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カテゴリーエントリーポイント(CEP)の見つけ方と作り方

マーケティングを成功させるには、消費者行動を理解した上で戦略を立てることが重要です。
特に、新しい市場への進出や未顧客層の獲得を目指す場合、単に消費者の購買を促すだけでなく、より深いアプローチが必要です。
その際に、最近注目されている戦略の1つが「カテゴリーエントリーポイント(Category Entry Point, CEP)」です。
カテゴリーエントリーポイント(CEP)とは、消費者が特定のカテゴリーの商品やサービスを思い浮かべる際の「きっかけ」や「入り口」を指します。
企業は、消費者が特定のブランドやカテゴリーを自然に思い浮かべる瞬間(CEP)を特定し、マーケティングに活用することでより効果的にアプローチができるようになります。

前回の記事ではCEPについてと、CEPの事例についてご紹介しました。
本記事ではCEPを活用した市場拡大、ブランディングをする方法についてご紹介します。

カテゴリーエントリーポイント(CEP)の見つけ方

1.W’sフレームワーク:消費者行動の文脈を分析する方法

南オーストラリア大学のJenni Romaniuk教授が、消費者が購買検討時に記憶検索のきっかけを見つける方法であるW’sフレームワークを提案しました。W’sフレームワークは消費者行動が発生する様々な状況を分析し、CEPの候補を見つけ出す際に活用されます。

<W’sフレームワーク>

W’sフレームワークの主な質問は以下のとおりです。

  • When:カテゴリーが購入/使用されるのはいつなのか?
  • Where:カテゴリーは主にどこで使用されるのか?
  • While:どんな行動中(行動の前後)にカテゴリーの必要性が発生するのか?
  • With What:カテゴリーを使用する時、一緒に使用されるカテゴリーは?
  • Why:なぜこのカテゴリーを使用するのか?どのような目的を達成するためなのか?
  • How feeling:カテゴリーの使用中(使用前後)、消費者はどのような気分なのか?
  • With/for Whom:カテゴリーを使用する人は誰で、一緒に使う相手は誰か?

このフレームワークは、消費者が特定のカテゴリーやブランドを思い出す文脈を分析し、ブランドが消費者行動にどのような影響を与えるかを理解しやすくします。ブランドはこれを活用し、消費者の特定の行動文脈で連想されるCEPを作り出し、強化することができます。

ABCW分析:消費者行動の意味の理解

消費者行動を分析する際、単に行動が起こる「状況」を理解するだけでなく、その行動が持つ「意味」を把握することが大切です。「意味」を把握するために、行動分析学のABCモデルに基づいたABCW分析が使用されます。

ABCWモデルは以下の要素で構成されます:

  • Antecedents(先行条件):行動が発生する前に存在する条件で、行動を促す役割を果たします。
  • Behavior(行動):実際に起こる行動そのものを指します。
  • Consequences(結果):行動の後に生じる結果で、ポジティブな結果はその行動の繰り返しを促し、ネガティブな結果は行動の減少を引き起こす可能性があります。
  • With/for Whom:行動が特定の社会的文脈で発生する際、それが他者にどのような影響を与えるかを示します。

ABCWモデルは、消費者行動が発生する具体的な背景と意味を分析するのに役立ちます。ブランドはABCWモデルから、消費者の特定の行動を強化/抑制できる報酬要因を見つけ出し、行動がブランドと自然に結びつくように誘導できます。
例えば、“朝にキッチンを掃除する消費者行動”をブランドと結びつけ、特定のブランドの掃除用品がその過程をより楽に、満足いくものにしてくれるというメッセージを伝える等です。

