ、広告ネットワークから得られる情報などが含まれます。新規顧客の開拓や既存顧客の行動分析に活用されます。信頼性の確保やデータの精度が課題となることもありますが、大規模なデータソースを活用できる利点があります。

３．パネルデータ:

パネルデータは、リサーチ企業が保有する会員からアンケートやインタビューを通じて収集したデータで、消費者のライフスタイルや意識、購買行動の傾向を明らかにします。会員が自ら回答するため、正確な嗜好や購買意向を分析でき、企業はターゲット層の詳細なインサイトを得ることが可能です。会員のデータを拡大推計するため、偏りが発生することがある点に注意が必要です。

４．SNSデータ:

SNSデータは、ソーシャルメディアプラットフォームから収集される情報で、ユーザーの行動や意見を分析するために活用されます。投稿内容やエンゲージメントの動向を把握することで、トレンド分析やブランド評価、消費者インサイトの取得が可能になります。ただその特性上、自己演出的であったり、同調的な傾向が発生します。

５．検索データ:

検索データは、検索エンジンから収集される情報で、ユーザーの検索キーワードや検索履歴を分析することで市場の動向を把握するのに役立ちます。パネルデータやSNSデータと比べて、ユーザーの赤裸々な傾向性が表現されるうえで注目されています。しかしながら大規模なデータを分析することが必要となり、取り扱いが難しい点に注意が必要です。

インテントデータから消費者の意図をどう分析するか？

検索クエリから消費者のインテント（意図）を把握できるのは、検索キーワード自体にユーザーの目的や行動パターンが反映されているからです。具体的に「カレー新宿」と「カレーレシピ」のクエリを比較すると、その違いがよくわかります。

「カレー新宿」 の場合、「カレー」というターゲットワードに「新宿」という地名が付いていることから、「新宿でカレーを食べたい」 というニーズが強いことがわかります。この検索をする人は、口コミを見てお店を選んだり、Googleマップで場所を確認したりする可能性が高いです。

一方、「カレーレシピ」 の場合、「カレー」に「レシピ」というワードが付いているため、「自分でカレーを作りたい」 という意図が明確になります。ただし、さらに「ちょい足し カレーレシピ」と「本格 カレーレシピ」のように細かく見ると、ユーザーの目的はまったく異なります。「ちょい足し」なら手軽に美味しくしたい、「本格」ならスパイスを使って本格的に作りたい、といった違いが見えてきます。

このように、検索キーワードの違いや、その後に続くワードを詳しく分析することで、消費者が何を求め、どんな行動をとるのか を把握することができます。これが、ターゲットに最適なコンテンツやマーケティング施策を設計する上で重要なポイントとなります。

インテントデータはどのようなマーケティング施策に活用できるのか？

インテントデータは、消費者の意図や関心をリアルタイムで把握できるため、マーケティング戦略の多くの場面で活用されています。特に、競争が激化する市場において、より精度の高いターゲティングや効果的な施策の実施が求められる中で、その重要性はますます高まっています。本章では、インテントデータがどのような活動で活用できるのか、具体的な事例を交えて解説します。

１．３C分析

３C分析（市場（Customer）、競合（Competitor）、自社（Company））において特に有効です。顧客の検索行動や閲覧履歴を基に市場のニーズを把握し、競合の動向を分析することで、自社の戦略を最適化できます。これにより、データに基づいた精度の高いマーケティング施策を実行することが可能になります。

２．消費者分析

インテントデータは、消費者の行動をリアルタイムで把握し、より正確な消費者インサイトを得るために最適です。検索クエリやウェブサイトの閲覧履歴などを活用することで、顧客の興味や購買意欲を分析し、ターゲットとなる消費者の嗜好をより深く理解できます。これにより、企業は潜在的なニーズを正確に捉え、より最適化されたマーケティングアプローチを強化することが可能になります。

３．新規商品開発

インテントデータは新商品の開発にも大きく貢献します。消費者の検索行動や興味関心の変化をリアルタイムで把握することで、市場の潜在ニーズを的確に捉えることが可能になります。競合の商品との比較や消費者のフィードバックを分析することで、より市場に適した商品開発を実現でき、投入タイミングの最適化にもつながります。

４．コンテンツマーケティング

インテントデータは、消費者が関心を持っているトピックや検索傾向を把握するのに役立ちます。これにより、ターゲットに合ったコンテンツを提供でき、SEO対策やエンゲージメント向上に貢献します。適切なデータ分析を行うことで、より効果的なコンテンツ戦略を構築し、リード獲得やブランド認知の向上につなげることが可能になります。

インテントデータは、消費者が関心を持っているトピックや検索傾向を把握するのに役立ちます。これにより、ターゲットに合ったコンテンツを提供でき、SEO対策やエンゲージメント向上に貢献します。また、消費者の興味関心をリアルタイムで分析することで、ブログ記事やホワイトペーパーのテーマ選定、動画コンテンツの企画などに活用できます。適切なデータ分析を行うことで、より効果的なコンテンツ戦略を構築し、リード獲得やブランド認知の向上につなげることが可能になります。

主なインテントデータ提供サービス

インテントデータを活用することで、企業はより精度の高いターゲティングや効果的なマーケティング施策を実施できます。これを支援するさまざまなツールやサービスが提供されており、それぞれ異なる用途や特性を持っています。以下では、インテントデータの取得・活用に役立つ主要なサービスをカテゴリごとに紹介します。

ABM系サービス

• 興味サイン・興味シグナル：日本初のAI拡張型インテントデータサービス
• Sales Marker：インテントデータを活用したBtoBセールス特化型サービス
• IM-DMP：大規模メディアを通じてインテントデータを取得し、分析

SEO分析サービス

• Googleトレンド：検索ボリューム分析
• Semrush：SEO・広告運用向けツール
• ミエルカSEO：日本市場特化型

消費者行動分析サービス

• DS.INSIGHT：Yahoo! JAPANの検索データ活用
• ListeningMind：Google検索データ基盤

Web行動ログ分析サービス

• Dockpit：自社・競合サイトの行動分析

ソーシャルリスニングサービス

• Quid Monitor：ソーシャルメディアの口コミ・評判分析

人流分析サービス

• unerry：消費者行動パターンの可視化

まとめ

インテントデータが注目を浴びている背景には、市場分析や競合分析といった消費者行動分析を行うためのデータ源としての価値があります。従来のマーケティングデータよりもリアルタイム性が高く、購買意欲の高まりを正確に捉えることができるという特性は、ビジネスの様々な側面に革新をもたらしています。

特にBtoBマーケティングにおけるABM（アカウントベースドマーケティング）と同様に、マーケティング戦略の策定や新商品開発などの分野においても、インテントデータは今後のビジネス成功のカギとなるデータとして注目されています。消費者や企業の意図を正確に捉え、適切なタイミングでアプローチすることで、成約率の向上や顧客獲得コストの削減に貢献するでしょう。

デジタル技術の進化により、インテントデータの収集・分析がより精緻になる中で、いかにこれらのデータを活用するかが企業の競争力を左右する重要な要素となっています。ターゲティングの精度向上、新規顧客の開拓、リードナーチャリングの最適化など、様々な場面でインテントデータの活用が進んでいます。

現代のデジタルマーケティングにおいて、インテントデータは単なるトレンドではなく、競争力を維持するための必須ツールへと進化しています。自社のマーケティング活動や営業活動、商品開発の成果を最大化するために、インテントデータの活用を検討してみてはいかがでしょうか？