カテゴリーエントリーポイント(CEP)の作り方

ブランドのメンタルアベイラビリティ(Mental Availability)の形成

行動を行った結果、良い結果になればその行動回数は増え、悪い結果になればその行動回数は減るといわれています。
行動分析において、特定の行動を増やすような良い結果を「報酬」と呼びます。
カテゴリーエントリーポイント(CEP)は、特定の行動を通じてブランドやカテゴリーを思い出させ「記憶の手がかり」として機能するので、消費者の行動の報酬を見つけ出し、製品以上の価値を消費者に提供することで、ブランドと消費者の関係が強化され、ブランドが消費者の日常生活の様々なシーンで想起されるようになります。

CEPは消費者の生活の様々な行動文脈に適用でき、ブランドのメンタルアベイラビリティを拡大する重要な役割を果たします。一度作られたCEPは、同じような生活シーンで繰り返し活用することができ、それによってブランドは既存顧客だけでなく、未顧客に対してもアプローチできる可能性を広げます。
このように、CEPはブランドが特定の状況で消費者の記憶に定着し、市場でのポジションを拡大するのに重要な戦略的ツールとなります。

優先順位の選定

CEPの優先順位を設定することは、効果的なマーケティング戦略を立てる上で重要な要素です。優先順位を決める際には、各CEPごとに認知度の優位性があるか、他のブランドとの認知状況はどうか、目標とするCEPに関する市場規模はどのくらいか、各CEPにおけるヘビーユーザーとライトユーザーの割合はどうか、といった基準で検討する必要があります。これらの基準に基づいて、ブランドはどのCEPに優先的に投資し、自社ブランドとの繋がりを強化するかを判断できます。

認知度の優位性があるCEPは、ブランドと消費者の繋がりを強化するために、優先的に投資する価値があります。一方で、認知競争が激しいCEPは、そのシーンで多くの競合ブランドが連想されるため、意図的に避けるか独自のアプローチが必要です。このような分析を行うことで、ブランドはより効率的に予算とリソースを配分することができ、CEPを作り、強化することで未開拓の消費者を含む幅広い消費者層にアプローチできます。

NBDモデル(負の二項分布):最適なCEP投資タイミングを判断

CEPへの投資は、消費者層の特性や利用パターンに合わせて調整する必要があります。NBDモデル(負の二項分布)を活用することで、ヘビーユーザーとライトユーザーの割合に合わせてCEPへの投資を調整することができます。初期段階では、ヘビーユーザーが多いCEPに集中してブランド認知度を高め、その後、ライトユーザーの割合が高いCEPへと拡大する形でアプローチすることができます。この方法は、ブランドの消費者の基盤を安定的に拡大し、効率的なマーケティングリソースの配分を可能にします。

未顧客向けのブランディング戦略

未顧客へのブランディングは、単に情報を提供するだけでなく、特定の状況でブランドがすぐに思い浮かぶようにすることが重要です。そのために、ブランドはW’sフレームワークとABCWモデルを活用してCEPの特徴と行動の脈略を把握し、その状況で消費者にピッタリな報酬を提供することで、ポジティブな体験を提供することができます。

ブランドは未顧客が簡単に思い出せるよう、広告やソーシャルメディアなどの多様なチャネルを通じてCEPに関連するメッセージを継続的に発信する必要があります。この過程で、未顧客がブランドとポジティブな体験をできる接点を増やし、ブランド認知を強化することが大切です。例えば、朝にキッチンを掃除する消費者に「爽やかな朝のスタートをサポートする掃除用品」というメッセージを届けることで、消費者が毎朝ブランドを思い出すように導くことができます

CEPベースの広告効果と費用対効果の測定

CEPベースの広告戦略が、未顧客層にどれだけ効果的に伝わったかを測定することも重要です。デリシュレーNBDモデルやマーケティングミックスモデリング(MMM)を活用し、現在の売上貢献度を推定し、各CEPに関連する生活シーンや検索手がかり(Retrieval Cue)を把握することで、今後の広告コミュニケーション計画に反映できます。
また、位置データ、時間帯、利用チャネル、メディアプロファイルなどを収集し、広告と流通戦略を立てるのに活用することができます。

CEPとメンタルアベイラビリティの形成を中心とした未顧客層のブランディングは、現在の売上への貢献度だけでなく、ブランドが将来の購買行動に対してどれだけの準備ができているのかを評価する重要な指標となります。
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CEPとW’sフレームワーク、ABCWモデルを活用した戦略は、消費者行動の文脈を理解し、それを基に消費者との関係を強化するのに非常に効果的です。ブランドはこれにより、単に購買を促すだけでなく、消費者の生活の中でブランドの存在感を強め、未顧客を含む幅広い消費者の基盤を形成することができます。
競争が激しいマーケティング環境では、このようなアプローチが今後さらに重要になり、各ブランドは発見したCEPを活用して継続的に成長できる基盤を整え、消費者と関係を深める必要があります。
このような戦略は、ブランドが単なる製品提供者ではなく、消費者の生活の一部として定着できるようサポートします。

リスニングマインドでカテゴリーエントリーポイント(CEP)を見つける方法

リスニングマインドはCEPを発見し、作る過程でも重要なツールとして活躍します。
CEPを発掘し、データに基づいて優先順位を設定することができます。

クラスターファインダー:既存のCEPや新たなCEPの機会を発見

例えば、リスニングマインドの「クラスターファインダー」を使うと、検索データを基に、特定のブランドが想起される様々なシーンや文脈を捉え、様々なCEPを発見することができます。実際に消費者が日常的に繰り返し行う検索データを活用することで、ブランドがどの状況で自然に思い出されるか、客観的に把握することができます。
これにより、消費者とブランドの主な接点を把握し、様々なシーンに合ったブランドメッセージを伝えることができるようになります。

リスニングマインド:クラスターファインダー「冷凍弁当」のCEP

冷凍弁当の場合、一人暮らしのユーザーや高齢者が主なターゲットとなっておりましたが、“産前産後の冷凍作り置き”というクラスターが見つかり、新たなCEPを定着させるヒントが見つかりました。

“産前産後の作り置き”内のキーワードを見たところ、“出産入院 旦那 ご飯””出産前 作り置き 上の子”“臨月 冷凍ストック”などのキーワードがあり、出産入院中や臨月に旦那や子どものご飯を作り置きしようとしているということが分かります。
宅配の冷凍弁当を展開している企業であれば、出産前後に家族の食事を心配しているお母さんをターゲットにし強化していくことで、新たなCEPを確立することができるのではないでしょうか?

パスファインダー:消費者セグメントの理解・潜在ニーズの発見

発掘されたCEPについて、パスファインダーを活用することで、その接点にいる消費者セグメントに対する理解を深めることができます。

リスニングマインド:パスファインダー「産前 作り置き冷凍」の検索経路

実際に“産前産後の作り置き”のクラスター内にあった“産前 作り置き冷凍”というキーワードの前後の経路を見てみました。
出産入院を控えている消費者が気にしているポイントや求めている日持ちの期間などが見えます。
他にも旅行で家を空ける主婦や単身赴任など、新たな顧客像も見えました。

インテントファインダー:市場規模から優先順位を判断

最後に、インテントファインダーを使うと、強化するCEPの優先順位を設定しやすくなります。
強化したいCEPが複数ある場合、検索量や検索量の推移を見て、優先順位を決めることができます。
例えば冷凍弁当の新たなCEPとして“出産入院を控えている時”“旅行で家を空ける時”を作りたい場合、2つのCEPに関連するキーワードを入力し、検索量と検索量推移を比較することで、優先順位が決めやすくなります。

リスニングマインド:インテントファインダーで検索規模を比較

リスニングマインドは実際のデータに基づいたインサイトから、CEPを発掘し、ブランドと消費者の情緒的な繋がりを築ける強力なツールです。
CEPを活用した戦略的アプローチは、ブランドが消費者の日常に深く根付くことで長期的なロイヤルティを構築し、マーケティングの成功に繋がる基盤を確立してくれるでしょう。

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自社のCEPを探したい方、新たなCEPを見つけたい方は是非、お試しください。

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